労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

日銀資産百兆円割れ

2007-06-30 02:49:50 | 経済
 
 少し前のことになるが、今月の22日に日銀の総資産残高が百兆円を割り込んだという日銀発表があった。
 
 これは2001年4月に量的緩和政策が導入された直後に百兆円を超えて以来、6年ぶりだそうで、金融政策の面でも、小泉時代の終焉を告げるものになっている。
 
 小泉時代の特徴としては、緊縮財政を採用する一方で、ゼロ金利政策を実行して、金融は超緩和政策を採用していた。日銀は景気をてこ入れするために通貨供給量を増加させようとして、短期国債や、債権を買いまくって、市場に日銀券をあふれさせていたのだった。
 
 このため最盛時には、05年12月には日銀の資産残高は155兆円にまで膨れあがった。このような途方もない日銀信用の膨張がインフレにつながらなかったのは、景気がまだ回復過程であったので、その多くが銀行に滞留して、通貨としては機能せず、言葉の本当の意味で遊休貨幣資本として存在していたからだった。
 
 以来、日銀は徐々に金利を引き上げて、市場の遊休貨幣資本を回収して、ようやく小泉以前の状態へと引き戻したことになる。
 
 そこで問題となるのが、この百兆円の通貨規模は果たして妥当かどうかということである。
 
 小泉時代、つまり、日本資本主義の過剰生産力が、するどい信用不安として存在していた時代には、起こりうるかもしれない経済破綻に対処するために、市中に日銀券をあふれされることは日本資本主義にとって“必要悪”であったのかもしれないが、景気が回復した現在では、不換銀行券の規模は物価水準に影響を及ぼすことは間違いないであろう。
 
  

お知らせ

2007-06-27 00:03:11 | Weblog
 「赤星マルクス研究会」のホームページに、「ジャコバン主義とボリシェビキ」を掲載しました。ぜひご覧ください。

まだ底値ではない

2007-06-25 00:22:44 | 政治
 自民党のエライ人によれば、安倍内閣の支持率は今が底値で、これから上向いていくそうだ。
 
 しかし、何を根拠に“底値”といいうるのか?
 
 内閣支持率を株価に例えるならば、かのバブル経済の時、株価は3万9千から8千円を割り込むまでに下落した。およそ5分の1まで落ち込んだのだが、1929年の世界恐慌時もこの程度の落ち込みようだった。
 
 現在、安倍内閣の“信用恐慌”が起きているのだから、当然、最盛期の70%÷5=14%程度までへの下落が“世間相場”というものであろう。
 
 現在、30%程度の支持率で推移しているのは、このあたりが与党の支持率だからであり、保守の岩盤にかろうじてしがみついているだけだ。
 
 しかし、本当の地殻変動はこれから始まる。
 
 すでに政治は限りなく流動化しはじめており、日本の有権者は変化を求めている。そして最近では、自分の投票行動でその変化は招来するであろうという確信すら持ち始めている。
 
 そういう点では、1989年の参議院選挙時と非常に似通った情勢になりつつある。あの時もナントカいう愚かな人間が総理大臣をやっていて、総理大臣の愚かさが日本国民を覚醒させたのであった。
 
 それが結局、自民党の単独支配の終わりを告げさせたのだが、同じようなことがまたおこるかもしれない。その可能性は日々大きくなっている。 

参議院選挙延期の費用は誰が払うべきか

2007-06-22 20:18:46 | 政治
 参議院選挙が有権者に何のことわりもなく突然一週間延期された。

 そしてこのことによって、選挙準備を行っていた多くの地方自治体が大なり小なり損失を被っている。

 選挙用の案内や啓発文書、ポスター、会場の再確保費等々、投票日が変わってしまったために廃棄処分するしかない大量の印刷物を前に、自治体の役人が「仕方ありませんね」とヘラヘラ笑っている。

 地方自治体の役人にとっては、これらの制作費のでどころは税金なのだから、百万円が二百万円になろうが、一億円が二億円になろうが、それこそどうでもいいことがらにすぎないのであろう。だからこそ、「仕方ありませんね」などとヘラヘラ笑っていられるのだが、有権者は同時に納税者でもある。

 これらの自治体の役人たちは、納税者からかき集めた貴重な税金を、全国的な規模で見れば、数十億円とも数百億円とも見られる税金を、どぶに捨てるような、まったく何の役にも立たない形で浪費してしまったことをなぜ笑うことができるのか?

