VALLEYS
VALLEYS・・・山間の細長い低地である。
自分の位置(視点)としては、この長い通路の任意の点にあるのだという意識である。
ずっと向こう(遠方)は見えるが確証は定かではない。両脇には勾配がきつく決して上り得ないような壁(山)が立ちはだかっている。空への空間は途方もなく無限に広がっていることが想像されるが、それが全てではないことは納得せざるを得ない。
壁(山)は何らかの杭あるいは接合された部分が不連続に顕在化するが、それはあたかも潜在していた宿命という不可思議な力、業のようでもある。つまり人間の予測し得ない未来(過去)の障壁(あるいは栄華/出来事)としての残存、記念、傷跡であり、生命の記録と化したものである。
VALLEYS・・・それは左右を塞がれた砦であり、突破すること(抵抗)の不可能な自分一人が行くべき通路である。行く手は決して閉じてはいないが、不穏であり未知なる妖しさを秘めている。
鉄板という強固な素材で造られているが、心理的な現象としての作品である。
写真は『若林奮ーVALLEYS』図録より 横須賀美術館