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追憶の彼方。

思いつくまま、思い出すままに、日々是好日。

自民党総裁選―2

2024年09月30日 | 政治・経済

自民党総裁選―2

自民党総裁選の決戦投票は21票の僅差で石破氏が勝利した。韓国紙は「石破も期待できないが、極右・高石よりマシ」と報じたが、多くの日本人の心を代弁しているのではないかと思う。

9人で争った1回戦の得票数の上位二人は、高市181票(内議員票72)、石破154票(内議員票46)でこの二人で決選投票が争われることになった。(尚3位は小泉136票、内議員票75はトップであったが、党員の不興を買ったのが、大きく影響した。)

決選投票では議員票が大きく動いた。小泉75、林38、上川23、合計136票、プラス7票(河野の一部)が石破に流れ189票となった。一方高市には小林の41、茂木34、加藤16合計91票、プラス10(麻生の指示による河野票) 合計101票が上積され合計173票となり、議員数で石破が16票上回り、更に党員票でも石破が26票で高市を5票上回って、石破が僅差で勝利し、総裁が決定した。

裏金議員や統一教会関連議員等に推薦された高市が勝利して居れば、日本は極端な右側エンジンだけで離陸し、直後に墜落して取り返しのつかない惨事に見舞われていた可能性もあり,辛うじて踏みとどまった感が強い。組閣で幹事長以外は受けないと嘯いたらしいが、とんでもない話。幹事長は選挙候補者の人選や資金提供の権限を持って居り、裏金議員・壷議員、右翼議員の優遇が目に見えている。

しかし自民党の半数近い人間が、何故このような危険な人物をトップに据えようとしたのだろうか。其の旗振りをした麻生や旧安倍派の連中を含め多くは、石破の日頃の言動から、政治改革を本気で進め、金の問題や自民党を支える宗教勢力排除等、自民党員にとって極めて住みにくい環境が出来上がるのではないかと危惧しているのではないかと勘繰りたくなる。「水清ければ魚棲まず」の言葉が示す通り、自民党旧来の腐臭漂う濁った環境が住み心地が良いのだろう。石破を担ぎ早期解散・総選挙で今の逆風をやり過ごせば万々歳、大敗すれば石破と言うシャッポを変えればよいだけと言う捨て駒作戦ではないかと思う。国民や国家の将来など、どこ吹く風、自分達の既得権を何とか死守したいとの思いだけである。

しかし一部国民が石破に期待した政治改革はそう簡単には進まないだろう。既に石破も変節の兆しが見え始めている。国民に総選挙の判断材料を提供する為、党首討論を是非やりたいと言っていたのも党内多くの意見に押され、早期解散日程を言い始め、ほぼ不可能に近い。自民党を変える前に石破本人が変節してしまった感が強い。我々は冷徹な目で新内閣の動向を見守る必要がある。


自民党総裁選

2024年09月25日 | 政治・経済

自民党総裁選

自民党総裁選は泥試合の様相を呈し始めた。9月12日の告示前まで出馬に必要な推薦人20人を集めるのにさえ四苦八苦、立候補さえ危ぶまれていた泡沫候補の高市早苗が、安倍派の裏金議員や統一教会・壷議員の強烈な後押し巻き返しによって石破・小泉に並ぶトップランナーの中に割り込んできたのである。

自民党は金の問題で批判を避ける為、今回は「金のかからない総裁選にしょう」という方針を決め、10億円近くかかる(リーフレットなど封書)を送る事を禁止する旨決めていて、議員はそれを知っていたが、高市は正式通知がまだ来ていないとして、ただ一人、全国に自己の主張を載せたリーフレットを送ったのである。案の定他候補からルール違反などとクレームが続出、泥試合の様相を呈し始めた。しかし正式通知前に送付したのだからルール違反に当たらないと高市らしい強弁を発している。

