みつめる・・・

元さんには、今年になってから何度かドキドキさせられた。
しかし、元さんはそのたびに持ち前の強い生命力で危機を乗り越え、毎朝の抱っこタイムは今日も変わりなく続いている。
「危機？　冗談じゃない！　ちょっと調子が悪かっただけさ。　勝手に大騒ぎしないでくれよ」
私の左肩に頭を乗せてゴロゴロと喉を鳴らしながら、元さんはきっとそう言っているに違いない。

来週は毎年恒例の築地聖路加画廊での個展。（ご案内は次回に）
毎回朝の9時から夕方の5時まで、バッチリと会場に張り付いている。　もちろん今年もそのつもりでいる。
ただ・・・、今回は正直なところ元さんのことが心配だ。　チューブから注入してあげるご飯も、この一週間はちょっと変則的になる。　トイレのあと、すぐにお尻を拭いてあげることもできない。　気になる目やにを取ってあげることも・・・。
ごめんね・・・。　でも、行かなくてはいけないんだ。　

「そんなこと、分ってるさ。　あたり前じゃないか。　自分のやるべきことを思い切りやってくれなきゃ、こっちだって困っちまうよ。　まさか、ぼくがどうにかなるのを待っているわけじゃないだろ？」

そうだよね・・・、確かに1年前と比べたら随分といろいろなことが変ってしまった。
元さんの身体も顔つきも・・・、そして私の生活パターンも・・・。　でもそれは特別なことでもなければ、一時的なことでもない。　辛いとか、大変だとかなんてとんでもない！
今一緒に毎日を生きていることが全てなのだから・・・。　それこそが今の私たちの日常なのだから・・・。
元さんはどんな時でもしっかりと上を向き、明日を見つめている。　外見は変わってしまっても、いつもこの絵の時と同じように・・・。

元さん、私は自分のやるべきことを精一杯やるよ。　その上で、目一杯君を大切にするからね。
どんなに身体が痩せても、顔つきが変わってしまっても、今の元さんが大好きだから・・・。