まずは告知をーーー。
映画『放射能を浴びた[X年後]』が、ただいま
東京では
ポレポレ東中野で
愛媛・松山では
シネマルナティックで
上映中です。
この【朗読もの】を読んでくださっている皆さんに
とても観てほしい作品です。
さて、
私がCS局「朝日ニュースター」のキャスターをしていたとき、
自らカメラをまわして取材したものをオンエアできる時期がありました。
今から１０年以上前の話です。
1999年、東京・新木場にある第五福竜丸展示館に
別れ別れになっていた船のエンジンが戻ってくる
という新聞記事を目にして、
恥ずかしながらその時ビキニ事件についてくわしく知らない私でしたが
何かに突き動かされるように新木場にひとり向かいました。
展示館の敷地内での「エンジンお帰りなさい集会」、そこで初めて
第五福竜丸の元乗組員、大石又七さんとお会いしたのです。
第五福竜丸の大きな姿に圧倒され、そして
大石さんがその船体を見上げながら、集まった若者たちに
1954年の3月1日に何が起こり、
自分は何を見て、
その後どんなことが自分の身にふりかかってきたかを
時間の許す限り、本当に振り絞るようにお話されていて
私は釘付けとなりました。
そのとき私が放送した内容について、のちに大石さんが
著書「ビキニ事件の真実」(みすず書房)などに書いてくださったり、
その後、大石さんのご自宅に伺って、ビキニ事件について勉強にきた子どもたちに
分かり易くお話しされる様子を取材させていただいたり、
2002年、第五福竜丸が被ばくした場所、マーシャル諸島に大石さんが赴き
当時の水爆実験による現地の人々の被ばくについてや
その後の島の現実などを大石さんがたずね歩く様子を映したビデオをみせてもらったりと、
私は、いつも大石さんを通して
ビキニ事件を見て教えていただいた思いがしています。
今回、ひょんなことから、私が以前仕事をしていた南海放送が
ビキニ事件に巻き込まれた第五福竜丸以外のマグロ漁船と
その乗組員たちついて追跡取材し
映画にまでなったと知りました。
あのときアメリカが立て続けに行った水爆実験。
当時日本から多くのマグロ漁船が太平洋に向かっていたことを考えれば
“死の灰”をかぶったのは
第五福竜丸だけであろうはずはありません。
しかもその犠牲者に私のふるさと愛媛の隣、高知の漁師さんたちも
多数巻き込まれているという事実は知りませんでした。
映画『放射能を浴びた[X年後]』の製作に関わった南海放送の人たちの名前に
懐かしい方々の名前があったのも手伝って、私は
映画の公開初日、初回上映を観てきました。
不覚ながら涙が出てきました。
去年の３．１１後から私が感じていた
「自分たちも放射能汚染のなかにいる」
という辛さが思い起こされたからです。
映画のなかに出てくる漁師さんやその家族のみなさんの
怒り、戸惑い、無念、あきらめ・・・
それらを共有する思いからです。
事件直後は目の前の生活に被害が及んでゆく恐怖があり、
声をあげる力などなかった。
しかし疑いは募ってゆく。
自分のからだの異変との因果関係が証明できず
どうしたらよいか分からず
ただ運命だと云うしかないのか。
そんな58年前に起こった悲劇の落とし前がつけられぬまま
福島の原発事故が起きてしまったのですーーー。
ビキニ事件をわれわれの歴史にきちんと引き戻して
私たちがとるべき行動を考えようという
映画の意図が伝わりました。
ブログをみると多くの方々に関心をもっていただいているようです。
長くなりましたが、
よろしければこの
映画『放射能を浴びた[X年後]』をご覧ください。
日本人という独特の“もの分かりの良い”人々。
これが皮肉にしかきこえないようにはなりたくないと
私は思うのです。
