元気の源

猫が大好き、動物が大好きな、パステル画家・山中翔之郎のブログです。

光の中の黒猫

2011-02-11 21:30:08 | My Works -黒猫-
来週2月15日から、銀座ボザール・ミューで毎年恒例の“黒猫展”が始まる。
そして毎回この時期になると、必ず思い出すことがある。


「何点か出してみませんか?」
ボザール・ミューの宮地オーナーからいただいたこの言葉が、絵描きとしての私の第二の人生のスタートになった。
1999年2月、ボザール・ミューの目玉とも言うべき企画展 “黒猫展”への出品のお誘いだった。

前年5月の頚椎の手術以降ずっと自宅療養をしていた私は、思い掛けずできた時間を利用して、愛猫の元さんや、知り合いのペットの絵などを描いていた。
それが新たな仕事になるとは思ってもいなかった私は、とある美術雑誌の中に“猫専門画廊ボザール・ミュー”という名前を見つけたときも、(へぇ~、こんなギャラリーがあるんだ・・・)くらいにしか思わなかった。
それでも無意識のうちに何かを感じていたのだろうか、その後ボザール・ミューを訪れ、厚かましいことに、自分の作品を写した写真を宮地オーナーに見てもらったりしていた。
そしてありがたいことに、そのうちの1点がオーナーの記憶に残っていたのだ。

「ぜひ、お願いします!」
予想もしなかったお誘いに昂ぶる気持ちを抑えながらそう答え、それから10日後には納品に・・・。
「2~3点あれば・・・」とのお話だったにもかかわらず、新たに描き上げた作品は6点。 お声を掛けていただくきっかけになった1点を加え、計7点を持ち込むという怖いもの知らず。
今から思えば、なんと図々しかったことか・・・???

更に・・・、ボザール・ミューの企画展に出品できたことだけでもうれしかったのに、私の作品を買ってくださった方がいた。
その作品が今回アップした『光の中で 1』 まさに宮地オーナーの記憶に残っていた、初出品のきっかけにもなった作品である。
N.O.さんというその方は、友人でも知人でもなければ親戚でもない。 もちろんお会いしたことなど無く、私の存在どころか、“山中翔之郎”という名前すら知らない方・・・。
つまり義理などまったく関係なく、ただ純粋にその絵を気に入った・・・というそのことだけで、少なくとも私には決して安いとは言えない金額を払ってくださったのだ。
そのことは私に大きな嬉しさと同時に大切なことを教えてくれた。

「下手な絵ですが、よろしかったらご覧になってください」
それまでは、本心は別として、そんな風にへりくだった言い方をしていた。 しかし、あの黒猫展以降、私は同じ言葉を二度と口にしていない。
それは・・・、貴重な対価を払うまでに私の絵を気に入ってくださったN.O.さんに、そしてギャラリーの名を懸けて勧めてくれた宮地さんに、更には自分自身が精一杯心を込めて描いた作品そのものに対しての最低限の礼儀だと思ったから・・・。
あの時はまだまだ駆出しの思い切り端くれではあったが、“プロ”ということ、“絵描き”であることを初めて意識した貴重な瞬間だった。


          

この作品は『光の中で 1』の姉妹作ともいえる『光の中で 2』
前者はA4ほどの比較的小さな作品だったので、同じ雰囲気で黒猫展用に大きめな作品(50cm×35cm)を描いてみた。
私にとってはどちらも同じように感慨深い作品である。
暗闇をバックに差し込む光の中の黒猫を描いた『光の中で』シリーズは、このあと連作として10点まで描いた。
しばらく間が空いたが、またいずれ新たな気持ちで『光の中で』新シリーズを描いてみたいと思っている。

あれからいったい何点の黒猫作品を描いてきただろう。
“黒猫展”に来てくださる黒猫ファンの方々の静かにして熱い期待が、私の代表作とも言えるような作品を何点も描かせてくれた。
はたして今年は・・・?
コメント (4)
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