獅子丸のモノローグ

☆気まぐれ不定期コラム☆

iQ試乗記

2008年12月03日 | CARS&F1
   
 さて、巷では賛否両論のトヨタiQ。一般ユーザーの間では、否定的な意見も結構多いように思われ、私も見た目ではあまり好感の持てないクルマだったりする。だが、実際に運転してみると、また印象は違うのかもしれない。そこで、我々取材班は事実確認のために、いそいそと試乗に出かけた。
   
 幸いなことに、この日の札幌は結構雪が降り、路面状況はザクザクかつスリッピィ。低速走行でも色々なコトが起こりうるこの悪条件でiQを走らせることが出来たのは、実に面白い体験であった。
 ドアは大きくて、ずっしりとした重さである。閉めた時の音も悪くない。だが、車幅が普通にある2ドア車ゆえに、狭い駐車場では開閉に気を遣いそうだ。
 走り出すと、短いこのクルマが想像よりずっと静かであることに驚く。また、しなやかな足回りはザクザク路面をいなすように走り、ホイールベースの短さからは想像できないフラット感がある。ステアリングは適度に重く、センターがきちんと出ていて、安心感がある。その上質なフィールはまるでレガシィ2.0iを走らせているかのようだ。
 狭い生活道路に入りこんでみると、雪の路面状況はますます酷かった。だが、このiQはまったく挙動を乱さない。インパネを見ると「S-VSC」のインジケーターが激しく点滅してその作動を教えてくれるが、そのインジケーターを見ない限りは、この電子デバイスの介入は私のような素人ドライバーには感じられなかった。知らないうちにクルマが助けてくれている感じで、そのスタビリティは、極めて高い。ABSも、氷雪上において、信頼感溢れる制動力をみせてくれた。
   
 だが、ドライバーが適度なドライビングポジションを取ると、運転席後の席のレッグスペースは、無いに等しい。ココに人が座るのは、実際には子供でも無理であろう。このクルマは4人家族のファーストカーにはなり得ない。やはり、スペシャリティーカー的なクルマなのだろうと思う。
 また、小さいクルマなのだが、運転席から見ると左端の感覚が摑みづらく、後方視界も狭いため、パーキングはあまりやり易くない。全長&最小回転半径の小ささが、活かし切れていないという印象である。ま、幅は普通にあるしねぇ。正直言って、日本で使うなら、軽自動車の方が色々な面で使いやすいだろう。
 それと、なんだかエスティマの顔だけが走っているような印象のスタイルも、私としてはあまり受け入れられない。
   
 全長3mを切るというコンセプトのこのクルマ。たとえば、日本中がこのクルマだらけになれば、首都高速の15kmに渡る渋滞が12kmくらいにまで減るかもしれない。
 だが、現状ではこのクルマ1台で日常の全てをまかなえるのはごく僅かなユーザーに限られると思われる。トヨタの販売目標は月間2,500台だというが、それは恐ろしく強気な目標だと思う。そんなに売れるワケはなかろうというのが、率直な私の感想だ。
   
 かつて360ccだった頃の軽自動車枠は、全長3m以下だった。「スバル360」に私は乗ったことはないが、写真で見る限りは、家族4人のファーストカーとしての使用に耐えていたように思える
 また、私がかつて乗っていた「ホンダ・シティ」は全長3,380mmだったが、大人4人乗車で、ビールの大瓶のケースも積載可能だった。
 ただし、昔の衝突安全の基準が現代よりも緩かったのは歴然とした事実。だから私は、iQには《現代の安全基準で作る「スバル360」あるいは「ホンダ・シティ」》を目指して欲しかった。単なる《「スマート」への刺客》でしかないこのクルマは、大トヨタが鳴り物入りでリリースしたクルマとしては、日本のユーザーにとってあまりにも使いづらい。全長3m以下であることにこだわり過ぎずに、せめて大人4人がキッチリ座れるクルマを作って欲しかったと、私は切に思う。
   

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チャロ君、来たる。 | トップ | ブーン/ラリージャパン参戦車 »

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
パッケージング (獅子丸)
2008-12-05 22:55:54
静岡県人さん、こんばんは。

iQですが、色々な方がこのクルマについて語られているようです。ピッチングが多いとか、レスパワーだとか、ウルサイとか・・・私が鈍感なのかもしれませんが、私が運転した限りでは、そのようなネガティヴな印象はまったく感じませんでした。高速走行こそ試していませんが、雪道を普通に走る分には、クルマの小ささを感じさせない、非常に完成度の高いクルマのように思えました。ただし、そのパッケージングについては、日本国内で使うことを考えると、大いなる疑問なのですが。