高市は安倍後継者を自認し、日本経済を滅茶苦茶にした(アベノミクス)推進を叫んでいるが、総裁候補に出ることに依って、自民党内で存在感を示し,良いポストに有りつきたいなど、其の魂胆は見え見え。自己目的達成の為には平気で嘘をつき、不法行為も辞さないと言った点では、当に安倍の最も得意とするところ、立派な後継者だ。本人は恥ずかしげも無く、「サナエあれば、憂いなし」などと言う軽薄なキャッチコピーを薄気味悪い作り笑いを浮かべながら、声高に叫んでいるが、巷では「サナエあれば、地獄在り」の方が正しいとの声さえ飛び交っている。兎に角、危険極まりないこの人物だけは表舞台に立たせてはならない。彼女の推薦人20人の内裏金議員は13人(裏金総額;9015万円)、壷議員15人、日本会議系13人。この事実をメデイアに指摘されると、「自分は推薦人に、どの方を20人に入れるかは選対チームにまかせましたので翌日の新聞まで、どなたが推薦人になってくださったかは知りませんでした」と言い切ったのです。公共放送の場で平気でこのような発言が出来る人間性、普通ではない。「裏金議員」の選挙での公認・非公認や要職起用の是非については、「自民党の処分は決まって居り、党で決めた処分をひっくり返すような独裁的な行動はとらない」と繰り返しているが、自分の推薦人の事を考えれば、自民党が生まれ変わる為には避けて通れない裏金問題、統一教会問題は闇に葬ろうとする姿勢が見え見えである。推薦人の筆頭で高市の最側近、杉田水脈といえば、自身の発言が法務局から2度も「人権侵犯」認定を受けているにもかかわらず、最近那覇市内の講演で差別根絶に取り組む沖縄、アイヌ民族、在日コリアン、被差別部落などの人々を「反日の左翼」と総称し「どれだけ力を持っていて、どれだけ面倒くさいか」と発言したことが問題になったばかりだ。安倍の寵愛を受けたこの杉田、理屈に合わない尖った右翼発言だけで、縁もゆかりもない安倍のお膝元である比例中国ブロックで出馬させてもらい、比例名簿の上位に据えられ、”特別枠”で当選を重ねてきた人物、国民に選ばれたわけではない。こんなのが推薦人の筆頭に居る高市を推しているのは衛藤晟一や山田宏、中曽根弘文といった日本会議系の極右議員、道徳を語りながら裏金づくりに勤しみ、差別で支持拡大を図るのを黙認する、自民党とは何という人間の集団だろうか。

靖国参拝も心、内心の問題であり、首相に選ばれても継続することを断言した。しかし総理を目指す人間が、個人の内心の問題だけで、太平洋戦争の被害者である中国・韓国等が嫌悪する(加害者・戦争犯罪人)を祭る靖国に参拝する事が、外交上の大きなデメリットになる事に考えが及ばないとしたら、其れだけで総理はおろか、国民を代表する国会議員となる資格すら無いと言える。単に個人の内心の問題であれば被害国の神経を逆なでするような行為を避け、心の中で済ませればよいだけの話、どうしてもと言うのであれば、天皇陛下同様、全国戦没者追悼慰霊蔡に出席すればよい。

新生自民党の為の総裁選挙で、最大の問題である裏金問題、統一教会問題の再調査、解決にどの候補も手を挙げなかったところから、国民の目をたぶらかす為の儀式であったことが明白となった。2大政党制が待たれる。


自民党総裁選

2024年08月23日 | 政治・経済

自民党総裁選

8月14日岸田首相は「自民党が変わることを国民の前にしっかりと示すことが必要だ。変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ。来たる総裁選挙には出馬しない。」 と述べて総裁選不出馬宣言を行った。 自民党最大の問題である統一教会問題や裏金問題を放置した儘、総理が退陣する事がどうして「自民党が変わる」事に繋がるのか、問題を放置して敵前逃亡するのは安倍と同じで、当に自民党旧来の姿そのものである。一体次期総裁がこの問題の解決を含めどのように自民党改革、政治改革を図ろうとするのか、そのような骨のある人材がいるのか極めて興味深い。

その様な中、最初に出馬表明を行ったのが小林鷹之氏(49才)(衆院4・二階派)前経済安全保障相である。東大、財務省・理財局(森友・佐川局長)のエリートコースを経て国会議員、お決まりのコースを歩んで来た人物だが、往々にしてこの様な人物に有り勝ちな(出世欲・上昇志向)が強すぎて、自己の目的達成の為には何でも利用して恥じるところが無いという点が目に付きすぎて、強い違和感、居心地の悪さを感じる。利用できる物は悪魔でさえという手法は安倍の得意とするところだったが、安倍の場合は人間が単純なだけ、簡単に見破れたが、小林の場合は複雑系で何とも薄気味悪い。

