元キヤノン社長の御手洗冨士夫氏と元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏の対談をベースに編集した本です。
お二人ともそれぞれ日本を代表する大企業のトップの方らしく、まさに実業を営まれた軌跡を思い入れを込めて語っています。
いくつか各論で私が興味を抱いた点を、以下にご紹介します。
まずは、よく言われる「部分最適・全体最適」についての具体的処方箋です。
御手洗氏の答えは「連結評価制度」でした。
(p39より引用) 私は、事業部や子会社がバラバラに動くのではなく、キヤノンというグループ全体が一つの会社として、一貫した思想を持ち、有機的に動く、すなわち効率を上げる仕組みを作ろうと考えました。それには、「部分最適」ではなく「全体最適」を目指さなくてはなりません。
そこで、私は利益優先主義を唱えると同時に、まず連結評価制度を導入しました。
「財務上の決算」ではグループ連結になっていても、実際のガバナンスはバラバラという例は珍しくはありません。
次に、最近流行のコンプライアンスに関する取り組みです。
キヤノンでは、コンプライアンス・カードという携帯用のカードの所持を義務づけているそうです。そこには「コンプライアンステスト」という社員の行動に対する「6つの問いかけ」が書かれています。
(p104より引用) 「法律・ルールに触れませんか?」「うしろめたさを感じませんか?」「家族や大切な人を悲しませることになりませんか?」「報道されても胸をはっていられますか?」「社会に迷惑をかけませんか?」「キヤノンブランドを傷つけませんか?」
倫理基準をはっきりさせることで、社員は安心して働けるようになります。
こういうストレートな問いかけは、常に身だしなみをチェックする「鏡」になります。
シンプルで分かりやすいやり方の良い例だと思います。
最後に、ちょっと「?」と思った点です。
御手洗氏がCANONの「企業としての使命」について語った部分です。
(p38より引用) 企業の使命というものは、キヤノンの場合、次の四つだと私は考えています。
一つは社員の生活の安定と向上、二つ目は投資家への利益の還元、三つ目は社会貢献、そして最後は先行投資するに十分な資金の確保。これができなければ、企業として存在する価値はありません。
企業の使命に「顧客」というフレーズが出てこないのです。
御手洗氏は、会社について、こうも言っています。
(p178より引用) 会社は、そもそも社会的な存在です。社会と関わっていく中で利益を創出し、従業員の生活の安定や社会貢献に役立てていくという役割を担っているのです。したがって、社会との関わり合いなくして存在しないものです。
「社会-会社-従業員」というのが基本的な図式のようです。
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