金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

小泉首相とマキャベリ

2005年08月18日 | 政治

小泉首相がマキャベリの愛読者かどうかは知らないが、彼の言動を見ているとマキャベリの語録に良く適っているところが多い。最初に断っておくが、私はマキャベリを権謀術数の指南者ととらえているのではなく、政治と人間心理の冷静な観察者とポジティブにとらええいる。以下の引用は塩野七生さんの「マキャベリ語録」からの引用である。

塩野七生さんは「マキャベリ語録」の巻頭言でこう書いている。

政治を論じているからといって、永田町界隈や県庁所在地でくりひろげられてるものだけを思い浮かべないでください。・・・・・・残念ながらあのような場所で支配的なのは、狭義の政治にすぎません。政治とは・・・・もてる力を、いかにすれば公正に、かつまた効率良く活用できるかの「技」ではないかと考えています。・・・・・・そして現在の日本人に求められているのも、このような意味での政治ではないかと私は考えます。

この文章が書かれたのが1988年春であり、今から17年前である。今小泉首相の一連の行動を見ていると日本の政治も少し塩野さんが言う本当の政治に近づいてきた様だ。今小泉人気が再び高まっているが、私はそれは一般市民が漸く本当の政治に期待し始めたということかもしれないと思っている。それにしても綿貫氏や亀井氏一派の「国民新党」結成が何と陳腐に見えることか・・・・これこそ塩野さんが言う狭義の政治以下であろう。

さてマキャベリ語録に照らして最近の小泉首相の言動を少し見てみよう。

頭にしかといれておかねばならないのは、新しい秩序を打ち立てることくらい、むつかしい事業はないということである。・・・・この問題を充分に論ずるには、新秩序を打ち立てようとするものが自力で行なうとしているか、しれとも他者の助けをあてにしているかで分けられねばならない。・・・後者の場合は必ず障害が生じてきて、目標の達成は不可能になる。反対に、自力で行なおうとする者は、途中でなにが起ころうと、それを超えて進むことができる。だからこそ、武装sる預言者は勝利をおさめることができるのであり、反対に、備えなき者は滅びるしかなくなるのだ。(君主論)

小泉首相は郵政民営化に反対する自民党議員を容赦なく切ったが、この行為こそ「他者の助けをあてにしない」行為である。

人の上に立つ者が尊敬を得るには・・・敵に対する態度と味方に対する態度を、はっきり分けて示すことである。(君主論)

綿貫氏等は「反対議員を党からはじき出すことは断じて受け入れられない」と言っているが、党議拘束は民主主義の先輩国である英国でも極めて重たいものである。政党が政治的理念を一つにする政治家の集団である限り、政治的信念が異なるものが袂を分かつことは当然である。もし政党が政治家の経済的利益を拡大する手段であれば、政治的理念が異なろうとも同じ船に乗れるのだろうが。この意味で敵味方をはっきりさせた小泉首相の行動は極めてマキャベリの原理に適っている。それに較べて自民党反改革派の連中のもの言いは何と情緒的で決断力に欠けることか。

いかなる政体であろうと、国家というものは、はじめから完璧な組織づくりができているというこはありえないのだ。それゆえに、一度ならず手直しが必要とされてくるのだが、その改革が根本的なものであればあるほど、ただ一人の人間の意志と能力に、改革の成功が左右されることが多いのも事実である。(政略論)

これこそマキャベリの現実直視の真骨頂であろう。古来改革は独裁的人間でなければなしえない。問題はその改革者が私利私欲の少ない人物であるかどうかであろうが、少なくとも今選挙民は比較的小泉首相は私利私欲が少ないと判断しているようだ。それ故彼は人気が高いのである。

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銀行貸出、プラスに転じる日が近い?