先ず8月15日終戦記念日に、日本武道館の全国戦没者追悼式ではなく、靖国神社参拝に訪れた。神道政治連盟や日本会議の意向を踏まえた保守派の票を期待したもので、太平洋戦争や戦争責任など考慮の外、諸外国の反対論など全く無視した行動である。統一教会のパーテイーでの挨拶や祝電等による関係もあり、宗教利用はこちらも安倍と同じである。

又、知名度不足の解消と「若さ」アピールの為、趣味のランニング姿を報道陣にわざわざ公開し、更に突然の横田めぐみさんが拉致された被害現場を視察。何故総裁選が始まったこの時期の視察なのか。藁をも掴みたい思いの拉致家族迄利用する、やっていることは古い自民党の政治家そのものである。

政策目標の第一に「自民党が生まれ変わる」を掲げたが、最大の問題である裏金問題、統一教会問題の解明や解決策が何も示されていない。それどころか推薦人の半数を占める安倍派議員に配慮し、「処分を受けた方も一人一人は優秀だ。挙党一致で取り組まないと国難を乗り越えるのは難しい。」役職を外されたことについても「やりすぎてしまうと現場が回らなくなってしまう。」 処遇を改善すべきだと、自民党改革の肝になる部分を否定する始末、改革など頭の片隅にも無い事をうかがわせる。

派閥解消が謳い文句だが派閥の典型と言われる二階派に長年席を置き、しかも総裁選出馬に当たっては二階に挨拶に行くなど底が割れている。派閥の政治資金パーティー収入不記載事件を巡る岸田、二階の責任に関し、「総裁選に不出馬」「次期衆院選に不出馬」との決断をもって、政治的な責任を果たされたと受け止めていると「事なかれ主義」「長いものには巻かれろ」の自民党的発言に終始している。

政治資金パーテイーによる資金集めも活発で、閣外に去った後9月、11月、12月とハイペースでパーティーを開催、この1年計6回のパーティーで総額4407万2500円を搔き集め、金のかからない選挙など何処吹く風の感じが伺える。改革派は世を欺く仮の姿、真逆の人間という印象が強い。兎に角若さを売り物にしたいらしいが、若さで自民党の悪弊に切り込むという姿勢皆無、寧ろ自民党的色彩濃厚な人物そのものの印象である。

それでは、世間はどの議員に「次の自民党総裁になってほしい」と思っているのだろうか? 雑誌・女性自身が20代~70代の男女500人を対象にアンケートを行った。 まず第3位に選ばれたのは小泉進次郎議員(43)である。父親は87~89代総理の小泉純一郎氏、4世代に亙る世襲政治家である。神奈川11区に強力地盤を持ち、当選回数は5回、第27・28代環境大臣を務めた経験もある。政治家の平均年齢の高さが問題視されるなか、 “若さ”に期待する人が多く、《若い議員に今までにない新しい視点で政治を行ってほしい》《若い感性で政治をして欲しい》との声が寄せられた。 また、《誠実そうだから》《一番誠実感があり行動が伴いそうだから》《自民党の悪しきところを、改善できそうな人だから》と人柄に注目する声が。父・純一郎氏の支持者からは《今の派閥政治では国民生活は良くならない。政治をぶっこわす父・純一郎氏の息子に期待したいです》という声も寄せられた。しかし過去のㇲキャンダラスな行動からこの人物が「誠実」とはどこを見て言っているのだろうか、トランプ信奉者を馬鹿には出来ないという思いが強い。実行力が有りそうというのも目立つが、発信力と実行力は別物。親父を真ねて発信に切れ味はあるが、2期の環境大臣でも大きな業績は無いどころか、石炭火力発電からの脱却遅延を突かれ、COP25 で国際環境NGOから「化石賞」を充てられている。裏金問題等自民党改革についても目立った発言が無く期待薄である。

続いて、第2位に選ばれたのは高市早苗経済安全保障担当相(63)だ。何故この人物が2位なのか、女性総理に対する期待感と推測されるが、器で無い者に大きな物を求めても所詮無理な話、突出した右寄り発言や靖国参拝を欠かさぬ事で、安倍や日本会議の応援を得て今の地位を得ているだけの人物。安倍の後継者の声が強いが、日本は一日も早く安倍の影から脱却する事が求められており、総理候補など論外である。