 そもそもこういう“予想外の出費”を税金でまかなおうなどという発想そのものがおかしいではないか。納税者=有権者がそのような税金の出費を認めなければならない理由は何一つない。

 もともと予定されていた参議院選挙の投票日を突然変更したのは、自由民主党と公明党なのだから、これらの費用はこれらの党が国会でのその議席数に応じて、有権者=納税者に弁済すべきものであり、地方自治体の役人たちは請求書を持っていく先を完全に間違えているのだ。

 しかもこれらの党は納税者=有権者に対して、結果的に、大きな迷惑と負担をかけ、経済的な損害を与えたにもかかわらず、謝罪の言葉の一つすらない。

 それどころか安倍晋三とかいうバカ者は、「国民のためにやりました」と堂々と居直っている。これではまるで税金ドロボウが、国民のためにドロボウをやったんだ、文句あるかと居直っているのと同じだ。ところで安倍晋三というのは何者で、どういう役職についている人物なのだ?自民党の幹事長をやっている中川秀直よ、答えてみろよ!    

天才希流氏へ

2007-06-17 02:25:57 | Weblog
 2チャンネルを読んでいて少し心配になりましたので、名古屋大学の“四谷怪談”の話をします。
 
 昔、昔、革マル派の機関紙『解放』に名古屋大学の“四谷怪談”の話が載っていた。
 
 Kという名古屋大学の大学院生が鏡ヶ池(この池がどこにあるか知っているでしょう)で水死体で発見された。
 
 革マル情報では権力の陰謀ということになっているが、このK氏は横井某の先輩で、愛知大学の法学部で、公法学というか、憲法学のようなものをやっていた。
 
 K氏が愛知大学の大学院ではなく、名古屋大学の大学院へ行くと言ったとき、横井某は愛知大学の法学と名古屋大学の法学では、同じ法学と言ってもまったく違うものだから、やめた方がいいんじゃないの、何だったらウチの先生(鈴木安蔵教授)に「面倒見て」と頼んでやってもいいよ、といったのだが、K先輩曰く、「君は、オレを、君や“切られヤス”(鈴木安蔵教授)と一緒にするのか、オレをそんな人間だと思っているのか」と、なんかよくわからない理由で断られた。
 
 そしてK氏はめでたく名古屋大学の長谷川正安教授の弟子となった。しかし、「愛知大学の法学と名古屋大学の法学では、同じ法学と言ってもまったく違うもの」ということをすぐに痛切に感じないわけにはいかなかった。
 
 しかも、共産党を首になった元愛知県委員氏がインターネットで長谷川正安教授のことを悪く言うのは、実は根拠のあることで、K氏はいつの間にか横井某や“切られヤス”(鈴木安蔵教授)の一派と見なされて、ことあるごとにいじめられた。特に、長谷川正安教授は“切られヤス”(鈴木安蔵教授、教授がこのように言われるのは氏が治安維持法適用第1号だったから)に相当コンプレックスを持っていたから、憎しみに近い感情を持ってK氏に接していたであろう。
 
 いじめの陰湿さは頭の良さに比例するようで、頭のよいもの同士が、いじめ、いじめられ、という関係になってしまうと目も当てられないことになる。
 
 しかも、指導教授と大学院生の関係では、はじめから結果はわかっていた。おそらくそれでK氏は思いあまって鏡ヶ池に飛び込んだであろうと思われる。
 
 そこで天才希流氏に忠告だが、手遅れになるまえに、K氏のようにならないように、勉学にいそしんで、一年でも早く、大学院を卒業した方がいい。名古屋大学はそういうところだ。後期課程はほかの大学がいい。

