10年以上前に、「続編」は読んでいます。今回は、思い立って1作目を手に取ってみました。
こういった「土地にまつわる蘊蓄もの」は気楽に読めて楽しめますね。
登場する地名はさすがに全部旧知のものばかりですが、その歴史的背景は初めて耳にするものが多く、それぞれに面白いものでした。
考えてみれば当たり前なのですが、関東地方の土地もかなり古くからの歴史があるんですね。
今、私が住んでいる東京の多摩地方でいっても、「国分寺」は、奈良時代に聖武天皇の詔により日本各地に建立された「武蔵国国分寺」の所在地ですし、「聖蹟桜ヶ丘」は「小野小町」との関わりがあるそうです。
(p274より引用) またこの地には、小野小町が父を訪ねてみちのくへ行く途中、ここに立ち寄ったことを記した「小野小町歌碑」がある。碑面には「武蔵野のむかひのおかの草なれば根を尋ねてもあはれとぞ思ふ」という「新勅撰和歌集」(後堀河天皇の命で嘉禎元年〈一二三五〉完成) の歌が刻まれている。小野小町は平安時代前期の歌人、六歌仙、三十六歌仙の一人として有名である。つまり、この地は小野小町が生きた時代から、交通の要所だったことが考えられる。
ちなみに、本書では、それぞれの項で取り上げた「地名の由来」についても触れられています。
よく、“以前の地形が地名に残っている”と言われますが、それらしいものの中にもそうでもないケースもそこそこあるようです。
たとえば、「渋谷」。
明らかに実際の渋谷の地形をみると多数の坂に囲まれた「谷底」です。
ただ、「渋谷」の地名の源ですが、本書によると、「水サビのある低湿地」だからという説はむしろ傍流で、「塩谷の里(塩谷)」が「渋谷」に転じたとの説や相模国の渋谷重家一族が移り住んだためといった説の方が有力なのだそうです。
もうひとつ、「千駄ヶ谷」。
こちらは「1000駄の萱を刈り取っていた所」というところから「千駄之萱村」と言われたのが始まりだったとのこと。
今の「表記」に定着する過程では「地形」が意識されたことはあったのでしょうが、ストレートな連関があるか否かは区々のようですね。
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