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「昔話」と「民話」 (桃太郎はニートだった!(石井 正己))

2008-11-04 22:50:14 | 本と雑誌

Yanagida  「一寸法師」をはじめとして多くの「昔話」は、明治から大正期に活躍した児童文学者巌谷小波によって、子供向けに書き改められました。

 また、いくつかの話は、小学校の教科書にも載せられ定番化してゆきました。
 オリジナルの話の角が取れ、ストーリー自体も、ある種当時の社会状況を反映した教育的?内容に変質していったのです。

 絵本の流行も、内容の希釈化・穏健化にドライブをかけました。

 そういう動きを踏まえた著者の辛辣なコメントです。

 
(ア) (p142より引用) 昔話の本質は、やはり「悪いものは悪い」ときっぱりいい切るところにあります。・・・近代の昔話絵本はそうした論理をゆるがせにしてきたところがあります。そのようにした前提には、近代社会の作り上げた偽善性がはびこっているはずです。

 
 著者は、「昔話」と「民話」というそれぞれの言葉に込められた思想の違いを、柳田国男と木下順二の考え方を例に解説しています。

 民俗学的立場からの柳田国男氏の考えはこうです。

 
(p179より引用) 彼(柳田)にとって昔話は、あくまで民俗学の対象であり、日本人の歴史や信仰を知るための重要な資料でした。ところが、「民話」はそうではありません。

 
 他方、「夕鶴」等の代表作をもつ劇作家木下順二氏はこう考えていました。

 
(p180より引用) 木下は、民話から「民話劇」を創作しましたし、民話は現代でも生まれるものだと考えていました。そうした考えは「昔話」から日本人の歴史や信仰を分析しようとした柳田の意図とは、まったく相容れないものだったのです。

 
 「日本人のもとのかたちのもの」を究めるという柳田氏の学問的目的からすると、「再話」「再創造」による昔話の民話への変容は、その阻害行為だととらえていたようです。
 
 

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