戦後労働運動の転換点

2007-06-17 00:36:53 | 政治

 自ら掘った墓穴にはまりこんで溺死寸前の安部自民党がところかまわず吠えている。
 
 年金問題では、「クズ」「ゴミ」といった不穏当な発言まで飛び出している。
 
 世界には100以上の国家が存在しているが、自国民を「クズ」呼ばわりしてもよいという権限を持っている国はどこにもないはずである。
 
 ましてや、「クズ」と名指されているのは社保庁の公務労働者であり、形式上安倍晋三が雇用主になっているのである。つまり、破産寸前の会社の社長が労働者に向かって、会社が傾いたのはお前たちが「クズ」だったからで、ダラダラしているヤツはみんな首だ、と恫喝しているようなものである。そしてこれが単なる恫喝にとどまらないから問題は深刻なのである。
 
 1970年代に入って日本資本主義は成熟期に入って、低成長期に入ると各分野で過剰雇用や過剰生産力が問題となり、資本はリストラや人員整理によって利潤を確保する道を選んだ。
 
 これは国家資本によって運営されてきた部門も同様で、電電公社や国鉄、専売公社が相次いで民営化され、民営化される過程で合理化によって多くの労働者が職を失った。
 
 そして、この合理化の過程で行われてきたのが、国鉄労働者やその他の現業労働者にたいする攻撃である。勤務時間中に風呂に入ったとか、働きもせずに遊んでいるとか、そういう些細なことをとらえて、あたかも国鉄の赤字が国鉄労働者のせいであるかのようなデマ政治を行ってきた。
 
 これが曲がりなりにも受け入れられてきたのは、民間の労働者がより苛酷な状態にあったからで、民間では、組合もないところや、組合があってもほとんどが御用組合で、組合員の利益を守るよりも会社の利益を守ることに熱心で、労働者が突然解雇を言い渡されたり、何の通告もなく給料を引き下げられるということが当然視され、雇用と労働条件が保証されていると思われていた公務員の身分がうらやましく思われていたのである。
 
 しかし、時は過ぎて、郵便局まで民営化され、最後の公務員労働者にまで資本とその国家の攻撃の手が伸びてくるに及んで日本の労働運動は決定的な転換点に至ろうとしている。
 
 つまり、労働運動とはいったい何であるのか?労働組合とはいったい何であるのか?というもっとも根底的な問題を日本の労働者に投げかけはじめているのである。
 
 例えば、政府は詰め込み教育を強化するために、土曜日の授業復活に乗り出そうとしているが、そうすれば当然、教育労働者の週40時間労働制は崩れる、それでもいいというのが現在の政府、すなわち安倍晋三内閣であり、日本のマスコミと称する浅薄な連中の見解である。
 
 また、社保庁の年金問題でも、端末操作の時間を限定していることが、何か重大問題であるかのようなことを日本のマスコミは主張し、政府もそれに追従して社保庁の労働者はけしからんと言っているが、現行の多くの事業所で端末操作の時間を限定しているのは決して、理由のないことではない。労働者が長時間端末操作を継続することが実際に労働者の健康に害を及ぼしているから労使協定を結んでそうしているのだが、労働者の労働条件などどうでもいいのだという日本のマスコミと政府の露骨な態度は彼らが思っている以上に深刻な影響を日本の労働者に与えている。
 
 労働者に経営の責任のすべてを押しつけ、賃金を切り下げ、労働者を無権利状態において、しかりとばし、威嚇・恫喝し、、労働強化に追い立て、異議を申し立てるものを職場から排除する。そういう現在日本の労働現場を縮図を、われわれ労働者が日々目の当たりにしている現実を、自宅で毎日テレビで、これでもか、これでもかと、見せられ、聞かせられるたびに、日本の労働者の意識は確実に変化している。