2005年08月16日 | 株式

このところ大手銀行の株価上昇が目立つ。景気の回復基調がはっきりしてきたので当然といえば当然であるが、貸出残の減少に歯止めがかかりそうだということも一つの要因の様だ。この点についてウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「日本における貸出拡大の兆候」(In Japan, Sign of Loan Growth)という記事を出している。海外勢がこのような見方に立つとすると銀行株相場は息が長いかもしれない。

金融業務に携わるものとしては貸出機会の拡大は好ましいことであるが、目先の金利動向には注意を払いたいところだ。以下WSJの記事を簡単に紹介する。

  • 日本経済は長く続いていたスランプから脱出する重要な一里塚に近づきつつあるように見える。一里塚とは銀行貸出がプラスに転じる時点だ。
  • 全国銀行・地方銀行による6月の貸出残高は、前年同期比0.1%の減少にとどまった。これは時系列的データが提供されはじめた2004年6月以降最小の落ち込みである。(なおコメントを加えるとこれは日本銀行が8月8日に発表している『7月の貸出動向』を踏まえたものであるが、債権流動化・償却等の特殊要因調整後の数字で-0.1%ということであり、調整前は-2.4%である)
  • 幾つかの地域では貸出残はプラスに転じている。例えば九州では先月貸出の伸びはほぼ6年振りにプラスに転じた。
  • 強い経済指標とここ数ヶ月の企業収益動向から見て、エコノミスト達は2005年年末にかけて銀行貸出はプラスに転じるだろうと述べている。
  • 貸出増加の要因は銀行が不良債権処理を終えたことが大きいが、もう一つの兆候は長年の信用収縮と物価下落から脱し、日本が拡大サイクルに再び入る可能性が高いということである。拡大サイクルの中で銀行は経済成長に資金を提供する要となる。
  • クレディスイスファーストボストンのストラテジスト市川氏は先週投資家に景気回復により企業借入が拡大し銀行収益が改善するので銀行株の積み増しを推奨した。
  • 貸出の拡大は銀行株以外にも影響を与えるだろう。資金需要増加は金利上昇を助長するだろう。もっともこれはまだ実際には起きていないことだが。金利上昇は日銀の金融政策の舵取りをやり易くする。
  • 一方幾人かのエコノミストは貸出増加は現在のところ実際の資金需要よりは銀行の積極的な姿勢により起きていると言う。従って新規ローンの金利はまだ低下し続けている。モルガンスタンレーのエコノミスト斎藤氏は高級物件に対する不動産融資がミニバブルを起こしていると言う。彼は「貸出増は必ずしも貸出の質の改善にはつながっていない」と言う。
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ここは小泉首相に頑張って欲しい

2005年08月15日 | 政治

僕のブログでは今まで特定の政治的主張は余り打ち出してこなかったが、今回の総選挙では小泉自民党応援を打ち出したい。「理由は何か?」と言えば改革のモメンタム(勢い)を持続して欲しいということに尽きる。英国のサッチャー政権は英国経済の低コスト化で大きな成果を挙げたが、10年の歳月を要している。改革には時間がかかるものなのだ。小泉首相にはもう少し頑張って欲しい、少なくとも郵政民営化を実現させて欲しいと思う。

海外メディアの中でエコノミスト誌は持続的に郵政民営化問題を取り上げており、一時は法案通過を予測していたし、一定範囲で小泉政権の成果を評価している。僕もこのブログの中でその記事を簡単に紹介している。今またエコノミスト誌は「ライオンの最後の雄叫び?」というタイトルで総選挙問題を論評している。ポイントは以下のとおりだが、少なくともエコノミスト誌は「自民党を変える、日本を変える」という公約に彼はかってない程忠実だったと述べている。衆院解散後小泉首相の人気は急上昇しているが、その人気の原因はブレの少なさだと私は思っている。改革は理論ではなく闘争である。選挙民は小泉首相の中に実践力を見ているのだ。

