ショーペンハウエルは、記憶について、多くのことが貯えられること、また必要なことが即座に思い出せることを謎だと言っています。
(知性について(ショーペンハウエル)p93より引用) さて一般的に言うと、物事がわれわれの記憶に刻みつけられるのに、ふたつの様式がある。ひとつは、それをことさら覚えこもうとして故意に記憶に刻みつける場合で、・・・もうひとつは、物事がわれわれに与える印象によって、われわれの側での作為なしに、おのずから記憶に刻みつけられる場合で、このようなとき、われわれはそれを忘れがたい物事と呼ぶであろう。・・・さて、人間は多くの物事に活発な客観的関心を抱いていれば、それだけ多くの物事がこのようにおのずから記憶にとどまることになるわけである。それが青年時代にもっとも旺盛になるのも、この年頃に接する物事の新鮮さが、それに対する関心の度を高めているからなのである。
「客観的関心」に基づく自然な記憶様式は、強いて覚えようとする意図的な様式よりも確実であると言います。
また、「関心」というフィルタを通ることにより、当人にとって重要な物事を意識せずして選択蓄積できる利点があると言います。
関心を持ち続けると記憶はついてきます。悲しいことに意識した記憶力は衰えかけてきていますが、関心さえあれば、まだ何とかメモリーは働くようです。