現在では日本の金融政策のことがWSJに載ることはほとんどない。過去に日本勢がアメリカの金融市場を動かすほど影響力があったときは、市場参加者はもっと日本のことに注意を払っていたのだが。
日銀が政策金利を引き上げるかどうか?というトピックも為替トレーダーや投機的に為替取引を行っている人には大きな関心事だろうが、米国の一般的な投資家にはほとんど関心がないだろう。
さてそうは言っても、市場参加者の間には、日銀もそろそろいインフレ抑制のために政策金利の引き上げに動くのではないか?という期待は米国の市場参加者の中にあった。というのは日本のインフレ率は1年以上も日銀がターゲットとしている2%を超えているからだ。
だが昨日日銀の政策決定会合の後の記者会見で、植田総裁は「賃金と物価の上昇サイクルが現実的なものかを見極めたい」として金利引き上げについて言及することを避けた。
これについてWSJはBank of Japan Chief, bucking expectations,avoids talk of rate increaseという記事を書いていた。Buckといのは名詞としては鹿buckという意味があり、動詞としては抵抗するという意味がある。この場合は「市場予想に反して」という意味だ。なぜbuckという単語を使うのか理由は分からないが、buckは俗語で「ドル紙幣」という意味があるのでそこからの連想かもしれない。これは余談だが。
記事は大和証券の岩下エコノミストの「日銀は生涯に一度のチャンスを見逃すべきではない。もし1月に日銀が政策金利を引き上げないとすれば、日銀は米連銀が政策金利の引き下げを完了するまで金利引き上げの機会はないかもしれない」というコメントを紹介していた。
アメリカが金融緩和を鮮明にする前に日銀が多少なりとも金融引締め姿勢を示さないと引き締めるチャンスがなくなるという趣旨だろう。
さて精神論は別として、日銀にどれ位政策金利を引き上げる余地があるのか?というと、おそらくマイナス金利を止める、つまりマイナス0.1%の金利をゼロに戻すという程度の話ではないだろうか?
もしそうだとすれば、実際の金利計算上の影響は限定的で為替相場が10円も動くというのは少し奇異な感じがするが如何なものだろうか?