労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

何で、また???

2008-11-06 01:32:10 | Weblog
 オバマ氏の当選により、突如、浮上してきたボルカー氏の名前を聞いて、世界の株式市場が震え上がっている。

 この人、79年にカーター大統領の下で、FRBの議長になった人だが、翌年当選したレーガン大統領のもとでもFRBの議長を二期8年務めた人で、レーガノミックスとボルカーの名前は分かちがたく結びついている。

 経済学的には、「マネタリスト」というか、「サプライサイダー・エコノミックス」というか、もっと端的に言えば「しぶちんボルカー」というか、アメリカ版マルクス主義同志会=現代版リカード主義=新型の“通貨学派”というか、そういう人である。

 レーガンが一方において、大規模な軍事拡張路線や減税などのインフレ政策を採用し、他方、金融の面ではボルカーが、インフレを抑制するために金利を上げて、“通貨”の供給量を抑制するというアクセルとブレーキを両方一緒に踏んでいた。

 その結果として、ドルは異常なまでの高騰をし、他の国も自国の通貨を守るために、一斉に高金利の壁を築きはじめたので、対外債務の多い開発途上国の中から、ブラジルやメキシコなどのようなデフォルト(債務不履行)におちいる国がでてきた。

 だから、80年代は累積債務問題が大きな問題となった時代であり、結果として、東欧諸国や旧ソ連の崩壊につながっていったときでもあった。

 また、ドル高はアメリカの商品の国際競争力を喪失させ、アメリカの資本がつぎつぎに生産拠点を海外に移したために産業の空洞化が進み、アメリカの失業問題が大きな社会問題になっていった時だし、この時日本が円安を利用して資本の商品を大量にアメリカに輸出したので日米経済摩擦が大きな問題になっていったときでもある。

 この行きすぎたドル高は85年のプラザ合意を契機にして、ドル安の方向にふれて行ったが、金利高が続いたので、アメリカの株式市場が不安定となり、何度も暴落を重ねて、87年の“ブラック・マンデー”をむかえることになる。

 ここでミスター“アメリカ版マルクス主義同志会”に80年代と同じことをやられれば、おそらく、世界経済はパンクするだろうが、おそらく、そのようなことはないであろう。

 しかし、ここでボルカーの名前が出てきたことは、少なくとも、二つのことを意味している。

 一つは、アメリカ資本主義が、この先、ドル暴落、もしくはドル全面安の局面が来るのは避けられないと考えていることであり、ボルカー氏はその時のための布石であるということだ。

 もう一つは、オバマ大統領が、イランのアハマディネジャド氏やロシアのメドベージェフ氏のような、どちらかという“お飾り”の大統領で、実質は“アメリカの民主党”の大統領になる可能性があるということだ。この辺はオバマ氏の政治的な実力次第であるのだが、アメリカのブルジョア諸氏はマケイン氏がいったように、「あの男は信用できない」というのを、ある程度共有しているために、“お目付役”を政権の中に入れる必要があると考えているのであろう。