軍隊組織を例示しての話は、個人的にはあまり好まないのですが、「実践的な情報共有」についての分かりやすいケースなので以下に紹介します。
(P191より引用) 海兵隊は、生きた情報の獲得とその共有を重視してきた。戦闘力を迅速に行使するには、戦闘に最適な場所と時間を見極めるための情報と、敵軍と自軍の戦力を比較するための知識・情報とを司令官に集めると同時に、各分隊または各兵士の間にも知識・情報の共有がなされる必要がある。それらが与えられることによって、各個人がその場で正しい決定を下すことができ、組織的に行動するときには、以心伝心でお互いの考えていることが分かり合える。・・・
海兵隊の一高級将校によれば、共体験は相手の思考プロセスまで暗黙的に分かるので、戦闘行動に不可欠のチームワークの知を涵養するという。
似たようなissueについては、以前私のBlogでも「分身を作るための情報伝達」というタイトルで思うところを記しました。そこでは「『インプット情報』のみを伝達したり共有化したりするだけでは不十分です。『処理ロジック』も共有化しなくてはなりません。」と指摘をしました。
上記のケースでは、「処理ロジック」を共有するための具体的プロセスのひとつが「共体験」ということになります。
もうひとつ、情報活用の際の留意点です。
個々のデータの具体性・客観性は非常に重要な要素ではありますが、それらの情報だけで「対象を創り上げてしまう」のは危険です。
(P192より引用) 湾岸戦争の反省として、連合軍は偵察衛星等により確認された戦車数などのハードなデータの情報に焦点を当てすぎて、イラク軍戦車乗員の能力や戦闘意欲などのソフトデータを無視したと指摘された。・・・生きた情報を獲得する人間系のインテリジェンス・システムの積極的な活用によって的確な小進化を起こすことを可能にしたのである。
これと同じようなことは企業のマーケティング活動においても言えます。
表層的な統計データ(デモクラティックなデータ等)で何かを物申せる場合もありますが、実際は、現場やお客様からの声、街に出て見聞きした感覚も加味して、リアリティのあるマーケット像をイメージすることが重要です。