労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

混迷するアメリカ

2005-08-30 00:42:24 | Weblog
混迷するアメリカ
 
 
 8月20日午前0時(現地時間)、ノースウエスト航空の整備士組合(AMFA=エアクラフト・メカニクス・フラターナル・アソシエーション)の組合員4400人は、賃金引き下げに反対してストライキに突入した。われわれ日本の労働者階級はアメリカの労働者の果敢な闘いを断固として支持する。
 これは経営難に陥った会社が整備士組合に1億8000万ドル相当の賃下げ(25%の賃下げ)と整備士の半減を求めて交渉してきたが、交渉が決裂してストにいたったものである。
 当初、このストライキには大統領の排除命令が下されるものと見られていた。先に行われた韓国のアシアナ航空の操縦士組合のストライキでもノムヒョン大統領はストライキなどの争議行為を禁止する緊急調整権を発動してストライキを圧殺したが、同様の法体系をもつアメリカでも反動ブッシュは労働者の闘争圧殺に動くものと見られていた。
 しかし、今回、大統領のストライキ排除命令は出なかった。それは現在ブッシュが労働者と事を構えることを極端に恐れているからである。
 ブッシュの労働者恐怖症は理由のないものではない。なぜなら現在、ブッシュ政権は内政問題でいくつもの大きな困難に直面しているからである。
 その一つが、「コインゲート疑惑」と呼ばれるものである。
 事件の発端は、オハイオ州トレドの地元紙「ブレード」が暴露したもので、それによればオハイオ州労災補償局が共和党の政商であるコイン商トーマス・ノーに労災補償基金5000万ドルの運用を委託し、コイン商は稀少貨幣に投資したというが、このうち1300万ドルが使途不明になっているというものである。
 「ブレード」紙によれば、トーマス・ノーはタフト州知事の二十年来の知り合いで、なおかつ同州(オハイオ州)北西部のブッシュ再選キャンペーンを統括する立場にあったという。オハイオ州の職員労災補償局の資金運用を委任された212社のうち三分の二の企業がブッシュ再選キャンペーンに500万ドル寄付したことを考えると、行方不明になっている労災資金はブッシュの大統領選挙資金に流用されたのではないかという疑惑が濃厚になっている。
 現在は疑惑の解明はまだ入り口で、疑惑の矛先はタフト州知事に向いているが、ブッシュが労働者から盗んだ金で大統領選挙を行い、それで当選したというのであれば、大統領選挙自体が無効であろう。そういう点でタフト州知事だけではすまない問題となるかもしれない。
 そして、ここにきてもう一つの問題がブッシュ政権を追いつめている。
 それは反戦運動の高揚である。息子がイラクで戦死したシンディー・シーハンさんが、大統領との面会と米軍のイラク撤退を要求してクロフォードの大統領私邸付近で8月6日から野営を始め、それがテレビで中継されるとシーハンさんを支持する人々がシーハンさんの野営地に集まり始め、全米各地で反戦運動が広がり始めている。「大量殺戮兵器があるというのはウソだった。フセインとアルカイダが関係あるというのもウソだった。あなた(ブッシュ)のウソで息子は死んだ。死んだ息子を返してほしい、もうこれ以上あなたのウソで死ぬ息子の数を増やしたくない」というシーハンさんの訴えはアメリカの人々の心を動かし始めており、ブッシュの支持率は急落しており、不支持は50%を超えてしまった。
 ブッシュ政権は急速に失速中であり、この先どうなるのかはますます不透明になりつつある。