政府は昨日「人生100年時代構想会議」を開き、高齢者の雇用拡大について議論を始めた。それによると加藤厚生労働相を中心に継続雇用年齢を65歳以上に引き上げる環境整備を進めるということだ。
会議では日本総研の高橋氏が「継続雇用時に、一律に賃金を定める会社が多く働くインセンティブをそいでいる」(日経新聞による)と問題点を指摘していた。
私もある会社の継続雇用制度をレビューしているところなので、この問題には関心が高い。
レビュー先も継続再雇用時に定年前の給与の一律〇〇%という賃金の決め方をしている。また私がこれまで務めてきた幾つかの会社もほぼ同じ方式を取っていた。
なぜこのような一律減額方式を企業は取るのか?という最大の理由は「継続雇用は法的義務で会社の従業員に対する恩恵だと考えている会社が多い」ことにあると私は考えている。
多くの日本の会社は勤続年数と職能資格をベースにした賃金体系を取っていて、職能資格給の割合が増えている。そして年齢が高くなると管理者能力の高さが給与に反映されることが多いと判断される(もっとも専門能力の評価を高める方向に動いている企業も増えているが)。
再雇用後はラインで働くより、個人のスキル・経験を生かしてスタッフ的な働き方をすることが期待されるので、管理能力を中心に判断されてきた定年前の給与をベースに一律的な決め方をするのは、合理的ではないと思われる。
しかし現実には一律減額型が多い。その最大の理由は既に述べた通り、再雇用を恩恵と考える風潮が強いことにあるが、加えて人事考課プロセスに問題があるのではないか?と私は考えている。
本来再雇用時には「従来の役割とは違う仕事をする」ことが原則である(もし従来とまったく同じ仕事をするのであれば、同一労働同一賃金の考え方に基づいて、従来並みあるいは少々の賃金ダウンの水準で賃金は決定されるべきである。)
「従来の役割と違う仕事をする」のであれば、新しい職務内容Job descriptionに基づいて賃金を決めるべきだし、新しい職務内容の達成度合いにより、定期的に賃金水準が見直されるべきである。
ところが多くの日本の企業は職務内容を細かく規定する習慣がない。また人事部や現場の人事責任者は職務内容に基づく人事考課の経験が乏しい。そこで無難で手間のかからない一律減額型を採用しているのではないか?と私は判断している。
この問題は高齢者の再雇用に留まる問題ではない。これから労働力不足に面する日本の会社は、外国人労働者を含めて様々な労働力を活用していく必要がある。この様々な労働力を活用するには、職務内容を具体的に明確にして、客観的な成果の判定方法を作っていくということが必要である。
つまり人事考課手法・プロセスの見直しとそれに基づく評価者訓練が大きな課題であり、それなくして本当の意味での高齢者の活用は難しいと私は考えている。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます