留萌にて

　半月程前に、私の前から忽然と姿を消した十年来の相棒だが、こないだ留萌に居るとの連絡が我が家にあった。朝早くの高速バスで留萌に向かう。なぜか頭の中に吉田拓郎の「もうすぐ帰るよ」が鳴り響く。♪徹夜あけの気だるさがぁ・・・
　久しぶりに対面した彼は、私の前から居なくなる前と同様に、人なつっこい顔で私を見るのだった。ガソリンがカラだったのでエンジンは掛からなかったが、セルは勢い良く回った。まるで「あと３万キロは走れるよ！１５年１５万キロストーリーをボクと創ろうよ！」と言っているかのように・・・
　留萌まで往復約８時間。私は後ろ髪を引かれる思いで、もう冬景色の留萌を後にした。まるで長く飼っていた愛犬を、遠くに捨ててきたかのような罪悪感が私を襲う。長く、苦い旅であった。