 この社会の支配階級が、声をそろえて、労働者の生活などどうでもいい、役に立たないヤツは首だ、文句を言うヤツはいらない、というのであるから、労働者は自分たちの生活を守るためにはどうすればいいのか、自分たちで考えるほかないであろう。
 
 日本の労働運動は大きく生まれ変わるし、変わらなければならない時代がやってきているのである。
 

テロリズムの考察

2007-06-11 19:58:21 | Weblog
 4月も、5月も、残業時間が150時間を超えてしまって、疲労が蓄積して生きていることさえ、不思議な気がするが、それでも亀のようにゆっくりと、ロシア革命の考察は進んでいる。
 
 ようやく18年のレーニンのテロ終息宣言にまで、たどり着いた(赤星マルクス研究会のホームページにアップ)が、1回で終わりそうもないので、今回と次回の2回に分けてやることにした。
 
 この「テロリズムの考察」は、ある意味で、社労党(社会主義労働者党)時代から持ち越してきたテーマである。
 
 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロの時、最初に、社労党の機関紙『海つばめ』の現れたのは、反米の立場から、テロは当然という論評だった。
 
 しかし、その後、やはりアメリカの同時多発テロは、支持できないという見解が党内から出てきた。
 
 この問題は、社労党の中央委員会でも議論となり、最初に、テロを支持するという中央委員同志が、レーニンの論文をいくつか引用して、赤色テロを擁護する見解を表明した。
 
 もちろん、アルカイダのテロは「赤色テロ」とは見なすことはできないので、この同志の見解を支持する中央委員は一人もいなかった。
 
 この時、われわれは一歩進んで、われわれが支持するのは戦闘の一形態としてのテロのみであることを確認すべきだ、一般市民を無差別に攻撃して殺害するのはどういう意味でも戦闘ではなく、虐殺でしかない、と主張した。
 
 これに対して、委員長の林紘義氏は、「横井君、テロの話をするなら、テルール(フランス革命時の恐怖政治)をどう評価するのかということからはじめなければならないから大変なんだよ。ヘラ、ヘラ、ヘラ」と笑った。
 
 私は林紘義氏の最後の「ヘラ、ヘラ、ヘラ」という部分が、神経にさわったので、むっとなって、反論をしようかと思ったが、中央委員会ではすでにアルカイダによるアメリカの同時多発テロを支持しないという見解が出されていたので何も言わなかった。
 
 しかし、その後われわれは林紘義氏とは袂(たもと)を分かって、彼らとは違う道を選択したのだから、われわれは林紘義氏の「ヘラ、ヘラ、ヘラ」に再度回帰する必要があると考える。
 
 身も心もブルジョアの陣営に転落した林紘義氏が、テルール(フランス革命時の恐怖政治)を持ち出して社会主義を嘲笑した理由は簡単である。
 
 20世紀の社会主義には、二つの経路でテロルの思想が流入している。一つは、レーニンが何度も言うような戦闘の一形態としてのテロルであり、もう一つは、ジャコバン主義(フランス革命の恐怖政治)→エンゲルス→レーニン→スターリン、トロツキーの経路で流入してきた政治(統治の仕方)の一形態としてのテロルである。(レーニンは後者のテロルについて動揺しており、疑問を感じながらも、マルクス主義というよりも、エンゲルスに忠実であろうとして、公然と批判することはなかった。)
 
 21世紀の社会主義が、20世紀の社会主義に突き刺さったこの“毒のトゲ”(統治の一形態としてのテロル)を引き抜かなければ前進することができない以上、われわれはどんなに激痛を伴おうとされを成し遂げるであろう。われわれはテルール(フランス革命時の恐怖政治)からはじめることを恐れてはいない。
 

皆さん、何か他人事

2007-06-08 01:01:57 | 政治

 テレビを見ていて驚いた。自民党幹事長の中川秀直氏が安倍晋三の「一年間で5000万人もの不明年金記録を全部調べる」という発言の真意を質問されて、「総理の発言は重いのだから、できなかったら責任をとってお辞めになるんじゃないですか」とまるで他人事のように平然と答えている。
 
