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「関東軍満州事変記念写真帖」

2008年12月09日 01時13分44秒 | Weblog
満州事変。日本の失敗のはじまりでした。軍国主義という怪物が、日本を豊かにすると錯覚して幾多の人々の血を流させたことか。

1931年(昭和6年)9月18日、奉天郊外の柳条湖で起きた南満州鉄道の線路爆破事件に端を発した満州事変は、参謀本部の不拡大方針とは逆にしだいに広がりを見せます。ところが、わずか5ヶ月の短期間で満州全土(中国東北部)を占領し戦術的にみれば稀に見る大成功に終わりました。しかし、日本の行末という戦略的な観点から見れば、歴史的に見ても大失敗の戦いでした。これを契機に敗戦までのレールが引かれてしまったのですから。

満州事変の勝利を記念して発行されたのが「関東軍満州事変記念写真帖」です。厚冊です。稀に見る豪華版です。短期間で大勝利と錯覚した軍部の鼻息が聞こえてきそうです。少し前まではこの「関東軍満州事変記念写真帖」や南京戦の「部隊写真帖」、藤田嗣治や宮本三郎らの戦争画帖の「大東亜戦美術」といった「戦記もの」は非常に廉価でした。いずれも2~3000円で入手可能でしたが、最近は戦史の見直しや軍事関係の興味のある人が増えたようで、いずれもかなり値上がりしております。以前の価格の10倍以上の値が付いている品もあるようです。浮世絵でも同じ現象が起きており、「戦記もの」の最後の浮世絵作品(日露戦争以降は写真が主流となった)である日清戦争の清親等の作品も高くなっているようです。清の最先端の軍艦である定遠、鎮遠、済遠、威遠を攻略した「威海衛の戦い」などは有名ですよね。この傾向はしばらくは続くと思います。



非常に豪華な創りの「関東軍満州事変記念写真帖」 
1932年(昭和7年)発行 


厚手の赤染め和紙に「関東軍満州事変記念写真帖」と木版で食込むように摺られた文字は、非常に美しく内に秘めた非情さとは裏腹に受け手に歓喜をもたらす効能があったようです。この和紙は文明が進んだはずの70年以上も未来の今、入手不可能なことは妙であると云えますよね。

最近の蒋介石とアメリカの謀略によって日本が罠にはまったと考える論調は、罠にはまるべき要素が日本国内に内包されており、引き返すだけの先見性を持った政治家の不在が最大の要因ではないかと考えます。つまり、日本の戦略が対中、対米で劣っていたためで、侵略国家と戦後誹りを受けたのも当然と言えば当然ではないのでしょうか。戦略性が垣間見えない最近の政局を見ても日本って本当に……。蛇足承知で言わせていただければ、つい最近の「スワップ協定」にも問題ありですよね。反日国家にほとんど無条件に金融支援を行うことは百害あって一利無しです。受け取る側に領土問題はないと錯覚させますから。

「関東軍満州事変記念写真帖」には満州の広大な大陸が日本の領土であることがわかる鳥瞰図が挿入されております。朝鮮半島といい遼東半島といい占領した後、返還すれば武士道が生きている「美しい国日本」と全世界から賛美されアメリカとの関係も上手くいったはずなのにね。



初三郎風の鳥瞰図 広大な大陸が日本の領土であることがわかる
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