
『絶対の探究』
絶対とは何を指すのだろう。他に類を見ないもの…太陽の存在、地球の存在、真理・・・絶対の権力などともいう。
真理と権力は必ずしもイコールではない。つまり絶対のなかにも矛盾があるということかもしれない。
作品は赤い太陽(昇降)、遥かなる地平、そして天まで届くかの樹木。
しかし、葉のない裸木である。当然、太陽の光(絶対の真理)は透けて通過していく。しかも枝と見えるそれは、むしろ樹の根のように見える。主軸である幹にあたかも葉を想起させる形に根が縦横に伸びている。
根と言うものは幹や枝葉を支え、また水分や養分を送り込む器官である。転倒した位置関係であり、空中における根は意味を持たない。矛盾と言うよりは無意味な象徴である。
『絶対の探究』は、《太陽と地球(地平)の絶対的な関係》と《天まで届くかの無意味な権力》の対峙ではないか。「無条件に支配するかの絶対的な権力は虚構にすぎない」と、語らずして主張しているマグリットの皮肉のような気がする。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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