 また先日は21世紀臨調から、「安倍政権は国民の信任を得ていないのだから、参議院選挙で敗北したら、できるだけ早く総選挙を」とまるっきり三行半を突きつけられている。
 
 自民党のなかで、そしてブルジョアのなかで安倍晋三は急速に“過去の人”になりつつある感がある。
 
 一つには、すでに参議院選挙の票読みが行われており、選挙の結果がおぼろげながら予測できる段階に到達しているということと、もう一つには、ブルジョア諸君には安倍晋三の「教育改革」がおもしろくないという点がある。
 
 そもそもブルジョア諸君が日本の学校教育を改革しなければならないと考えたのは、過去の「ゆとり教育」のなかで子供たちの学力の低下が目立ってきたからで、子供たちの学力を底上げするために、むしろ「詰め込み教育の強化」なり、一部の子供たちを特別に教育するような教育の複線化こそ望んでいたのだが、安倍晋三の教育改革はそのどちらでもなく、日本中の学校で大日本帝国マンザイをやろうというものでしかない。
 
 教育の質が労働者の質に直結し、労働者の質が生産性に直結すると考えている総資本にとって、これはある意味でゆゆしい事態なのだが、この辺のところを安倍晋三内閣はまるでわかっていない。
 
 それどころか自民党の政務会長の中川昭一氏は某週刊誌の今週号に1ページまるまる使ってデカデカと大きな文字で、何で経団連ごときのいうことを聞かなければならないのかとケンカごしで経団連を挑発している。
 
 安倍晋三の命運はすでに定まった、というべきであろう。      

何か大きな誤解が

2007-06-05 01:21:44 | Weblog
 最近、赤軍関係のコメントを書かれる方が見えますが、ここには何か大きな誤解があるように思います。
 
 われわれは赤軍派とは何の関係もありません。理論的にも、政治的にもまったく異なる見地に立っていますし、われわれが赤軍派の活動を支持したり、支援するなどということはありえないことです。
 
 そういうことは21年も前に、鴨田小学校で自称「拉致被害者」を名乗るH氏と思われる人に懇切丁寧に説明したはずですし、「鴨田小学校拉致未遂事件」の経過を労働者に報告する際にもきちんと説明しています。
 
 もちろん重信房子氏が獄中で闘っておられるということであれば、あらゆる政治弾圧に反対するという観点から、彼らの獄中闘争を支持してもよいと思っていますが、そのためには彼らがこれまで行ってきたことにたいする真剣な総括、多くの労働者が納得できる総括が必要であるとも思っています。
 
 さらにこういうことをやっているのが右翼諸君であったとするなら、こういう活動はまったく無意味な行為だと思います。先進的労働者のなかで赤星マルクス研究会の立場はすでに周知のものであり、われわれが何者であるのかという点について誤解する人は少なくなっています。
 
 だからこそ、誤解を与えるためにやっているとしたら、それはもっと無意味なことです。こんなことでは、労働者のなかでの、われわれの信用はまったく毀損(きそん)しません。
 
 労働者以外の人を対象にしているというのであれば、それは笑うべきことです。われわれの政治的反対者はわれわれについて、諸君たちよりも、10倍も20倍もおもしろい作り話を創作して、陰でコソコソとそれを広めようと日夜努力している。そういう点では努力不足というよりも、妄想を生産する能力に欠けているのではないか。    

市民・国民・民族

2007-06-04 04:12:52 | Weblog

 林紘義氏が例の“十八番(おはこ)”、すなわち、国民概念は民族概念に先行するという議論をやっている。
 
 読んでいてひどくなつかしい、遠い遠い世界からの手紙のような感じがしたが、同時に感じたことは、われわれ赤星マルクス研究会が変わったのか、それともマルクス主義同志会が変わったのかという疑問だ。
 
 これまでだったらマルクス主義同志会がマルクス主義から転落したという通り一遍の答えで満足していたであろうが、むしろわれわれもまた、激流にもまれて、ひどく変わってしまったのだと感嘆せざるをえない。
 