やはり、今は衝突安全の基準をクリアするために、ギリギリまでスペースユーティリティを追求するクルマは作りづらいのかもしれないですね。そんな中でも、ホンダのフィットとか、軽自動車のタントやパレットとか、あの辺は健闘しているように思えます。
ただ、やはり初代ミニ・初代ビートル・スバル360のように、ココロに響くモノがないんですよね・・・残念なことです。
返信する
それじゃ、 (静岡県人)
2008-12-05 22:04:14
IQのプラットフォームの延長版で
DEXの後継車を作ったら良さそうですね。
獅子丸さんのインプレッションを読む限りでは
トヨタっぽくないフィーリングみたいですし。

それにしても、昔の名車と呼ばれた大衆車は
初代ビートルにしても、初代ミニにしても
我等がスバル360にしても、パッケージング的に
突き詰めた物があって、断面図など見てるだけで
楽しいものがありましたが
今の車は潰れてもいい、ある意味無駄と言うか
空間的な余裕が無いと
クルマとしても生きて行けないんですね。

それでも、昔のクルマのような
ギリギリまで突き詰めたクルマが
一個ぐらいあってもいいような気がしますネ。
返信する
iQ登場の意味 (獅子丸)
2008-12-04 22:54:38
jimmy.さん、こんばんは。
iQというクルマ、そのスタイリングや使いにくいボディは疑問ですが、乗ったフィールはよく出来ていると思いました。このクルマのプラットフォームを使って、もう少し長さを拡大すれば、非常にいいクルマになりそうな予感がします。トヨタは、おそらくはそこまで見据えているのだと思います。それが次期ヴィッツなのか、まったく違うクルマなのか・・・そこに私は期待しています。
返信する
全長3m (獅子丸)
2008-12-04 22:46:39
パンダさん、こんばんは。
欧州においては、全長3m以下:すなわちスマート専用の駐車場等があったりして、その辺の優遇措置は多い模様ですネ。それを私は「トヨタiQのすべて」で知りました(照)。
とりあえず、このクルマのターゲットは欧州におけるスマートなのでしょう。日本では、やはり使いにくいクルマだと思います。
しかし、そこはしたたかなトヨタなので、ひょっとしたらその政治力で、全長3m未満のクルマについての優遇措置を含めたインフラ整備までもなんとかしようと目論んでいるのかも・・・考えすぎかもしれませんが。
返信する
ありえへん (jimmy.)
2008-12-04 22:31:05
ロードスターに乗っていたりもする私ですが、相当なトヨタフリークを自負しております。
その私にしても月販2500台なんて図にのりすぎじゃないの!っていう数字です。
絶対ありえへん・・・
返信する
Unknown (パンダ)
2008-12-04 17:39:30
全長が3m以下だと、欧州ではいろいろと優遇される制度があるそうです。街では縦列駐車などをする際に、全長3m以下のクルマが横向きに停める専用の駐車スペースまであるんだそうです。
まあコレは、スマートを市販されるときにダイムラーが一生懸命築いた土壌だったワケなんですが、トヨタはそこにうまく乗っかったカタチなんでしょうね。
だからIQは3m以内じゃなかったら、トヨタにとっては出す意味が無いクルマなのかもしれません。
・・・ていうような意味のことが今月のオートカー・ジャパンに書いてあった(笑)

ところが日本ではそういった優遇制度も無いし、そもそも縦列駐車の習慣が欧州ほどありません。だから我々にとって、IQがイマイチピンと来ないクルマだというのは当たり前のことなのかもしれません。
あっちでスマートが受け入れられているのも、別にスマートの斬新なコンセプトに共感しているわけではなくて、そういう優遇制度があるからなんだなーと、感心してしまいました。
返信する
エスティマ顔 (獅子丸)
2008-12-04 10:17:02
宇垂さん、おはようございます。
なにか無機質なイメージのエスティマのフロントエンドは、やはりミニヴァンにはあまり相応しくなかったのかもしれないですね。
加えて、「iQ」というネーミングとともに、ややお高く止まった感じのフロントマスク・・・この辺を工夫すれば、私の中での高感度は、もうちょっと高くなったかもです。
返信する
iQ (宇垂)
2008-12-04 10:07:16
エスティマ、今度のマイナーチェンジでキリリとした顔に変わるみたいですね。

やっぱり先代と比べて販売が振るわないのはあの顔のせいとトヨタも感じてるんでしょうか。

そうなると似たような顔つきのiQの立場がないような気がしますが。

返信する

コメントを投稿