Learning Tomato (旧「eラーニングかもしれないBlog」)

大学教育を中心に不定期に書いています。

vol.264:上京ものがたり

2008年03月08日 | eラーニングに関係ないかもしれない1冊
上京ものがたり
西原 理恵子
小学館

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皆さんこんにちはナカダです。2月の本コーナーはお休みさせていただきましたので、2ヶ月ぶりの登板となります。よろしくお願いします。さて、世間は早くも3月となってしまいました。3月といえば雛祭りに花粉症の始まりに、プロ野球にJリーグの開幕などなど様々なイベントがありますが、私にとって3月といえば「上京」のシーズンであります。

思えば12年前の3月。神戸の下町にある県立高校を卒業した私は、大学進学のため神戸を離れ、神奈川県の海沿いの町で一人暮らしを始めました。(だから厳密には「上京」ではないのですが、便宜上この言葉を使います。)それから早くも13回目の春を迎えましたが、その間には大学を卒業して就職して引越しして転職して結婚もしたりしました。それで今はこうやって産業能率大学に勤務して、メルマガに文章を書かせてもらったりしているわけです。傍目には凡庸な人生ながらそれでも上京後には多少はイロイロあり、これまでの自分の人生で最大の分岐点はきっと「上京」した12年前の3月なんだろうな、と思います。

この春にもおそらく何万、何十万の「上京ものがたり」が生まれることでしょう。そこで今回ご紹介するのが西原理恵子さんの「上京ものがたり」です。話のあらすじはシンプルなもので、地方出身の美大生の女の子(=作者の若いころ)が漫画家としてデビューするまでのエピソードを1話完結形式の漫画にまとめたものです。そう書くとしばしば見られる「下積み時代の貧しくもヒューマンな苦労話」集と受け取られるかもしれませんが、西原理恵子の漫画に限ってそんなことはありえません。主人公が、自分と周囲とに向ける観察眼は徹底して客観的であり、冷徹といっても良いほどです。その冷徹な観察眼を通して描かれる下積み時代の主人公は、周囲から見下されたりバカにされたりしながらも、しぶとくしたたかに生きていきます。周囲の人々とエピソードも時には残酷で、時にはどうしようもなく悲しく、「昔は苦労したけどそれなりに良かった」的なノスタルジーとは完全に一線を画しています。でも、東京に出てきてそこで生きていくって、きっとこういうことなんですよね。この春に上京する若い人たちも、これからいろいろあると思いますけどそれなりに何とかなりますので、あまりご心配なく。最後にこの漫画の中で一番好きな主人公の台詞を。

「わらってくれてありがとうございます。人の心の役に立つことがこんなにうれしいことと思ってもいませんでした」(第51話より)

私も「人の心の役に立つ」仕事が出来るように精進してまいりたいと思います(文責:ナカダ)。

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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
上京 (ソウル)
2008-11-20 16:54:46
eラーニングに関係ないコメントです。

上京、という人生の分岐点を経験した学生さんたちも
もう東京・キャンパスに慣れてきた頃なのでしょうね
(現在:11月末)。

上京してない組としては、「人生で最大の分岐点」を
味わえなかったことが残念で、西原さんやナカダさん
をうらやましく思います。



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