限りなき知の探訪

45年間、『知の探訪』を続けてきた。いま座っている『人類四千年の特等席』からの見晴らしをつづる。

想溢筆翔:(第65回目)『資治通鑑に学ぶリーダーシップ(序)』

2012-04-29 12:39:14 | 日記
私は、中国の本当の姿を知るには資治通鑑を読むことは必須だと感じている。その理由は、通鑑聚銘と題した連載の第1回目に次のように書いた通りである。
 通鑑聚銘:(第1回目)『連載を始めるに当たって』

(前略)

。。。 資治通鑑は、中国の古い時代の歴史書である。カバーしている範囲は、ざっくり言って、紀元前500年から紀元後1000年の1500年間なので、一番新しい記事でも今から1000年も前の話である。また、資治通鑑が書かれた後の1000年には、モンゴル・元や満州・清などの異民族が漢土全体の支配するという漢民族にとっては屈辱の歴史もある。経済的にも、国際関係も近年に大幅に変化した。こういった変化した中国近代の歴史は資治通鑑には記述されていない。

しかし、現在の中国のいろいろな問題、共産党幹部の賄賂・汚職、環境問題、チベットやウイグルの民族問題、都市と農村の格差問題、これらの問題の類似の事例が資治通鑑には必ず見つかるのだ。ビジネススクールでは、ケースと呼ばれている、過去の実例をベースに思考訓練する科目がある。まさにこの意味で資治通鑑は『中国に関するケースの缶詰』である。

結論を言おう。私は、資治通鑑を読んだあとに確信したのは、『資治通鑑を読まずして、中国は語れない、そして、中国人を理解することも不可能である』ということであった。
 。。。

(後略)

つまり、資治通鑑によって私がそこまで持っていた安直な中国観がこっぱ微塵に砕かれたのだ。私が受けた、この大きな衝撃をできるだけ多くの人に知ってもらいたいと思って『通鑑聚銘』の連載を、後漢から始めたが、現在の所、三国志のあたりで停滞している。今後も連載を続けるつもりではあるが、完了するのがいつになることやら。。。

ところで、資治通鑑は大部の書で、かつ『中国に関するケースの缶詰』あるから、読みようによっては、いろいろな教訓が得られる。歴史書であると同時に、リーダーシップの教科書としても、豊富な実例を引き出すことができる。



それで、暫く、『資治通鑑に学ぶリーダーシップ』と題して記事を連載をしたいと考えている。尚、これは、以前のブログ記事、
 百論簇出:(第125回目)『Private Sabbatical を迎えるに当たって(その3)』
で説明した、『2. 古代ギリシャ・ローマと中国・日本のリーダー像の差』における、中国のリーダー像に該当する。

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章立て(予定)
 第1章「リーダーの要件」(リーダーシップ全般)
 第2章「人を育てる」(育成についての話)
 第3章「うまくいく組織、失敗する組織」(チームマネジメント全般)
 第4章「勝つための戦略」(勝つための戦略作り)
 第5章「人間力を鍛える」(より豊かな人間形成の話)
 第6章「正しい人生観」(人としての正しい生き方の話)

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各章の目次(予定)

第1章「リーダーの要件」(リーダーシップ全般)
 1.01  人の能力を十分発揮できるものがリーダーだ
 1.02  劉秀・曹操・王溥 ― 敵方と通じていた者の通信書を見つけても焼いてしまう。
 1.03  部下の寝返りをとやかく言うな。
 1.04  目の前に矢が飛んできても顔色を変えず。
 1.05  盗人が盗難物を返すのまで悠然を待ち構える。
 1.06  敵に囲まれた危急事態でも部下と労苦を共にする。
 1.07  極限状態でも、一人の裏切り者も出さない。
 1.08  器が大きい(大度)とはどういう行為をいうのか。
 1.09  リーダーの不正を糾弾したので、逆に重んじられる。
 1.10  管寧 ― 死去したときに天下、知らざる者もその死を嘆く
 1.11  敵将から送られた薬を疑わずに服用する。
 1.12  小恵はリーダーのすべきことにあらず。
 1.13  細かい点をうるさくいわないのがリーダーの器量。
 1.14  勇者は矢が刺さるもひるまず。
 1.15  リーダーには強運も必要
 1.16  分からないことは、虚心になって部下にきけ。
 1.17  能力があっても人望のないリーダーの哀れな結末
 1.18  リーダーの責務とは何か - 信念と世間評価の乖離を恐れるな。

