元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

再びの季節

2014-03-02 01:23:38 | My Works -ノラ猫たち-
          『 再びの季節 』



私にとって初めてで唯一の(今のところ)絵本『 うさぎのユック 』。
その原作者であり、絵本の制作という素晴らしい経験をさせてくれた 絵門ゆう子 さんが亡くなってもうすぐ8年になる。
絵の世界に飛び込んでからというもの、毎年桜の花の季節になると、私にとっては個展直前の最後の追い込み時期と重なって、ゆっくりとお花見を楽しんだという記憶がない。
ご主人から訃報が届いたのは、まさにそんな時だった。
制作どころではなかった。
涙雨が降りしきる中を電車に飛び乗った。
ご自宅の最寄り駅までは40分ほど・・・。
その間、車窓のガラスに走る幾筋もの雨粒の跡を通して通り過ぎてゆく外の景色に眼をやりながら、頭の中では絵門さんとの絵本制作を中心とした様々な想い出がグルグルと回り続けていた。
降車駅が近くなってきたとき、焦点が合わないまま窓の外に向けられていた視野の中に、スーッと淡い桜色が通り過ぎた。
意識して外の景色に眼をやると、線路に沿って植えられた何十本もの桜の樹に満開の花が咲いていた。
こんな形で桜の花を見ることになるなんて・・・。
悲しみどん底だった心の中のどこかで、いろいろな思いを込めて「ありがとう!」と言っている自分がいた。

個展までは10日ほどしかなかった。
まだ描きかけのものが数点あった。
しかし、それらとは別にどうしてももう一点描きたいという衝動を抑えることができなかった。
そうして出来上がった作品が、この『 再びの季節 』だった。

この回のテーマはノラ猫たちだった。
この絵の中の子もノラの仔猫・・・。 しかし、この絵だけは他の作品とはちょっと違った雰囲気になった。
私にとって“再生”の象徴であるオレンジの背景の中に一つだけ新芽を描いた。
感謝の気持ちと、願いを込めて・・・。


今年も恒例の春の個展が迫ってきた。
初日は4月10日。
毎年の繰り返しになるが、あと一ト月余りしかないというのに、毎日もがき続けている。
最終的にどんな形で初日を迎えることになるのか分からないが・・・、ふと蘇ってきてくれたこの絵に元気をもらい、もう一度気を入れ直して頑張ろうと思う。
今の自分に正直な気持ちで・・・描く!
そのことを何よりも大切にしながら・・・。
コメント
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