著者は、本書で現在のアメリカを、少なくとも経済的な観点からは「超格差社会」だと論じています。
しかしながら、そういう厳しい社会においても多くの人々は、何故かその他の国より楽天的です。
(p241より引用) 大半の人には、「諦めたら終わり、諦めないで頑張れば、必ずいいことがある」という信念がある。それがアメリカのバイタリティに他ならないし、アメリカン・ドリームに象徴されるオプティミズムでもある。
「人生はこうあるべき」とか、典型的なキャリア・コースがアメリカには存在しないという事実も、人生の選択肢を広げる。仕事に退屈したり失望したりしたら、別の仕事を探せばいい。
このオプティミズムは、移民の国として始まり、皆が同じく機会を求めて努力した経験によるもののようです。個人の努力に対してフェアな感覚があるのです。
(p245より引用) アメリカでは、階層を駆け上がる上方移動の可能性が、他国に比較して高い。その最大の原因は、スキルやノウハウといった個人の能力に対し、社会が高い価値を認めているからだ。
そして、本書で著者が指摘している重要な点は、そのオプティミズムをリアルなビジネスに結びつける仕掛けをアメリカが有しているという点です。
それは「クリエイティビティを事業化する仕掛け」です。
(p261より引用) クリエイティビティを事業化して活用するためには、それを尊重する風土や教育から始まって、クリエイティビティを具体化する苗床、チーム・アプローチのフレキシブルなマネジメントで実用化の目途をつけるプロセス、コマンド・システムの周辺でフリーゾーンを維持・マネジメントする仕組み、量産・量販に移行するプロセス、パテントやブランドによる知的財産の法的・実務的保護まで、各段階に応じた多様で広範囲のマネジメント・ノウハウと、社会的な仕組みがいる。
この仕掛けが機能していることは、オプティミズムを活性化するスパイラルとなり、アメリカにおいて両者は共生関係を築いているようです。
最後に、アメリカと日本との比較から、著者が指摘する「日本経済活力低下の原因」についてのくだりです。
(p326より引用) 大銀行の集中と政策金融機関の実質的な廃止が、中小企業へに融資削減や融資コストの上昇につながることは、十分に予測できたはずだった。大きな金融機関にとっては、融資額の小さい中小企業金融は手間がかかって効率が悪く、さらに中小企業の経営環境を実感することも難しいから、定性的な審査が困難だからだ。そしてそれが現実となり、日本の経済力を支えていた中小企業金融は極度に圧迫されて、日本経済の活力を低下させてきた。
こういうコメントに触れると、日本とアメリカとの決定的な相違は、ベンチャー企業を育てる意思を社会として持っているか否か、特にその具体的な担い手である金融機関にそういう企業育成スピリットがある否かという点だと改めて思います。
![]() |
超・格差社会アメリカの真実 (文春文庫) 価格:¥ 720(税込) 発売日:2009-02 |
↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
TREviewブログランキング