鳥海山という名前を知ったのは小学生の頃だった。社会科で鳥海火山帯という言葉を習ったので、その他の東北の名山は知らなくてもこの山の名前だけはずっと頭の隅に残っていた。いつか登るべき山として。その鳥海山登山だが台風5号とその尻尾のような低気圧に邪魔され、中腹の御浜小屋で引き返すことで終わった。
この日(8月6日)は朝5時に湯野浜温泉を出て、レンタカーを飛ばし鳥海ブルーラインに入った。この時点では雲は厚いものの登山の障害になるとは思わなかった。ところがしばらく車を走らせると霧が濃くなり視界は4,50mを切る位になった。のろのろ運転を続け6時15分頃鉾立の駐車場に到着。広い駐車場に6,7割方車が止っているのをみて改めて鳥海山の人気に驚いた。
「一両日の悪天候で登山者達は山の上の小屋で足止めを食ったよ」と指導員の様な人が他の登山者に説明をしているのを聞きながら6時40分頃出発。しばらく登ると白糸の滝がかろうじて見える位に霧が晴れてきた。
「これなら頂上に立てるかもしれない」と少し期待を持ったが、御浜小屋に着く頃にはすっかり雲の真ん中に入ってしまった。小屋までは鉾立から1時間40分の登り。小屋から上は稜線になり風が強くなった。「これでは眺望もなく大変なだけだから下山しよう」ということになり、引き返す。
一瞬雲が切れ稜線が見えた。標高1600m位のところだが、既に潅木も少なく笹原が広がり高原の様相を呈している。風が強く大きな木が育たないのだろう。
鳥海山は高山植物の宝庫というが私達が歩いたところではそれ程目立つものはなかった。もう少し登山道を外れたところにあるのだろうか?それとも時期が遅かったのだろうか?
写真はチングルマだ。風にそよぐと子供が遊ぶ風車(稚児車ちごぐるま)に似ることからチングルマの名前が付いたが、この日は霧に濡れて重たく風車を垂れていた。
ニッコウキスゲの花も濡れている。
アザミが咲いていた。鳥海山にはチョウカイアザミという固有種があるが、これは普通のノアザミのような気がする。
下山時は写真を撮りながらゆっくり歩いたので、御浜小屋から一時間半程かかった。
鳥海山は再度来て頂上まで登りたい山である。しかし日本海に面したこの独立峰はかなり気象条件が厳しそうだ。特に冬は北アルプスをも凌ぐ烈風が吹くと聞く。鳥海とはロマンチックな響きの名前だが、中々手強いところのある山なのだ。
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