畑村氏と言えば、「失敗学」の提唱者として有名です。
畑村氏は、失敗の経験を活かすための準備作業として「知識化」というプロセスを重視しています。
(p157より引用) 新たにつくった問題解決のためのシナリオを本当の意味で使えるものするには、「知識化」という作業が必要になります。
知識化というのは、ある場面でしか使えない状態の知識を一般化することで普遍的知識とすることだと考えてください。
個別の失敗事例から独自の部分を削ぎ落とし、他の事例の際にも適用できるような「失敗原因のエッセンス」を抽出するのです。
この作業は、失敗の原因を「なぜ、なぜ・・・」により深堀りし詰めていくというよりは、複数の事象を一段階高い俯瞰的な視座からとらえて、そこに共通に存在する根本原因を可視化して掴み出すイメージです。
「失敗学」は、失敗を肯定的に意味づけます。
「失敗」を薦めてはいるものの、ただ、失敗をすれば次には成功するというものではありません。「失敗」を活かすための「作業」が必要なのです。
さて、本書では「変わる!」ということを提唱しているのですが、その「変わる」ための具体的な方法のうち、私の興味を惹いた考え方をひとつご紹介します。
畑村氏が「逆演算の思考」と名付けているものです。
(p172より引用) 逆演算の思考というのは、見えている結果からある現象を考え、見えていない原因を探っていく能力だというふうに考えられます。これは一見すると誰にでもできる簡単なことのように見えますが、原因と結果というふたつの要素で見ているうちは難しく、なかなか真実が見えてきません。
もともと原因には、「要因」と「からくり」(「特性」といってもいい)のふたつがあります。これはある要因をきっかけとして、それがからくり(特性)というブラックボックスの中を通ることで現象が起こっているという意味です。そうすると結果から要因を類推することができても、それを引き起こすからくりがどんなものかを理解しないことには、その人はその現象をすべて理解しているとはいえないことになるわけです。
これは、「原因」と「結果」の間には「プロセス」があるということ、そして、その「プロセス」を解明し理解しないと次なるアクションにはつながらないのだという(当たり前ですが)非常に大事な点を指摘しています。
「変わる!」思考術 成功する人と失敗する人、その差はここだ 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2004-08-26 |