形之医学・しんそう療方 小石川院長 エッセー

昭和の頃、自然と野遊び、健康と医療のことなど。

銭湯遊び

2010-11-14 18:02:51 | 昭和の頃

中学に入ったばかりの、まだ小学生気分の抜けない頃。
学校が早く終わったときに、友達4、5人と誘い合って、ときどき銭湯に
遊びに行った。風呂には入るのだが、それが目的ではなく遊びに行くのだ。

午後3時頃、みんなで銭湯の前で待ち合わせ、入り口が開くのを待つ。
その時間だと、まだお客が来ないから好き放題に遊べた 。湯舟の中で泳いだり、
潜水したり、お湯をかけあってはしゃいでも、誰も怒る人がいない。
泳ぐといっても狭い浴槽だから、2、3かきもすれば反対側に着いてしまうが、
とても楽しかった。 沸いたばかりのお湯は、なぜかとてもピリピリして
熱いが、私たちは顔を真っ赤にして遊んだ。


あるとき友達の一人が、どこから拾ってきたのか、折れて擦り切れた、
プラスチックの定規を持ってきた。 なにをするのかと思ったら、これで
みんなのオチンチンを計って、誰が一番か決めようぜ! と提案した。
全員面白い! と賛成した。
みんなはタイルの湯舟のふちにソレを乗せ、次々に計っていった。
そのうち負けず嫌いのSは、先っぽを、涙目になって引っぱって計った。
「引っぱったらズルイよ!」
「うるせー!」
「そんならオレも引っぱるぞ!」
というわけで、全員、痛い思いして引き伸ばしたオチンチンを計りっこした。
誰が一番だったかは記憶にない。


男の子は銭湯好きが多かった。 あの天井が高く広々として、木の桶が
カラーンと響いたり、壁に描かれた富士山の絵がよかったのか。 
それとも小さな庭に面した更衣所の縁台で飲む、瓶の牛乳がうまかったのか。
私も家に風呂があったが、夜、友達を誘って、家から5、6分のところに
あった堀川湯にはよく行った。

浴槽は3つに仕切られていて、真ん中が一番大きな普通の熱さの湯舟。
左側がかなり熱い湯舟で、右側の湯舟はドロリとしたこげ茶色のお湯で、
海草が入っているという大きな袋が沈んでいた。

熱い湯舟は大人でも入る人はごく少ない。 よく渋柿みたいなお爺さんが、
宙をにらむような恐い顔でジッと入っていた。 いかにも大人の入るところ
みたいで、私たちもその仲間入りをしてみたかった。 そして手先だけちょ
っと入れてかき混ぜたりすると、お爺さんは恐い顔で、
「ゆらすな!」 と怒った。 
きっと、『熱いじゃねぇか!』 と言いたかったに違いない。 
まるで落語みたいだが、あの熱さは半端じゃない熱さだった。


形之医学・しんそう療方 東京小石川
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