以下エコノミスト誌の記事のポイントを紹介しておこう。

  • 日本は9月9日の総選挙で民意を問うことになるが小泉首相、自民党そして日本にとってリスクは巨大だ。というのは自民党、民主党とも明確な過半数を得ることが恐らく無理でその結果反改革派がキャスティング・ボードを握る可能性があるからだ。しかしこれは真の改革派が長いこと望んできた動きの中にあることだ。
  • 現在自民党は混乱の最中にあるが、9月の総選挙は古いシステムを永久に破壊することを助長するだろう。民主党の岡田党首は「今回の選挙を第二次大戦後最も重要な総選挙」と言っている。
  • 選挙結果は拮抗するだろう。世論調査では小泉人気が急上昇しているが、自民党の分裂が伝統的に強い地方でどの様に影響するかあるいは都市部に強い民主党にどの様に影響するか最初の段階ではとても分からない。
  • 外交政策も要因の一つである。民主党はイラク撤兵を公約するだろう。また穏健派、ビジネスマンは民主党が中国・韓国との緊張を緩和することを期待して同党を支持するだろう。
  • 一方経済状態は小泉首相の味方となっている。小泉首相は最近の景気回復を構造改革の成果とするだろう。経済成長は加速しつつある。望むべくは経済成長が雇用拡大と賃金上昇につながり、消費者の信認回復が高まりデフレーションが終焉することである。先週の政治的混乱にもかかわらず、日本株式市場は堅調に推移している。
  • 日本の過半数の人は民営化を支持していると思われるが、小泉首相にとって郵政問題のみに固執することは危険である。民主党は小泉首相が何故郵政問題にのみ固執するのか?と質問を浴びせてくるだろう。民主党はより広い分野における変革を望んでいることを強調している。
  • 岡田党首は別の問題を抱えている。それはかって政権を取ったことのない民主党が公約した変革を遂行しうるということを選挙民に確信させうるかどうかという点だ。
  • 民主党に対する一つの批判はそれは自民党と同様分裂しているというものだ。民主党員は旧自民党メンバーから旧社会党メンバーまで包含する。総ての候補者がサインしなければならないマニフェストは結束を約束する手段であるのだ。
  • いずれにせよ自民党の分裂は極めて大きな出来事である。小泉首相は2001年の就任以来「自民党を変える、日本を変える」と約束してきた。小泉首相はかってない程公約の前半分を忠実に実行している。
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智美術館にガラス展を観る

2005年08月15日 | まち歩き

週末神谷町の菊池寛実記念 智美術館http://www.musee-tomo.or.jp/に行き、現代ガラス工芸展を観た。

Glass 作品は富山市の収蔵作品とチェコの作家の作品である。落ち着いた地下の展示室でガラスの作品を見ていると暑い東京の夏を一時忘れる。

作品を観てから妻と同じ建物の中にあるレストラン「ヴォア・ラクテ」でスパゲティを食べた。この日はお盆休みのためか食事メニューはパスタのみだった。

持仏堂に近いところに席をとりきれいに手入れされた芝生とその上で無心にえさを求めるスズメを見ていると上質な時間が流れる様な気がする。

なお都心の道路は空いていると思い車で出かけたが、智美術館には駐車場はないと思い近くのビルの地下に駐車した。ところが美術館で聞いてみると玄関先の空いているところは駐車可ということであった。

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「星になった少年」を観る

2005年08月12日 | 映画

先日家内と「星になった少年」を観た。この映画は千葉県東金市の小川動物プロダクションの実話をベースにしている。粗筋は動物プロダクションの息子哲夢(柳楽優弥)が、ゾウに魅せられタイのゾウ使い学校で勉強し、帰国後ゾウ使いとして活躍する矢先、交通事故で夭折するというものだ。

この映画は清々しい。それは自分の夢を追い求める少年とそれを支える家族やタイのゾウ使い学校の人々の優しい眼差しがあるからだ。夢を追い続ける尊さをこの映画は教えてくれる。

同時にこの映画は人間同士の心は時として「ゾウと人間」よりも通じないということを教えてくれる。それ故心が通い合う人間とゾウとの交流に魅かれるものがあるのだろうか?現代を生きる人間は既成概念等で雁字搦めになり、心を通わすことが困難になっているのかもしれない。それ故この映画の中の「ゾウと人間の交流」や「タイのゾウ使い学校の人々と哲夢の交流」が美しく見えるのである。

映画の最終場面で哲夢のガールフレンド絵美(蒼井 優)から哲夢の母佐緒里(常盤貴子)は「哲夢がゾウ使いになったのはゾウが好きなお母さんをあこがれていたから」と聞き号泣する・・・・・。そう、親子といえども中々本当の気持ちが分かっていない場合があるのだ。

ところでチェンマイ郊外の山野の風景も素晴らしい。その豊かな自然の中を悠揚として歩いてるゾウ達を見る時心の和みを覚える。

「星になった少年」は色々なものを我々に与えてくれる中々良い映画である。

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