第2章「人を育てる」(育成についての話)
 2.01  部下の失敗をとがめず、待遇を変えずに使う。
 2.02  浮華より篤実な部下を評価せよ
 2.03  迎合する部下を見抜け
 2.04  帝位について、子孫に微賤の形見を残す。
 2.05  小忠は却って害になることをおしえる。
 2.06  人はその長所を利用することを考えよ。
 2.07  賄賂をとった者に反省を促すためにさらに絹を与えて辱めて諭す。

第3章「うまくいく組織、失敗する組織」(チームマネジメント全般)
 3.01  言論抑圧は、一層大きな害をもたらす。
 3.02  組織運営は人選がすべてだ
 3.03  人材の選択基準長所を見抜くことだ、短所はみるな。
 3.04  組織運営で、細部まできっちりするのはよくない。
 3.05  組織がうまくいくのは、財政的な豊かさより人の結集力だ。
 3.06  上司に理由も無く叱られたからと言って部下が沈黙する組織はダメ。
 3.07  賞は憎い部下にも与えよ、罰は可愛い部下にも与えよ。
 3.08  組織の力は、現場の頑張り力よりも智略に依存する
 3.09  役職につけるのは、業績よりもその人の器で評価せよ。
 3.10  ちょっとした業績を挙げただけで、大抜擢はするな。
 3.11  弁が立つ人を選び、篤実の士を選ばないのは人選ミス

第4章「勝つための戦略」(勝つための戦略作り)
 4.01  勝つために人を採用するなら、人格より能力を問え。
 4.02  敵を負かすには、情報作戦で勝て。
 4.03  可愛がっている部下も厳しく罰せよ、しかしその能力は活用せよ。
 4.04  人の採用には、怨を捨てて才をとれ。
 4.05  人を思い通りに動かそうとするなら、人の名前を覚えろ。
 4.06  敗軍の将を丁重に扱い、奮起させて利用せよ。
 4.07  守るべき法を定め、厳格に守ってしかも怨みを買わない。
 4.08  直訴する方法を周知させる。
 4.09  能力ではなく肩書きで選んだため、組織力が落ちる。
 4.10  敵将も降ってくれば、採用し、信頼して使え。
 4.11  敵を衝くなら、その一番弱いところを狙え。
 4.12  勢力を分散して敗れてしまう。

第5章「人間力を鍛える」(より豊かな人間形成の話)
 5.01  人が知らないと思って後ろめたいことをしていないか?
 5.02  人物鑑定法、観相のこつ ― 八観六験と九徴
 5.03  リーダーを選出するときには、顔立も判断のひとつ
 5.04  才能と識量 - 才能とは何か、識量とはなにか。
 5.05  知識は必ずしも人の器をつくらない
 5.06  文盲でも正しい判断できるのが、見識のある人
 5.07  活躍の場がないといって腐らずに自分を磨け。
 5.08  人の器量は危機の時に初めて明らかになる
 5.09  人との交際には、至誠を尽くせ。
 5.10  人を諌めるには直言ではなく、婉曲に言う方法もわきまえよ。
 5.11  忍を学ぶのが全てだ。
 5.12  業績評価に一喜一憂せず、泰然と構えよ。
 5.13  異民族との交渉には、胆力をもって事に当たれ

第6章「正しい人生観」(人としての正しい生き方の話)
 6.01  義 - 中国人の考える義とは何か?
 6.02  仁 - 中国人の考える仁とは何か
 6.03  死刑判決を聞いても、悠々を碁を打ち終えてから毒杯を飲む。
 6.04  皆が利益に狂奔するなかで、一人清廉に生きる
 6.05  中国の硬骨の臣、死を覚悟の上で諌める。
 6.06  かつての中国では、囚人も義を守り、獄に期日どおりに戻る。
 6.07  刺客も義の人を殺せずに帰る。
 6.08  一旦禄を食めば義として主君に忠を尽くす。

続く。。。
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