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ほんとうの環境問題 (池田 清彦・養老 孟司)

2008-07-12 09:27:30 | 本と雑誌

 以前にも環境問題の本としては、武田邦彦氏の「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」やアル・ゴアの「不都合な真実 ECO入門編」等を読んでいます。
 この問題はいろいろと多面的な見方をしないと判断を誤るものだと思っています。ちなみに、本書は、武田氏の主張に近いものです。

 二人の主張は、まずは、現在言われている環境対策、具体的にはリサイクルやCO2削減とかですが、これらについて実証的な論拠を明らかにすべきということから始まります。

 養老氏は、戦時中も意識してたところでモノと人間の関係からこう主張します。

 
(p36より引用) なぜ僕がモノの話をするのか。それが倫理でも道徳でもないからですよ。ほんとうの大枠は何なのかを考え、ひとつひとつ根拠を明示していかないと、意味がない話ばかりになってしまうというわけです。

 
 また、池田氏はリサイクルを例にこう語ります。

 
(p53より引用) リサイクルは良いことだとされているけれども、リサイクルするためにも金がかかるし、エネルギーも要る。だから、リサイクルすることによってどれぐらいの金とエネルギーがかかるかを考えないで、リサイクルすること自体を目的にすると、倒錯的な問題が生じてしまう。

 
 よく言われるところの「目的」と「手段」の倒錯、「手段の目的化」、また「木を見て森を見ず」「全体最適or部分最適」と同根の指摘です。

 池田氏は、京都議定書を守るために日本は年間1兆円の予算を支出しているといいます。またそれだけの税金を費やして日本が京都議定書を遵守しても、その貢献は、今世紀末までに気温の上昇を0.004℃抑えるのに貢献するだけとの数字も示しています。

 
(p126より引用) 結局、これも、注ぎ込む金に対して、得られるメリットがどのくらいあるか、ということを計算しなければダメなのである。それを計算しないで、CO2の削減はただただ善だという「メリット」を謳ったところで、何にもならない。

 
 さらに日本のエネルギー戦略に話は広がります。

 
(p82より引用) そんななか日本だけが、のほほんとしていて、環境のためには石油の使用をなんとか減らしてCO2削減のための努力をしなければならない、というようなことばかりを言っている。肝心の、石油に代わるエネルギーをどうするかという国家戦略はまったくないのである。

 
 重点思考に基づく他者(他国)への働きかけも重要ですが、それは少なからず他動的・他責の問題です。
 そういうリーダーシップを発揮しつつ、日本自身として自律的・自責としてできることにも「真の現実問題」として非常なパワーをかけて取り組まなくてはなりません。
 
 

ほんとうの環境問題 ほんとうの環境問題
価格:¥ 1,050(税込)
発売日:2008-03

 
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コメント (1)
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