しましましっぽ

読んだ本の簡単な粗筋と感想のブログです。

「トラップ」  相場英雄 

2015年06月06日 | 読書
「トラップ」  相場英雄     双葉社     

4編の連作短編。
「ナンバー」の続き。

「土管」
5知の応援に駆り出された西澤。
その時に掴んだネタを独自に調べ始める。
汚職は確実だと思えるが、確かな証拠が掴めない。
しかし、上司の真藤には西澤には分からない物が見えていて答えは出ていると言う。
上司の清野は「三知に代々伝わる伝統芸、土管」だと言う。

「手土産」
年末に突然の衆議院選挙が行われることになり、西澤は二知の応援に出る。
二知は選挙違反摘発のエキスパートだ。
しかし、出向いた牛込署の責任者は本庁嫌いで指示も与えない。
西澤は出向間際の真藤のちょっとした呟きをヒントに、独自に調べ始める。
そして同時に「手土産を待っているぞ」の言葉も胸に刻む。

「捨て犬」
今三知には西澤より2歳下のキャリア、小堀が動員されている。
小堀は何でも覚えたいと、ノンキャリアの仕事をこなし、行確も行う。
そんな小堀が家宅捜索の時、捨てられた子犬を見つけて連れ帰る。
やがて西澤は、小堀が捨て犬と同じと知って衝撃を受ける。

「トラップ」
老人福祉施設が絡む汚職事件を調べ、容疑が固まる。
自信満々の西澤に、病で倒れた真藤は「水も漏らすな」と警告する。
吸い出しが行われ、贈収賄双方から自供を取り、後は逮捕状いう段階で待ったが入る。
弁護士が入り、被疑者が証言を翻し無罪を主張する。
担当した稲垣弁護士は元検察官で、勢力争いに負けて検察庁を去っていた。








新米だった西澤が、まだ勉強中ながらも成長して課の中で馴染んでいる。
そして、2課の仕事の様子も色々な角度から見せてくれる。
地味だが、緊張感がある展開。
2課の仕事は出だしは閃きもあるが、その後は堅実に調査を進め、容疑を固めて行く。
その中で、見落としはないか、より慎重に取り組む。
そんな中に人間ドラマが挿入される感じ。
それぞれの登場人物が分かって来て楽しめる。
3知は癖はあっても優しくいい人たちが多い。
今回は、小堀の存在もドラマチックな要素を大きくしている。
しかし、どんな組織でも苛めはあるし、変な対抗意識もある。
その分をもっと捜査に回して、なんて単純にも思ってしまうが。
そして「トラップ」は、社会の仕組みとはいえ、色々と不公平さを感じて腹立たしい。

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