労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

西部邁(すすむ)氏の改憲論の大いなる矛盾

2009-05-05 01:37:20 | Weblog
 どちらかというと西部氏の議論は「改憲論」というよりも、憲法無用論に近いのだが、彼によれば、憲法はことごとく破壊され尽くされなければならないのだそうである。

 彼がこのように日本国憲法を憎悪するのは、それがアメリカの占領軍によってもたらされたもので、過去との断絶があるからであるという。

 これだけ読むとこの人は何がゴリゴリの日本の民族派のような感じがするのだが、実は、この人一皮めくると、エドマンド・バークという西洋の保守主義の伝道者なのである。

 レーガン大統領もどれだけエドマンド・バークの著書を読んでいたかは知らないが、自称「バーク主義者」でアメリカには、レーガン氏のような自称バーク主義者はあまりいない。だからあなたがもしシカゴやロサンゼルスで左翼運動をやろうとするのであれば、毎日こういう人とケンカする覚悟がいる。

 そしてこの人はヨーロッパではあまり人気がない。それは主に、アメリカが社会制度として封建社会を知らなかったからで、イギリスの植民地として商品生産経済から出発しているからである。

 アメリカにおいて古き良き時代とは商品生産社会でアメリカの歴史と伝統はそのまま資本主義の発達史であるのに対して、ヨーロッパ、日本などは社会構成体の絶えざる変遷と発展のなかにあり、新しい都市は過去の都市の廃墟の上に建設される。

 だから、ベルリンやパリで過去を否定してしまったのはよくない古き社会に帰れといったところで、もう王侯も貴族も存在しないのだから、帰りようがないのも事実である。

 西部氏はこのようなメイド・イン・アイルランド(バークは一応アイルランド人)の外来思想を日本に持ってこようとしている点で、他の民族派からはすっかり浮き上がってしまっている。

 実際、この西洋かぶれの人が、日本の伝統なり、慣習についていかほどのことを知っているのか(失礼)はなはだ疑問である。

 そして、こういうヘンな人を民族派の代表にしなければならないところに現在の日本の民族派の知的貧困の深刻さがある。