そして、第1位に選ばれたのは石破茂議員(67)、当選回数12回、防衛大臣や農林水産大臣、幹事長といった重職を務めてきた。’21年の第49回衆議院議員総選挙では、全国最多の得票率・84.1%を獲得したこともある。世間からの人気は高いようで、人柄について《誠実かつまじめ》《声を荒げることなく温厚なイメージで、かといって頼りない感じがしないから一度やってみてほしい》と評価する声が。また石破議員は自民党幹事長時代の’13年5月、当時自由民主党政調会長だった高市大臣が「村山談話に違和感を覚える」と発言したことについて「誤解を招く発言は厳に慎んでもらいたい」と苦言、靖国参拝にも否定的な事もあって保守派の反感が強い。麻生内閣退陣を直言し、また安倍内閣を批判し続けた為、孤立感を深めている。党内の人間への批判も辞さない姿勢から、《どの派閥にも影響を受けない。野党連合と共闘してもよい》《あれだけ自民党を批判しているから改革を実行してくれるのではと思う》《自民党を根本から変えてくれそうだから》と期待を寄せる声も上がっている。さらに《党内では人気はないが、国民には人気があるので国民の意見を聞いてくれそう》《党内の支持や評価は低いと聞いているが、普段のコメントも好意的に受け止められ、国民全体の支持も高く、総理になってもらいたい政治家と思うから》《国民にとって一番まともな発言をしているから》との声が上がり、国民に寄り添った視点を持っていることが支持されている。次期総理としては石破氏か林・現官房長官に期待したい。


アメリカ大統領選の行方

2024年08月08日 | 政治・経済

アメリカ大統領選の行方

*カマラ・ハリスの登場とトランプの自爆

11月5日、米国と世界の行方を左右する米大統領選が実施される。銃撃事件が幸いし、選挙情勢は大きく(トランプ優位)に傾きかけ、(ほぼトラ)(確トラ)とまで囁かれ始めたが、バイデンの引退、カマラ・ハリスの登場で勝負は一転、土俵中央に引き戻され、どちらかと言えば、トランプの勢いに急ブレーキが掛り始めた。バイデンを嫌っていた若者や非白人の有権者が一斉に息を吹き返した。(嫌バイデン・嫌トランプ)の閉塞感から解放された(ダブルヘイタ―)と言われた有権者達、とりわけ若者・女性や黒人・ヒスパニックは、こぞって選挙に目覚め、投票率は大幅に上昇するものと予想され、ハリス有利な展開となった。

トランプに付き纏う(嘘つき・ポピュリスト)のレッテルに加えて、今迄バイデンに対して(老人だ)とこき下ろしていたレッテルが、20歳も年下のエネルギッシュな相手の出現で、ブーメランとなって自分に跳ね返って来てしまった。これを反映し、好感度調査では無党派層中心に、ハリスが勢いを増し、トランプを大きく引き離しつつある。ハリス陣営は僅か一週間で308億円の選挙資金を集め、その内66%が政治献金は始めてという新しい層からであった。更には、選挙ボランテイアの申し入れが後を断たないとも報じられている。トランプはこりもせず、集会でハリスを口汚く罵り、こき下ろしているが、バイデンには通じても女性のハリスには完全な空振り、空回りで、逆にトランプ持ち前の(下品・粗野・女性蔑視・民族差別)を一層際立たせ、トランプの好感度を下げる結果に繋がっている。更に副大統領候補のヴァンスの存在がトランプの足を引っ張っている。元々コチコチの反トランプで、(暴行魔)、(頭の足りない大バカ者)とまでこき下ろしていたヴァンスであるが、共和党上院議員のポストを得る為、熱烈なトランプ支持者に豹変し、トランプのご機嫌を取る為、Maga(=Make America Great Again)を連呼、その発言はトランプを真似て過激極まりない。暴走車トランプに暴走エンジンを取り付けたような感じで、流石に共和党員の中にさえ批判的な声が出始めている。ヴァンスが自分の妻と同じヒンドゥのインド系移民であるカマラ・ハリスを「子どもがいない惨めな変わり者女」と呼んだ侮蔑の映像がSNSで拡散し、各メディアも大きく報道しており、トランプが火消しに躍起となっているが、共和党支持者の女性からも女性蔑視との非難の声が上がり始めている。過去の自分に対する非難の発言に気付いていないトランプは彼を評価しているが、次期大統領候補として疑問視する声が根強く、トランプ自爆の暴走エンジンに成り兼ねない。

