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戦略の進化 (失敗の本質-日本軍の組織論的研究 (戸部良一・野中郁次郎他)

2008-07-05 10:40:28 | 本と雑誌

Kamikaze  日本軍の基本戦略は、陸軍は、ソ連を仮想敵国と想定した白兵主義、海軍は、米国を仮想敵国と想定した艦隊決戦主義でした。この戦略思想は、どんなに戦況が変動しようと不幸なことに戦争中一貫して不変でした。

 
(p293より引用) 戦略は進化すべきものである。進化のためには、さまざまな変異(バリエーション)が意識的に発生され、そのなかから有効な変異のみ生き残る形で淘汰が行なわれて、それが保持されるという進化のサイクルが機能していなければならない。

 
 日本軍は、日露戦争における成功体験にもとづく戦略・戦術を墨守し、それを変更するような「学習」は全く軽視されていました。

 
(p325より引用) およそ日本軍には、失敗の蓄積・伝播を組織的に行なうリーダーシップもシステムも欠如していたというべきである。・・・
 失敗した戦法、戦術、戦略を分析し、その改善策を探求し、それを組織の他の部分へも伝播していくということは驚くほど実行されなかった。これは物事を科学的、客観的に見るという基本姿勢が決定的に欠けていたことを意味する。

 
 そもそも「学習」の内実も変化を前提としたものではありませんでした。
 著者たちは、目的や目標自体を創造することよりも模範解答への近さが評価される「教育システム」も組織学習上の問題点として指摘しています。

(p332より引用) 学習理論の観点から見れば、日本軍の組織学習は、目標と問題構造を所与ないし一定としたうえで、最適解を選び出すという学習プロセス、つまり「シングル・ループ学習(single loop learning)」であった。しかし、本来学習とはその段階にとどまるものではない。必要に応じて、目標や問題の基本構造そのものをも再定義し変革するという、よりダイナミックなプロセスが存在する。

 
 自己の行動を絶えず変化する環境に照らして修正していくという自己革新・自己超越的なアクションの欠如です。

 日本軍について言えば、開戦当初のノモンハン事件での貴重な教訓が何の組織学習も呼び起こさなかったということです。

 
(p68より引用) ノモンハン事件は日本軍に近代戦の実態を余すところなく示したが、大兵力、大火力、大物量主義をとる敵に対して、日本軍はなすすべを知らず、敵情不明のまま用兵規模の測定を誤り、いたずらに後手に回って兵力逐次使用の誤りを繰り返した。情報機関の欠落と過度の精神主義により、敵を知らず、己を知らず、大敵を侮っていたのである。
 また統帥上も中央と現地の意思疎通が円滑を欠き、意見が対立すると、つねに積極策を主張する幕僚が向こう意気荒く慎重論を押し切り、上司もこれを許したことが失敗の大きな原因であった。

 

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