母と我が体重掛けて磨き来し家の廊下は黒光りせり
詠人 ユラーナ
私が詠んだ歌です。私は、大正時代にご先祖さまが、祖母のために建てて下さった家が大好きです。昔の家は、プライバシーに配慮していないので、住みにくいといえば住みにくいのですが、生まれてからずっと住んでいるので、さほど不便は感じません。
祖母はお嬢様育ちであったので、お掃除をすることもなかったように思いますが、母は、お嫁に来てから、朝晩、一所懸命お掃除してきました。私も、子供の頃から、廊下の雑巾掛けと障子貼りは、手伝わされました。
家はさほど大きくはありませんが、北の廊下、中廊下、南の廊下とあります。雑巾掛けは、子供の頃は、嫌々でしたが、今は好きです。家の価値がわかってきたからでしょうか。体重を掛けて拭き込むと、家が喜んでいるような気がします。
歌では、「黒光りせり」と詠みましたが、実際は、茶色ですね。今様のワックスがけしてある廊下ではなく、木肌そのままです。水で濡らした雑巾で拭き込めば拭き込むほど、ぴかぴかしてつるつるになります。自分が生きている限り、何とか、維持したいと思いますが、どこまで持ちこたえられるでしょうか・・・
この歌に対して、短歌を指導してくださっている先生からは、次のような講評をいただきました。
「築八十年を越える家に今なお住むということそのものが、とても貴重な体験と言えます。歴史ある家に対する愛情が、上の句、特に二句によく表れています」
ユラーナ