 

ただしかし、2016年の選挙で総得票数でトランプを280万票も上回っていたヒラリー・クリントンが大統領選でトランプに負けた例もある様に、有権者が投じた総得票数で勝者が決るのではない。アメリカの大統領選挙では(首都ワシントン及び各州)に対し人口比等に応じて選挙人が割り当てられて居り(全米総合計で538人)、殆どの州(註)では、州得票数の勝者がその州の選挙人を総取りし、其の選挙人の過半数(270人以上)を取った候補が大統領選に勝利するシステムをとっている。(註;得票率で選挙人を配分する州は、ネブラスカ州とメーン州の2州のみ)。

大きな票田は、カリフォルニア州(55人)、テキサス州(38人)、フロリダ州(29人)、ニューヨーク州(29人)の後に、イリノイ州(20人)、ペンシルベニア州(20人)が続いているが、共和党を支持する傾向がある州は赤い州(red state)、民主党を支持する傾向がある州は青い州(blue state)と呼ばれて居る。 カリフォルニア州、ニューヨーク州は青い州で岩盤であるのに対し、テキサス州は赤い州となっているが、最近テキサスでは 民主党支持が伸びて居りトランプが此の州を失えば、勝利の可能性は、ほぼゼロとなる。

大統領選で最も注目されるのは、民主・共和両党の間で支持が揺れる州、いわゆる「スイングステート」と呼ばれる激戦州で、代表的なのは、選挙人29人を抱えるフロリダ州である。カトリック系の黒人やヒスパニックの人口が増えて居り、世論調査ではトランプの支持率が伸びているものの、ハリス登場で大きくスイングする可能性が出て来た。

又2016年の大統領選でトランプの勝利を決定づけた「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の州も目が離せない。ラストベルトとは、米国中西部から北東部に位置する、鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退した工業地帯の呼称で、ペンシルベニア州(19)、オハイオ州(18)、ミシガン州(15)、ウィスコンシン州(10)などが含まれるが、2016年の大統領選で、トランプはこの4州で勝利したものの、2018年の中間選挙での上院選で、共和党は民主党に敗北して居り、又直近の世論調査では、4州のうちトランプが優勢なのはオハイオ州(州都;シンシナテイー)のみ、しかも0.6ポイントの僅差である。激戦州でも都市部は民主党、農村部・郊外は共和党支持の傾向が強い為、トランプは郊外在住の女性、若年層、黒人、ヒスパニック系の支持を期待しているが、トランプの口汚い人種差別・性差別攻撃はトランプのコアの支持層(低学歴・白人)には受けても、支持を期待する層の離反に繋がりかねないし、共和党が発信しようとした「団結の訴え」にも反する為、ジレンマに立たされている。トランプは神妙に団結を訴える演説を始めても最初だけで、途中から軽薄な本性が現れ、全くそれに反する人種差別、性差別等の分断を煽る方向に走ってしまうのである。

 

更に民主党には、(ランニング・メイト=伴走者)とも呼ばれる副大統領候補には魅力的な人材が揃って居り、ハリス支持を加速させる事が期待される。ラストベルト・ペンシルベニア州の知事で、かつて州の司法長官も務めたジョシュ・シャピーロ氏(51)や、アリゾナ州選出の上院議員で、元宇宙飛行士のマーク・ケリー氏(60)などが有力候補だが、ペンシルベニア州(19)とアリゾナ州(11)は、共に激戦州で、2人は過去に選挙でトランプ氏が支持した候補に勝った経験がある。また、バイブルベルトのノースカロライナ州(16)のクーパー知事、ケンタッキー州(8)のベシア知事など合わせて7人の名前が挙がっている。

