![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/55/09/a478accec122fe8c594876d63e743b4c.jpg)
日野てる子さんの「夏の日の思い出」(1965年)という曲があります。
って誰も知らないっすよね(笑)
ぼくら一回り上の世代でも知らないぐらいだからね。
うちのお袋世代が知ってたぐらいの曲だからね。
とにかく知られざる昭和の名曲でね、よく作られた曲なんですね。
編曲はジャズピアニストの前田憲男さん。
イントロのギターから、南国情緒溢れるオーケストレーション、
エンディングまで見事なお仕事をしております。
最近自分でアレンジして歌ってるその「夏の日の思い出」と、
当時のコザのお話を。
僕のライヴにいらっしゃってる方はよく聞かされてるはずだし(笑)
昔のblogに書いた気もしますがいってみよう。
僕が20歳そこそこの頃、中ノ町にある某高級グラブで、
僕はウェイターとしてアルバイトしてました。
クラブと言っても最近の踊るクラブじゃなくて、
月に給料日が二回もあるゴージャスなホステスがいる高級クラブね。
なぜに給料日が二回もあるのかと言うとですね、
店の固定給とは別に、ホステスさん個人の力量、
つまり指名や同伴出勤などで得る給料のことなんですね。
そこで店のNo.1が決まるわけで、
それはそれは、
夜の女のシビアな世界が繰り広げられるわけなんです。
当時その話をオーナーに聞かされてびっくりしたんだけど、
そんな高級取りのホステスさんは、
それはそれで人一倍頑張っててね、
それがもう、露骨に給料に表れるわけなんです。
もちろん人気ホステスさんは美貌ってのも重要だけど、
なかなか単純でもなくてね、色々大変なんです。
個人の営業能力と努力が物をいいますし、
流行に目をやったり、毎日何冊も本を読んで教養を身につけたり。
あの経験はすごい社会勉強でしたね。
全然役に立ってませんが😅
そのクラブにM子さんというお姉さまがいて、
コザ中の先輩ってこともあって、とても可愛がってもらったんだ。
けどM子さんいつも泥酔状態でね、
ガキながらに「何があって毎日こんなに酔ってるんだろう?」
ってのがホントのところだった。
その頃はね、カラオケもまだ今と比べるとお粗末なも物でね、
ガチャガチャなんて乱暴に機械に突っ込んでは鳴らす、
8トラックのカラオケだったんだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/c0/24225ef91e7331e4bb74c1ca8426af77.jpg)
でもそこは高級クラブですからね、
高級感ってことでピアニストをどこのグラブも雇ってたんです。
で、店も終わりに近づくとですね、
決まって泥酔したM子さんがふらふらとピアニストに近づいてというか、
もたれ掛かってというか(笑)耳打ちすんだよ。
そこで例の「夏の日の思い出」のイントロが流れるんだ。
いわゆるM子さんの十八番なんだよね、夏の日の思い出は。
もちろん名曲なんだけど、
とにかく酔ったM子さんがピアノにもたれ掛かって歌う姿が、
とても色っぽくてね、
ガキの僕から見たら妙に大人の説得力があったんだ。
けして美声でも上手いわけでもないけど、
彼女のどこか寂しそうなムードと、容姿から放たれる世界観があって、
僕はいつも見とれてた。
当時はね、ヤクザのおじさんやお兄ちゃんもたくさんいてね、
そういう人達もM子さんは見事に操っててカッコよかった。
一度M子さんがその人達の前でボトル割って
「なめんな!」って言った時はさすがに店内騒然としたけどね(笑)
そんな時のオチもね、
ふらふらとピアニストのとこ行ってあの歌が始まるんだ。
よく店終わりにM子さんが
「おいバンドマン!腹減ったろ?飯食いに行くぞ」
つーてね。ご馳走になった。
その時、M子さんからこの歌伝授してもらったんだ。
つまりこの曲が、僕が初めて習って歌ったカラオケの曲なんだ。
だから今でもこの曲を歌うと、M子さんの強い香水の匂いとか、
ピアノにもたれ掛かったあの姿が浮かぶんだな。
それから何年かしてM子さんと一度だけ真夜中にすれ違ったことがある。
相変わらずふらふらと千鳥足で中の町を歩いてた。
「M子死んじゃったよ」って噂も流れたことがあった。
後のことは僕にはわからないけど、
この歌を僕が、M子さんから受け継いで歌ってるような気もするんだ。
この歌には確実にあの頃のコザ匂いがあるし、
どこか寂しげで、物憂げな、
彼女の残り香が染み込んでいるんだ。
👮おまけ👮
とある日クラブに出勤したら、ヤクザのおじさんに呼ばれた。
で、おじさんが言うには、
「普天間に車止めてあるから取って来い」と。
で、僕は一瞬戸惑い、
「仕事中なんでオーナーに聞いてみないと」と。
そこでおじさんオーナーを呼んで、こうこうこういう話だから、
こいつを行かせていいか?と。
んで、オーナーは「どうぞどうぞ」と(笑)
おいおいオーナー、それでいいのかよ!とツッコミたかったが、
取り敢えず僕は言われた通り、おじさんの車を取りに普天間に向かった。
しかし問題は出発前におじさんが僕に言った言葉。
「おいボーズ、運転席のシートの下に弁当があるからよ・・・
けしてそれを見たりするなよ」・・・と(笑)
え?
普通さ、普通そんな事言われたらさ~
誰だって想像するのってさぁ~
シートの下に隠してあんのってブツかチャカだよね?(笑)
わはは、ローリー逮捕の新聞の見出しがよぎったね。
結局普天間から中の町までの車中、
そのブツを見ることも、触ることもしなかったけど、
シートの下に弁当なんてさ、
なんでそんなよく分かんない発表したんだろ(笑)
ヘンだぞおじさん。
あの店で働いてる時の1番印象に残ってるヘンテコな事件だった。
M子さんの「夏の日の思い出」と共に、
「シートの下の弁当見るなよ事件」は 、
永遠に僕のアルバムに刻まれているのだ。