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色川武大を読む

2007-11-12 20:58:51 | 朗読あれこれ
「これ読んでみてください」と渡された色川武大のエッセイ、
その名も「墓」。
1975年5月「話の特集」掲載
『怪しい来客簿4 幽霊がスタスタスタ』からの作品です。

色川氏の叔父、そして父親が主人公なのですが
家族や親戚を愛情込めて描いたもの・・・というよりは、
先祖、血統、系図、係累にこだわる虚しさばかばかしさについて
“墓”をキーワードに、半分フィクションかなぁ
と思える家族のエピソードが語られています。

墓を守ろう、代々伝えようとすればするほど
その無意味さが露呈し人は落胆する。
過去の何かを手繰り寄せることよりも
いま自分がここに在るということ、
それがすべてじゃないかーーー。

本はそう云っているようでした。

色川武大・・・阿佐田哲也ですからねぇ。
その家族なんて一筋縄ではいかないだろうと思ってましたが、
そこに書かれてある叔父さんや父親の表情は
何だか愛嬌があってかわいらしいんです。
叔父さんなんか、死んでからも家にやってきますから(笑)。
父親は2度も自分ちの墓に“裏切られる”し、
自分の父を偲ぼうと大企画を立てても間抜けな結果になってしまうし。

どうやら色川氏のお爺さんは豪快だったようで
「祖父の生き方は創造性に富み、大振りで、ダイナミックに失敗を重ね、
 自分も周辺も目茶目茶にした」人らしい。
何となく「阿佐田哲也」とかぶりますね。
一方、その息子となる父親は軍人、叔父さんは銀行マンというお堅さ。
意外です。

あれ、色川武大ってこんな作風でしたっけ?
と思うくらいやさしい作品。
なかなか手に入らないと思いますが巡り逢えたら
読んでみてください。



ところでうちに1冊、色川武大の文庫本がありました。
写真の「引越貧乏」(新潮文庫)。

アタシなんぞ
「はい、どうも失礼しました」と這々の体で逃げるような
凄みと奥深さのある話が七つ載ってます。
こちらも手に入れば是非。




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