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第三法則:無常 (兵法三十六計の戦略思考(K・クリッペンドルフ)

2008-11-19 22:54:21 | 本と雑誌

 本書で示された道教的思考の第三法則は、「無常」です。
 すなわち、「絶え間ない変化」を所与の前提とした考え方です。

 変化への対応といっても、多くの人は、自分自身に染み付いた定型的な「メンタルモデル」に基づき行動しがちです。

 
(p160より引用) 重要なのは、同じメンタル・モデル(精神的枠組み)を何度も繰り返し用いていると、われわれの行動は硬直化し、相手が予測しやすいものとなり、われわれの競争力を弱めてしまうということである。
・・・変化に対して従来とは異なる概念を取り入れれば、われわれ自身も独創的な発想をもち、競合にとってより手強い相手となって、より巧みに競争力を得ることができる。

 
 著者は、「メンタル・モデル」にも西洋と東洋とで根本的な差異があると指摘しています。

 まずは、西洋的視点です。

 
(p161より引用) 西洋社会の変化に対するメンタル・モデルの大きな仮定として最初に挙げられるのは、「過去が現在を決める」ということである。西洋人は、変化は因果関係にもとづいて生じると考える。つまり、過去の事象が原因となって、現在の変化を生み出すと考えるのである。・・・
 西洋人の変化に対するメンタル・モデルの二つ目の大きな仮定は、「変化はある静止点と他の静止点を結びつける間で生じる」ということである。この仮定が意味するところは、われわれはこの世界を「静と動」や「無変化と変化」といった、二つのはっきりと異なる状態に分けて捉えているということである。そして、ある静止点と他の静止点の間で生じるものを「変化」と呼んでいるのである。

 
 他方、道教に代表される東洋的視点の特徴は、以下のとおりです。

 
(p162より引用) 道教では、人生を静的瞬間と動的瞬間から成り立っていると捉えるのではなく、あらゆる瞬間は絶えず変化していると考える。・・・
 道教の信者は、われわれが見るべきは過去ではなく、現在、すなわち、今、目の前で起きていることであると信じており、西洋的思想とはまったく異なる視点で現在の状況を理解しようとする。これが意味しているのは、われわれは過去の事例から学ぶべきではないということではなく、過去の事例から得られる教訓によって、必ずしも将来が予測できるわけではないということである。

 
 東洋的視点では、「現在」を思考のスタートにしています。
 その点、過去から演繹的に考えて「今」を把握する西洋的な思考方法よりも、先を見通す姿勢が強いのです。

 
(p165より引用) 道教的思想では、どのような敗北や勝利も永久に続くものではない。したがって、「明日の勝利のために今日負ける」という考え方が、より受け入れやすいものとなる。・・・大きな成功を収めている企業は、当初は誤った意思決定を下したように相手に思わせながら、実際のところは、競合が目の前のことに必死になっているそのときに、彼ら自身はすでに次のゲームを行っていたということがわかる。

 
 最後に、著者が本書で「無常」の考え方にもとづく戦術として整理している9種を、覚えに記しておきます。
 

  • 戦術19:隔岸観火 何も行動を起こさないことが、最善の選択肢であることもある
  • 戦術20:李代桃僵 ある戦いではあえて負け、別の戦いでより大きな勝利を収める
  • 戦術21:空城計 あえて自分に関する情報(戦略・意図・能力)を見せて、相手の行動に影響を与える
  • 戦術22:以逸待労 競争領域の変化を予測し、新しい競争領域に先回りして先行優位を築く
  • 戦術23:反客為主 最初はあえて弱い立場に立ち、徐々に力を蓄積して、最終的には支配力を得る
  • 戦術24:仮道伐虢 提携関係は一時的なものにすぎないと考えて、あくまで利己的な目的を追求する
  • 戦術25:金蝉脱殻 おとりになるような見せかけの行動をとり、それとは異なる場所で真の行動を起こす
  • 戦術26:苦肉計 最初はあえて自らを弱い立場に置き、相手を油断させてから真の攻撃を仕掛ける
  • 戦術27:借屍還魂 古いアイデアを再び取り入れることで差別化を図り、競争優位を築く

 
 

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価格:¥ 2,520(税込)
発売日:2008-08-01

 
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