労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

すでに世界は四分五裂

2008-11-11 00:47:28 | Weblog
 15日のG20サミットを前に、世界はその分裂した姿をさらしはじめている。

 まず、第一に、この会議には次期大統領に選出されたオバマ氏が参加しない。したがって、この会議で話し合われたことにアメリカは12月31日までは責任を持つだろうが、それ以後のことについては、アメリカは責任を持たないということになる。

 これは、現在の管理通貨制度が発足した1944年のブレトン・ウッズ会談での、イギリスの「ケインズ案」とアメリカの「ホワイト案」の対立の形を変えた再現に過ぎない。

 つまり、IMF(国際通貨基金)を“信用創造機能”(不換紙幣を発行しうる機能)をもった世界中央銀行のようなものにしようとした「ケインズ案」と貸し付けのみに制限し、“通貨”と金を何らかのかたちでリンクさせて為替の安定をはかろうとした「ホワイト案」の対立が、現在も形を変えて進行しているのである。

 これはヨーロッパが何らかの国際的決済機関を作ることによって、“通貨価値”に拘束されないで、野放図なケインズ政策(インフレ政策)を採用したい、または基軸通貨国であるアメリカの野放図なドル散布に歯止めをかけたいと考えているのに対して、ドルの基軸通貨としての特権を保持し続けたいというアメリカの思惑が完全にずれているからである。

 アメリカの次期大統領オバマ氏は、現在自分はまだ大統領になっていないという口実で、そのようなヨーロッパや新興国のIMFの“改革”に背をむけている。

 もちろん、IMFの改革にしても、新興国とヨーロッパではぜんぜんそのめざす方向が違っている。ヨーロッパは国際的な信用機関を作って不換紙幣の無制限な発行をしたいと思っているのに対して、外資の流出に苦しむ新興国はIMFの貸し出し制限の拡大もしくは撤廃を要求している。

 もちろん、こういった新興国の要求には債権国であるヨーロッパとアメリカはこぞって反対である。

 またヨーロッパではこれに先立って、EU内部でヨーロッパ決済銀行のようなものをつくろうとしたがドイツなどの反対で実現はしなかった。

 これは今回の世界的な金融危機の中で、イギリスがバクチに失敗してもっとも大きなダメージを被っているのに対してドイツは為替の変動による実体経済の悪化を問題にしているからである。

 だから、同じEUのなかでも足並みはそろっていない。

 ここに世界の過剰生産力を代表している中国と日本が加わる。

 中国は自分の置かれている立場をよく理解しているので、本日、2010年までに57兆円の景気刺激を行って内需の拡大に努めると約束した。もちろんこれは単なる“約束”以上のものではない。実際、今年度中の支出分は1兆4000億円にとどまるというのであるから、この全額はおそらく無理であろう。

 もちろんこれは中国がアメリカに向けたメッセージであり、中国はオバマ次期政権に譲歩の用意があり、個別交渉の余地があるというメッセージを裏に託しているのである。

 これに対して、日本はナッシングである。つまり日本資本主義は現在の事態は雨が降っているようなものであり、晴れない雨はないのだから、そのうち雨がやんですべてはもとに戻るだろうと高(たか)をくくっているのである。

 そういう点では、今度のG20は1960年代終わりにただ一度だけ開かれた全国全共闘の大会のようなものでしかないのかもしれない。もともと各セクトや各全共闘の野合の産物であった全国全共闘は始まった日が終わりの日となるしかなかったのである。