副大統領候補は最終的に下馬評に無かった異色の(ミネソタ州知事・ワルツ氏)に決まった。所謂地方の叩ぎ上げで、「裏庭のバーベキュー・パーテイーに居る様な気さくな人物」と評されて居り、(検事でシャープ)なハリスと(泥臭い)知事の絶妙な組み合わせと民主党応援者を活気づかせている。

 

トランプはバイデンを「老人で弱弱しい」と声高に攻め立て点数を稼いでいたが、全て水泡に帰してしまい、一から戦略の立て直しの必要に迫られているが、今のところハリスの悪口を言うことぐらいしか攻撃手段を見出せていない。更に、この10年民主党から離反した黒人層を、人種が同じハリスが呼び戻す可能性が極めて大きいし、トランプが在任中3人もの判事を送り込み、保守派で固めた連邦最高裁が女性の「中絶を選ぶ権利」を否定した為、キリスト教・福音派以外の女性から総スカンを食らって居り、この影響も大きい。福音派の連中もトランプの離婚履歴、強姦など不道徳行為に加え、トランプ支持のコアである低学歴白人層が求める下品で口汚い悪口は聖書の教えに反すると離反の動きも出始めている。自身も被害者となった銃規制も争点になるが、どう対応するのか難しい判断が求められる。

 

**南北戦争の危険

色々な条件を検討するとトランプが当選する可能性は極めて低いし、アメリカや世界の自由主義陣営にとって混乱回避という点で極めて好ましい結果と言える。

しかし前回大統領選で敗北を認めず「選挙は盗まれた」として、バイデン勝利を副大統領として認めないようペンス副大統領に求めたが、選挙結果の認定を阻止する権限は憲法上認められていないとして拒否したのに対し、トランプは演説等でペンスを激しく非難し、これに呼応した支持者が「ペンスを吊るせ」と処刑を呼びかける等、議会乱入事件に繋がった。ペンスは州兵を動員,暴徒鎮圧を図った。

今回の選挙はトランプにとって、何が何でも勝利し自らが抱える裁判を無効にすることも大きな目的であり、勝利の見込みが無いと判断すれば、どの様な手段をとるか充分注視・監視する必要がある。特にハリスの身辺警護も極めて重要である。

トランプは自分が負けるのは選挙が盗まれた時(不正があった時)だけであると言い続けて居り、3月自分が今回の選挙で負けたら、米国の自動車業界と国は血の海になると政治的暴力を扇動するような発言をしている。いまだに、前回の選挙は不正によって盗まれたとしてバイデン勝利の選挙結果を認めておらず、2021年1月の連邦議会議事堂襲撃事件は、無数の人がその映像を見ているにもかかわらず、事件が本当にあったかさえ否定してしまう。「覚えておいたほうがいい」と、トランプは言った。「皆さんが見ていることは......実際に起きていることとは違うのだ」と、そして恐ろしい事にそれを信じ込み狂喜する低学歴の白人が多数いる事である。

元々南北戦争以来、アメリカの政治と社会には分断の芽が大きくなりつつあった。1964年人種差別を禁じる公民権法が成立したその時から、社会の分断を強めて来たのである。人種差別から解放された黒人の人口増、移民の増加がそれに拍車をかけた。

1950年代のアメリカは、人口の89%を白人が占めた。アメリカ独立戦争に関わった(建国の父)達と同じWASP(白人・アングロサクソン・プロテスタント)が、権力や影響力のあるポジションを牛耳っていた。だが今、白人の割合は59%まで低下し、2040年には50%を割り込む勢いである。400年のアメリカの暦史で初めて、アメリカは白人の国であると言えなくなりつつある。どんな集団にとっても、長年享受してきた権力を手放すのは容易な事ではない。白人至上主義者たちが、「おまえらに取って代わられてなるものか!」と叫びながら星条旗を肩に行進しているのは、その典型的な例である。主流派としての優位を失うに従い、白人は怒りを募らせ、変化に反発するようになった。その集大成がトランプだ。なにしろトランプは、エリートや政治機構や民主主義を敵と呼び、民意を代表するのは自分だけだと主張してアメリカ底辺の低学歴白人層の喝采を取り付けアメリカの分断を煽り先鋭化させたのである。これにマスコミも加わった。1996年に開局したFOXニュースは保守色が強く、白人中心主義的で、場合によっては白人至上主義的な切り口でニュースを報じてきた。2015年以降は、トランプ支持を前面に押し出した。白人が支配していた時代から多様な時代へと変貌を遂げたが、それに伴い過激な言論が増えて、一部のトランプ支持者は自分にとって心地よい政治的・文化的報道だけを信じるようになった。

