一度食べてその味が忘れられず、もう一度食べたいと思うものがある。
私のそのひとつは、福岡県の田川で食べた、ウスターソースを入れて
食べるチャンポンだ。 私の友人に、若い頃からずっと東京に住んでいるが、
九州は田川郡(現在は田川市)が出身の男がいる。 その田舎での結婚式に
行ったときに、そのチャンポンに出会った。
結婚式の前の晩、友人の幼馴染みで、同じ頃に東京に出てきたという、
歌手のYとで酒を飲んでいた。 Yは前の日から田舎に来ていたらしい。
その話の中で、やっぱり田舎のチャンポンはうまいな~、きのう、3杯も
食べたよと、聞き捨てならない話をしてる。 Yは180センチを越す大男だが、
それほど大食いには思えなかった。 そんなにうまいチャンポンなら、
私も食べてみたいと思い、結婚式のあと車で連れて行ってもらった。
ここのがうまいという店が、田川かその近くだったかは忘れたが、
けっこう広いその店は、庶民的な感じの店でとても混んでいた。
注文して待つあいだに他の客を見ていると、みんなテーブルに置いてある醤油を、
ドンブリにジャーッとかけて食べ始めるのだ。 薄味なのかと見ていた。
私のチャンポンがきた。 友人もやけに大きな、プラスチックの容器を取って
それを握りジャーッとかけるので、私も真似た。
食べてびっくりである。 醤油じゃなくて、ウスターソースだった。
東京でチャンポンでもラーメンでも、ウスターソースをかけて食べるなんて
聞いたことがなかった。
ところがこれがうまい。 おかわりして2杯食べた。
長崎のチャンポンとはスープの味がかなり違う。 うっすら白い塩味だが、
長崎チャンポンと違い、かなりあっさりしたスープでウスターソースと
よく合う。麺も普通のラーメンの麺だった。
東京でその味が忘れられず、何回か普通のチャンポンを作って、
ウスターソースを入れて食べてみたが、全然同じ味にならない。
普通のチャンポンのこってりした味と、ウスターソースはあまり合わないんだと思う。
東京であんなチャンポンを出す店があったら流行ると思うのだが、
いまだに見たことがない。
形之医学・しんそう療方 東京小石川
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