Liner Notes

観たこと、聴いたこと、読んだことを忘れないように印象に残った光景を栞として綴ってみました

§143「さよならソクラテス」池田晶子, 1997.

2022-03-13 | Book Reviews
 「帰ってきたソクラテス」(§141)、「悪妻に訊け」(§142)に続く、現代版 ソクラテスとの対話を集めた三部作の完結編です。

 とかく、常識とか普通とか、世間一般でごく当たり前にわかっていると思っていることを疑おうとしないとき、なぜそれがそうなのかを考えるきっかけは対話を通してしか得られないことを示唆しているような気がします。

「うん、わかった。なぜ僕がこの人の言うことがよくわからないのかということが、よくわかった」(p.222)
 
 ところで、対話とは〈わたし〉という一人称である話し手と〈あなた〉という二人称である聞き手によって構成され、文章として書き表した途端、〈わたし〉と〈あなた〉は〈彼〉や〈彼女〉という三人称に置き換わるそうです。

 ひょっとして、わかっていると思っていることを本当にわかっているんだろうかと読み手としての〈わたし〉が考えるときに、知識が知恵に変わるような気がします。

初稿 2022/03/13
写真 ソクラテスを祀る哲学堂公園にて
撮影 2021/11/06(東京・中野)
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