 なぜなら、こういう話を聞いても昔ほど感動はしないし、むしろ大いなる疑問を感じざるをえないからだ。
 
 つまり、林紘義氏の議論は、国民概念が先か、民族概念が先かという点に限られており、この問題について、単に国民概念が先であるという、この設問の限りで正しい答えだけで満足しているのはなぜか、という疑念である。
 
 国民というのは言うまでもなく、(近代)国家の存在を前提としており、林紘義氏にあっては(近代)国家は市民を統合する概念して語られている。もちろん、この統合体である国家の共同体は幻想的な共同体であり、資本と賃労働という支配、従属関係が覆い隠されているということは語られているが、それならば、さらにその先の問いに進むべきではないのか?つまり、国民と市民はどちらが先行する概念なのか?と。
 
 しかし、林紘義氏はただ(近代)国家が国民として統合される進歩的な意義を語るのみである。
 
 だが、これは逆ではないのか?市民社会が(近代)国家を生み出すのであって、(近代)国家が市民社会を、したがって国民として統合された“政治的市民”を生み出すわけではない。
 
 これは概念的にも、歴史的にもそうだ。(近代)国家の成立に先立って、市民社会の形成がなされているのである。 
 
 マルクスも次のように言っている。
 
 「ある個人の欲求は、その欲求を満足させる手段を持った他の利己的個人にとって、ひとりでにわかるように意味を持っておらず、したがってそれを満足させることとはなんら直接の連関がないのであるから、各個人はひとしく、他人の要求と、この要求の対象との媒介者になることによって、この連関を作り出さなければならない。だから自然必然性や、いかに疎外されたものに見えようとも人間の本質的な性質や、利害が市民社会の成員を一つにまとめる。彼らの真のきずなは市民的生活であって、政治的生活ではない。だから国家が市民社会の諸原子を一つにまとめるのではなく、彼らは表象のなかで、その想像の天空のなかで原子であるにすぎず、――現実には原子からすっかり区別されたものである。つまり、神的な利己主義者ではなくて、利己的な人間である。
 
 現実には、逆に国家が市民生活によってまとめられているのに、市民的生活は国家によってまとめられるべきであると、いまどき想像するのは、政治的迷信だけである。」(『聖家族』、全集2巻、P126)
 
 だから林紘義氏はこの問題でもやはり、ヘーゲル的(マルクス以前的)なのである。
 
 たしかに林紘義氏は野蛮なファシズムがふりまく民族主義の“政治的迷信”からは自由であるが、ブルジョア民主主義者が説く市民国家の“政治的迷信”には深くとらわれているのである。  

政治的雪崩現象

2007-06-01 02:13:45 | 政治
 現在、日本の政治には不思議なことが起こっている。
 
 現職大臣の自殺、膨大な年金の記載漏れの政治問題化、安倍内閣の支持率急落、本来これらはそれぞれ別個の問題であるはずなのだが、それが渾然一体の“政治的危機”として安倍晋三政権を襲っている。というよりも正確には、何か得体の知れない“政治的危機”に襲われていると、安倍晋三が妄想的にとらえて政治的なパニックに陥っているのである。
 
 しかもこの“政治的危機”妄想をふりはらうために、安倍晋三政権は、年金の時効を取り払う法案をわずか半日の審議で、委員会採決を強行し、法案を衆議院の本会議に送って、本会議でも強行採決を行おうとしている。(強行採決はもう行われたのかもしれない)
 
 明らかに安倍晋三は狼狽しており、平常心を失っている。
 
 労働者はここに権力の維持に異常な執念を燃やしている独裁者を見ているし、政治的反対者は安倍晋三の政治的な稚拙さ、人格の幼さを見ている。安倍晋三、組み易(やす)し、そのような結論を引き出した政治家も多いであろう。
 
 政治はここへきて一気に流動化に向かっている。何しろ、日本国総理大臣が“まとも”ではないことをすべての人に知らしめてしまったのだから、なるようにしかならないであろう。