『深淵の花』
深淵…底の知れない深み、恐怖の地獄、想像を超えた深い悲しみの坩堝。
山の谷間というよりも人間の内部の底の底に咲く花。
馬の鈴が植物の成り立ちの法則を無視した葉に包まれ、花に模して咲いている。
馬の鈴、動けば鳴る馬の鈴は生きて在ることに同化している。生きていく上の止む無い感情の告発、喜怒哀楽の声の響き、人の発する叫びを馬の鈴に委ねている。
鈴は人の声を暗示し、自身の内部の声や他者の外部からの声(噂、伝言…)などあらゆる響きを内包しているのではないか。
それを深く静かな胸の奥底沈め、黙している。心の底、深い闇の中に収めていれば、一つに集結し、苦もまた一つの花になるという逆説的な肯定である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展・図録より)
「いゝえ。」
ジョバンニはまだ熱い乳の瓶を両方のてのひらで包むやうにもって牧場の柵を出ました。
☆熱(こみあってにぎやかに)並んだ霊(死者の魂)を訪ね、方(道義)を目(ねらい)としている。
常に策(企て)を推しはかること。
もちろん、守備よくその娘さんを手に入れて、それからは、万事がまたうまくいったということですわ」
「そういう男なら、ぼくの気に入りそうですな」
☆もちろんその入り口を手に入れてからは、すべてがうまくいったということです」
「そういう人なら気に入るという気がします」