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学習する組織 (失敗の本質-日本軍の組織論的研究 (戸部良一・野中郁次郎他)

2008-07-10 09:20:47 | 本と雑誌

World_war_2  組織論からの日本軍の失敗の本質の分析です。

 
(p358より引用) 組織の環境適応理論によれば、ダイナミックな環境に有効に適応している組織は、組織内の機能をより文化させると同時に、より強力な統合を達成しなければならない。つまり、「分化(differentiation)」と「統合(integration)」という層反する関係にある状態を同時に極大化している組織が、環境適応にすぐれているということである。

 
 そういう観点からみると、日本軍は、当初から一貫して陸軍・海軍と「分化」しており、本質的な「統合の実態」はありませんでした。(大本営も両軍の調整機能は持ち得ませんでした)
 そもそも戦略ビジョンの異なる陸軍(白兵銃剣主義)海軍(大鑑巨砲主義)には、軍事合理性や技術適応性の面から「統合」の必要性が生れなかったのでしょう。

 「統合」の思想はなかったとはいえ、日本軍が組織学習を全くしなかったかといえばそうではありません。むしろ、陸軍・海軍各々においては、過去の成功体験の固定的学習が徹底的に行なわれました。

 
(p369より引用) 帝国陸海軍は戦略、資源、組織特性、成果の一貫性を通じて、それぞれの戦略原型を強化したという点では、徹底した組織学習を行なったといえるだろう。しかしながら、組織学習には、組織の行為と成果との間にギャップがあった場合には、既存の知識を疑い、新たな知識を獲得する側面があることを忘れてはならない。その場合の基本は、組織として既存の知識を捨てる学習棄却(unlearning)、つまり自己否定的学習ができるかどうかということである。
 そういう点では、帝国陸海軍は既存の知識を強化しすぎて、学習棄却に失敗したといえるだろう。

 
 自己否定を自己変革のプロセスに組み込むための工夫のひとつが、意識的な「不均衡の創造」です。

 
(p375より引用) 適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている。あるいはこの原則を、組織は進化するためには、それ自体をたえず不均衡状態にしておかなければならない、といってもよいだろう。

 
 組織論の立場で日本軍の失敗の本質を結論づけるとすると「日本軍は自己革新組織ではなかった」ことに帰着するようです。

 
(p388より引用) 組織は進化するためには、新しい情報を知識に組織化しなければならない。つまり、進化する組織は学習する組織でなければならないのである。組織は環境との相互作用を通じて、生存に必要な知識を選択淘汰し、それらを蓄積する。
 およそ日本軍には、失敗の蓄積・伝播を組織的に行なうリーダーシップもシステムも欠如していたというべきである。

 
 

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