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絶対的価値 (美徳の経営(野中郁次郎・紺野登)

2008-11-26 20:59:37 | 本と雑誌

Aristoteles  「美徳の経営」という目新しいタイトルだけあって、多くの経営書・ビジネス書とは一線を画す思索的テイストの本です。

 本書において、「美徳」「絶対的価値」のメルクマールと位置づけられています。
 著者は、今後の企業は「絶対的価値」を提供する創造的経営を推し進めていくべきだ、と説いています。

 
(p5より引用) 競争に明け暮れる相対的価値の経営から、絶対的価値や独創性に基づく創造的経営への変化は、とくに日本企業にとって必須である。単にモノづくりに強いだけでない、コモディティ(標準品)化競争を超えた高付加価値の製品やサービスの提供、あるいは、経済原理や技術だけによらない人間的な価値や環境問題などに目を向けた社会的な事業、製品・サービスの提供は、その重要な成分である。

 
 また、よく言われる「イノベーション」についても「絶対的価値」創出を求めます。

 
(p9より引用) イノベーションとは、製品の観点からいえば相対的な価値比較優位ではなく、独自のコンセプトを持ち、並ぶところのない魅力をユーザーに伝えていることである。また事業という面からいえば、モノが売れた、売れないというだけでなく、持続的な価値創出の仕組みを呈示し構築していることである。何よりも、本来イノベーションの源には、フォーマルな組織とは別次元の、個人や集団の思い、ビジョンが存在する。・・・強力なビジョンが製品やビジネスの仕組みになっているのがイノベーションである。

 
 ここでの「強力なビジョン」も、「美徳」という価値観が背景にあることを想定しています。

 ビジネスの世界における「美徳」は、一企業の個別的価値観ではありません。
 「共通善」として、社会的な関係性のなかで醸成されるものです。

 
(p47より引用) ビジネスにおける価値の多くは、企業体の閉鎖的なメカニズムからは生まれてこない。それは組織、社会や地域共同体、組織内の成員、さらにはかれらの背後の家族などの人々の知識(社会関係資本、ソーシャルキャピタル)をもとに生み出されているのである。

 
 「美徳」という単語は、直感的には「ビジネス」に結びつきにくい語感をもっています。
 この点について、著者は、「美徳」に重きをおくような社会的意識の高い企業は、長期的な経営というリアルな世界においても発展してゆくものだと考えています。

 
(p51より引用) 社会的意識の高い企業であればあるほど、必然的に将来の世界や社会、市場や顧客の変化を展望して活動することになる。それは「社会知」の獲得や、顧客やパートナーとの共生的な知識創造につながっていく。こうした長期的な市場観やシナリオに基づいた顧客やパートナーとの関係性は、資産化され、同時にその企業に対する長期的な投資リスクを低減させるであろう。

 
 本書のあとがきにおいて、著者は以下のように語っています。

 
(p234より引用) 21世紀になっても、とくに大企業において、そして政治の世界でも、倫理的・理念的な面で目を疑うような不祥事、不正が行われている。・・・
 このように、もはやわれわれには美徳は縁遠い概念なのかもしれないが、果たしてそうだろうか。こういう時代にこそ、いかにうまく生きるテクニックを子どもたちに教えるのもひとつだが、何が美しいか、善いか、といった「判断力」や智慧について教えることも重要ではないだろうか。

 
 絶対的価値の認識とその伝承は、ビジネスの世界に限らず、今の時代とても大事なことだと思います。
 
 

美徳の経営 美徳の経営
価格:¥ 1,995(税込)
発売日:2007-05

 
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コメント (1)
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