Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

Vol213:日本型人事管理―進化型の発生プロセスと機能性

2007年02月15日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
日本型人事管理―進化型の発生プロセスと機能性

中央経済社

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平野光俊

「人事は流行に従う」とは言い得て妙ですね。ある人事制度が流行するとそれに
ぱーっと群がるというのは今までいやというほど目にしてきた光景ではないでし
ょうか。「これからはなんてったって成果主義!アメリカを見習ってエンプロイ
アビリティを身につけるためにコンピテンシーを診断してICTを取り入れたアク
ションラーニングでモチベーションもブレンドしちゃってもう360度爆発だあ
あ!」といった感じで息つく暇もないようです。

けれども、流行の人事制度を導入してもなかなかうまくいかないようで、次から
次へと新しい流行を追い続けるだけになっている企業も多いと聞きます。それな
らいっそのこと立ち止まって、人事制度についてもう少し深く考える機会を設け
てはいかがかと思うのですが、それはやっぱり難しいのでしょうか?

本書は人事制度について立ち止まって考えるうえではとても役立つ一冊だと思い
ます。アカデミックっぽく読みづらいのが難点ですが、これまでの日本の人事制
度のあゆみも簡単にまとめてありますし、("知っているつもり"の典型例であ
る)いわゆる日本型人事制度といわれるものと米国型人事制度との違いも正しく
理解することができます。

また、情報システムとの相互関係において人事制度を語る視点も面白く、人事管
理のこれからの方向性に有効な示唆を与えるものだと思います。日本型人事管理
がどのように進化してきたのか、そしてその進化を規定している要因とは何か。
さらに、今後どのように変化する可能性があるのかといったことを、ある日本の
小売業と化学企業のケースならびに上場製造業の人事部長に対するサーベイ・リ
サーチを通じて実証的に明らかにしています。

一時の流行の上に砂上の楼閣を築くよりは、多少見栄えは悪い建物でもしっかり
した土台の上に築かれたもののほうがあとあと「使える」気がします。少しタフ
かもしれませんがおすすめの一冊です。(文責:マツモト1.0)

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