金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

安らかに眠れ、アンナプルナに抱かれて

2014年10月19日 | 

先週火曜日に起きたネパールのアンナプルナ・ダウラギリ山群で起きた大規模な吹雪と雪崩による遭難事故。土曜日時点のニュースによると日本人2名を含む39名の死亡が確認されているが、行方不明者が多く被害は拡大するだろう。

事故が起きたのはアンナプルナ・サーキットと呼ばれるアンナプルナ(8,091m)を一周するトレッキングルートの中のマナンや一番標高が高いトロン・パス(峠)5,416mの少し手前の付近だ。またアンナプルナの西に位置する8千メートル峰・ダウラギリでも登山者の遭難が報道されている。事故の原因は、季節外れの雪崩と猛吹雪。通常10月のネパール・ヒマラヤはポスト・モンスーンと呼ばれる天候が安定する時期だが、インドを襲った台風の影響で猛烈な雪が降ったようだ。

私は昨年11月にアンナプルナにトレッキングに出かけた。歩いたのは一周コースではなく、アンナプルナ・サンクチュアリ(内院)・ルートと呼ばれるアンナプルナ主峰の内懐を往復するコースだったが、今回の事故には衝撃を受けている。

昨年は天気が良く雪が降るようなことはなかったが、内院ルートにも何カ所か側壁から雪崩に襲われる危険性のある場所があった。アンナプルナのような高山では、トレッキングルート(谷底や河岸の土手など)の上には数千メートルの岩壁がそびえていることが多い。山の上に降った雪はこの岩壁や岩壁の中の細いルンゼ(溝)を音もなく滑り落ちてくることがある。トレッキングルート自体にそれほど雪が降っていなくても、数千メートル上の雪が雪崩となって落ちてくることがあるから油断がならない。

アンナプルナはネパール語で「豊穣の女神」という意味だそうだ。「A」の音が多く明るい響きのアンナプルナだが、言葉の優しさとは裏腹に雪崩事故の多いことでも有名な山だ。

ヒンズー教の神々については、一つの神様の中に「慈愛」と「憤怒」が同時に存在しているという話を聞くことがある。その意味するところはピンとこなかったが、今回の事故を見て、アンナプルナには「豊かな雪解け水で農耕を助け、豊穣をもたらす」慈愛の形相と「雪崩やブリザードで人や生き物の命を奪う」憤怒の形相がある、ひょっとしたらこのことを指すのかしら、と感じた次第。

実は私は来月エベレスト方面にトレッキングに出かける予定なので、今回の事故については強い関心を持っている。The Guardian紙によると、当局は悪天候の警告をトレッカーたちに伝えなかったことを批判されているという。登山隊の場合は、独自で気象予報を入手しているが、「好天気が続く」ことを前提にしているトレッキングの場合、余り天気予報に関心を払っていなかった(自分の経験でも)。これからはもう少し天気予報に注意しようと思う。

次に事故に巻き込まれた人は「ガイドなし」でトレッキングをしていた人が多かったというコメントも目にした。ガイドがどれほど頼りになるかは疑問(昨年のガイドは大学生でアンナプルナの経験はなかったようだ)だが、今年は多少高くても山岳経験の豊富なガイドを雇おうかな?と考えている。

I would like to express sympathy for the death of people.

Annapuruna

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アメリカ経済の5つのリスク

2014年10月19日 | 投資

先週金曜日(10月17日)の米国株式市場は大幅に上昇した(ダウは263ポイント(1.6%)の上昇)。上昇したといっても、1カ月前に較べると、ダウは885ポイント(5.13%)下落している。少し前までは「新しいゴルディロックス経済の到来」などという楽観的な言葉を米紙で見かけたが、今では懐疑的なムードが支配的なようだ。

CNBCに「米国経済が脱線する5つのリスク要因」という記事が出ていた。

5つのリスクとは「世界的な景気減速」「長期金利の上昇リスク」「原油価格の下落とインフレ率の低下」「急速な物価上昇」「株価下落」である。このリスクは日本経済が抱えるリスクと基本的には同じだ。もっともGDPの輸出依存度は米国が10%程度(CNBCの記事による)で、日本は14%程度だから世界経済の鈍化が経済に与える影響は日本の方が大きい。

原油価格とインフレは関係が深い。原油価格の低下は短期的には消費者にプラスに働くが、原油価格の低下が続くと物価上昇率が危険水域に入る可能性がある。キャピタル・エコノミクスのチーフエコノミストによると「インフレ率が1.5%まで落ちても問題はない(8月は1.7%だった)が、もし0.3%まで低下すると問題だ」と述べている。このように物価上昇率が連銀がターゲットする2%より大きく落ち込むリスクを指摘する声がある一方食料品や原油価格の予想外の急上昇懸念を指摘する声もある。

例えば米国の大平原地帯では、何十年ぶりという旱魃が起こり、食肉価格を上昇させている。現在のところ海外からの輸入である程度価格は抑えられているようだが、世界的に異常気象が目立っているので、どこで何が起きるか分らないというリスクはある。

このところの株価下落については「一時的なもので大きな懸念はない」とする声が多いが、エボラ熱の感染やイスラム国問題が持続すると株価が一段と下落するリスクは残っている。株価の大幅な下落は、富裕層の消費マインドを萎縮させ、景気の悪化につながるだろう。

以上のようなリスクは別に先週急に出てきたものではない。株価の急落でそれまで軽視させていたリスクに改めて焦点が当たっただけの話ではある。

さて日本ではこれに加えて私は「小渕経産相の政治資金問題に絡む辞任」としれに続く安倍政権の不安定化や「消費税再引き上げ判断」問題がある。消費税再引き上げに踏み切ると当面の景気を冷やす可能性が高いし、再引き上げを見送ると財政規律の弛緩とみなされ、国債価格が下落(長期金利の上昇)するリスクがある。いずれにせよ株価には悪影響を及ぼす可能性が高い。

日米経済ともリスクを抱えているが、相対的には今の時点では日本の方がリスク要因は多いのではないか?と私は考えている。それが正しいかどうかは市場に聞くしかないが。

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