民主党はリベラル・都市部・高学歴・民族的多様性、共和党は保守的・農村部・低学歴・白人などの特徴を持つ政党に変化し、両党共に穏健派は姿を消し、両党のイデオロギー的な重複はなくなった。両極化によって政治は機能不全に陥いる可能性が強くなった。

19世紀中頃、奴隷制存続を主張するミシシッピー州やフロリダ州など南部11州が合衆国を脱退し(アメリカ連合国)を結成し合衆国にとどまった北部23州と戦争となった。これが4年間続いた南北戦争である。

大統領選に全てを択すトランプにとって敗北は破滅を意味しかねない。MagaではなくMtga(Make trump great again)の為には支持者を扇動し何をやりだすか、危険が付き纏う。


緑の古狸・小池都知事

2024年07月08日 | 政治・経済

緑の古狸・小池都知事

東京都知事選は、残念ながら投票締め切りの午後8時ちょうどに、緑の古狸の当選確実が報じられた。メデイアは古狸圧勝と、囃し立てるが2位石丸、3位蓮舫の合計得票数293万票は古狸の得票数291万票とほぼ同数、都民が古狸に100%信任を与えたわけではない事を示している。

しかし、古い政治打破に期待していた蓮舫は、敗れるべくして敗れた、予想通りであった。蓮舫が当初から東京都政をリセットし、若者重視を強く厳しい口調で訴え続けているのを聞いた時、これは危ないと感じたのである。主張自体は間違いではないが、東京都民も当然のことながら老齢化が進んで居り、道一つ隔てた埼玉県側から見ていると、東京都の老人は豊富な財源を基に、他県に比べて非常に手厚い保護を受けて居り、リセットと称して、強い口調で此処に切り込めば当然老人の反発を買う。案の定、高齢者の票は古狸に止どまった。しかも期待した若者や無党派層の票は蓮舫に流れず、降って湧いた様な石丸に持って行かれてしまった。石丸の立候補は他の野心を勝ちとる為の手段の一つ、売名行為であることは明らかで,端から当選を意識したものでは無い。従って主義・主張も殆ど無く得意とするSNSを使ったメデイア作戦に若者がまんまと乗せられたに過ぎない。過去にタレントの青島幸男が都知事に「乗りと勢いだけで当選」言うのと同じ構図である。この様などことなく胡散臭さ漂う人物が突然現れたのは、蓮舫やその勝利を期待する人間にとって災難だったといえるだろう。

もう一つは古狸の老獪極まりない戦術に立憲民主党全体が振り回されたと言う事だろう。古狸の取った戦術は一つは徹底的な逃げの一手、反対の多い明治神宮外苑・再開発や都庁・プロジェクションマッピング其の他の都政に関しては一切討論せず、失政の追及姿勢を空振りにさせたことである。

もう一つはステルス戦略である。「政治と金」を巡る犯罪集団自民党や公明党とは表立った接触は避けながら、後援会等の応援を確実に獲得するという戦略である。立憲民主党が『政治とカネ』の問題を都民に審判していただく」(安住国対委員長)としていた政治資金問題の争点化にも失敗した。一方蓮舫サイドは共産党の支持を得る政党主導の戦略をとった事だろう。特にあまり評判の良くない共産党前党主・志位氏が最後に応援に駆け付けたのが足を引っ張った可能性が強い。

現職を打ち破るためには、何をどうやって達成するのかという目標と方法を訴える必要があるが、理想を掲げても手段や方法が有権者に響かなかったという面も強い。テレビで橋下氏や泉氏が「現職で2期8年の方にチャレンジする以上は、早い段階でメッセージ、構図をつくらないとしんどかった。蓮舫さんは出馬表明したときに、イッキに色んなことをやっておくべきだったと思いますね」と、結果的に都知事としての自身の目指す政策に先んじて、政権批判に走ったことに敗因だと述べている。

蓮舫氏は日本の政界にとって貴重な人材、日本の政治浄化に今後も頑張ってほしい。