続・知青の丘

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山頭火『行乞記』より~湯平温泉

2020-05-14 13:09:29 | 俳句
いちにち雨ふり一隅を守ってゐた(木賃宿生活)
貧しう住んでこれだけの菊を咲かせてゐる(改作)

夕しぐれいつまでも牛が鳴いて
しぐるゝや支那さんいつしよに寝てる
支那の子供の軽業も夕寒い


昭和5年9月9日より始まる種田山頭火の日記『行乞記』、
十一月十日(湯ノ平温泉、大分屋)と
同月十一日(同宿)の分より俳句の一部を抽出した
(「青空文庫」より)。

<焼き捨てゝ日記の灰のこれだけか>
と、それまでの日記は焼いてしまったらしく、
2回目の行乞の始まりは、
熊本の八代→日奈久→人吉→小林・・・

湯布院の近くの湯平温泉にも2日間滞在したようで、
ここの温泉をべた褒めしている。
私は、山頭火は水のソムリエと思っているのだが、
こう記している。

此温泉はほんたうに気に入った、山もよく水もよい、湯は勿論よい、といふ訳で、よく飲んでよく食べてよく寝た、ほんたうによい一夜だった。
こゝの湯は熱くて豊かだ、浴して気持がよく、飲んでもうまい、茶の代りにがぶ/\飲んでゐるやうだ、そして身心に利きさうな気がする、などゝすっかり浴泉気分になってしまった。

と十日の日記を締めている。

たいてい、山頭火は、水の美味しいところばかり歩き回っていて、
どこそこで、ほんたうによいと褒めちぎっているが、
ここは格別のようだ。

ここの湯は「胃腸病に効験いちじるしいそう」で、山頭火もよく飲んだようだが、「もしこれが酒だつたら!と思ふのも上戸の卑しさからだらう」と書いているのは、正直、可愛いもんですね。

翌12日は湯布院湯坪の筑後屋に宿している。


(柳本もともとさんが拙句「山頭火読む間違いだらけの良夜」を描いた絵俳句)


ついでに言うと、
山頭火が泊まった木賃宿で現在建物が残っているのは、日奈久の織屋(おりや)だけらしい。このブログにもUPしていたなあ~(ヤプログの時)
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