しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「TOKYO BLACKOUT」 福田和代 

2009年04月11日 | 読書
「TOKYO BLACKOUT」 福田和代    東京創元社

8月24日、夕方。
東都電力熊谷支社の保守要員、守田は山間部にある送電線の鉄塔に支障物があるとの連絡を受け、確認の為に西秩父へ行く。
その鉄塔に爆発物を発見した直後に、仕掛けた男に銃殺される。
その鉄塔は午後7時に爆破され倒れる。
午後9時には東北連系線の鉄塔にニトログリセリンを積んだヘリが衝突、倒壊。
続いて、鹿島火力発電所・新佐原間の鉄塔も爆発物により倒壊。
東京は一時的な停電となる。
警察は東京をターゲットにして電力テロと見て、対策本部を立ち上げる。
東都電力は停電の輪番制を取り、少ない電力で乗り切ろうをするが、そのシステムに罠が仕掛けられていた。




面白かった、特に前半が。疾走感がある。
電気は余ったからと言って貯蓄して置く事が出来ない。
需要と供給のバランスを保つように管理するのは大変なのだ。新たに知った。
その電気を遮断して東京を停電させる計画を実行していく様子や、対処しようとする電力関係の人たちの攻防。
犯人がなにを仕掛けてくるのか分からない緊迫感。
実際にあった事件がモデルになったものもあり、リアルに感じる。
たくさんの人が関わっている様が伝わって来て物語に深みも感じられた。
停電などの災害にあった時、備えは大丈夫だろうかなど、自分のことも考えてしまった。
後半はもっと混乱の展開になるのかと思ったら、意外と静か。
大都市が1日停電したらもっと大混乱が起きるような気もするが。
みんな大人しく引篭もって大した混乱はなかった。
もう少しパニックになりそうな気がするが、そこは大筋ではなかったと言う事か。
そして、停電を引き起こした犯人の目的を知った時に何か違うぞ、と違和感が。
犯人の辛い過去は分かる。だから余計に罪もない人を巻き添えにすることに、何の呵責もなかったのだろうか。
これだけ頭が良く、準備を整えたのなら、もっと違う方法を取れなかったのだろうか。
ラスト、本人は綺麗な終り方と思っているかも知れないが、今度は自分が恨まれる立場になったことをどう思うのだろう。
もうひとつ、騙された様に日本に来たベトナムの青年労働者の物語がある。
こちらのラストは悲惨だった。
お互いにあまり干渉せずに、自分の目的追行の為の仲間だったのかも知れない。
しかし、心を通わせたシーンもあったので、もう少し日本人として助けて上げられなかったのだろうかとも思った。

ホワイトアウトもあるが、ブラックアウトもあるのだ。

なんとなく雰囲気が福井晴敏さんを思わせるものがあった。
スケールの大きさや誰かを守るため、という雰囲気。
ただ最後まで大きなスケールの福井さんと比べると、ちょっと最後は小さくなってしまった感じがある。

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