元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

待ち伏せ

2010-06-08 00:42:44 | My Works -仔猫-

今回の作品タイトルは 「待ち伏せ」 
2000年の初夏、銀座ボザール・ミューでの3回目の個展に出品した作品です。

そのときの個展は小品を中心としたもので、テーマは“瞳”
B5サイズにも満たないほどの中に、猫の象徴でもある瞳を思い切りアップにして描いた作品が多かったのを覚えています。
その中でも、この作品は特にインパクトが強く、迷うことなくDMに使うことになりました。

はっきりとしたモデルはなく、イメージだけで描きました。 だからでしょうか、何となく我が家の元さんに似てしまったのは・・・???


これまで30回を超える個展において、共通して言えることの一つ・・・。
それは一番最初に赤ポッチ(売約済のしるし)が付くのは、DMに使った作品がもっとも多いということ。
DMに印刷されたもの以外にどんな作品があるのかわからないのですから、当然といえば当然なのですが・・・。

その時も、この「待ち伏せ」を目当てに、初日のオープン早々からお見えになった方が何人もいました。 しかし、不思議なことに、その日の夕方になっても、赤ポッチはつかないまま・・・。
私が絵の世界に飛び込んだ最初からずっと応援し続けてくださっている S.O.さんが飛び込んできたのは、まさに終了間際でした。
そして迷うことなく「待ち伏せ」の前に立ち、ニコッと笑みを浮べると、両手を静かに額に添えてこう呟かれました。
「待っていてくれたんだ・・・」
直後に赤ポッチが付いたのは、言うまでもありません。

DMを見た時からぜひうちの子に・・・と思っていてくださったとのこと。 ただ初日の日中はどうしても都合が付かず、閉廊ギリギリになってしまったそうです。
(もし既に売約済になっていたら、ご縁が無かったんだ・・・)
期待と諦めが入り混じった気持ちで、ご自分にそう言い聞かせていたそうです。
実際に何人もの方が手を挙げそうになりながら、結局誰も決心のつかないままでいたのは、もしかしたらS.O.さんの“念”みたいなものがそうさせたのかもしれません。
きっとそれが、「待ち伏せ」の子の運命でもあったのでしょう。


それから3年後、この子にもう一つの運命的なことが・・・。
この作品はとても人気を集めていたので、個展終了後に改めてポストカードにしてありました。 それがある日ブックデザイナーの方の目に留まり、なんと単行本の表紙に使われることになったのです。

泉鏡花賞作家 辻章 氏の「猫宿り」という小説です。
そのタイトルを知った時、思わずなるほど・・・と頷いてしまいました。

発売当初、やはりその売れ行きが気になり、書店を見つけてはついつい立ち寄っていたものです。
著しい数の本が並ぶ中に、子のこの顔を見つけたときの喜びは今でも忘れられません。 心の中で思わず「頑張れ!」と叫びながら、その数冊を手に取りレジに向かったことも幾度となく・・・。


作品自体は小さいですが、大切に飾ってくださっている S.O.さんにとって、そしてもちろん私自身にとっても、存在感の大きな作品です。
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