熱海に行った。
久し振りの一泊旅行。
美味しい海鮮料理と温泉を満喫する以外に、
もう一つ目的があった。
それはA美術館に行くこと。
お目当ては岩佐又兵衛作と伝えられる「山中常盤物語絵巻」。
12巻で、全長150メートルと聞いていた。
昨年5月から6月にかけてその全展示があった。
行きたい、行きたいと思っていたが、
チャンスは遂に訪れなかった。
ここ1,2年、辻惟雄のいうところの
「奇想の系譜」にハマった私。
その祖といわれる岩佐又兵衛のこの絵巻は
是非この目で見たかった。
最大のチャンスは失したが、
今回は改装前の「大名品展」を開催中と聞いた。
目玉は尾形光琳の「紅白梅図屏風」と
野々村仁斎の「色絵藤花文茶壺」。
「山中常盤物語絵巻」は目玉ではなかった。
だから展示はないのかも・・・、と思いつつ、
一抹の期待を抱いていた。
熱海の急坂を登ると、
その美術館の入り口があった。
山の中腹の入り口から山の上にある展示室まで
大トンネルエスカレーターが延々と続く。
200メートル上るということだったが・・・。
それがなんというか、かんというか・・・。
この美術館の母体が宗教団体ということもあるのか・・、
エスカレーターはレインボーカラーの
間接照明で照らされているのだ。
私は綺麗な色に包まれているにもかかわらず
不気味な天国への階段を上っているような錯覚に陥った。
なんだか、目当てのものを目指す途中で、
気を散らされてしまったような感じがした。
やっと着いた展示室入り口。
入るとすぐに目に入ったのは、金ぴかの茶室。
豊臣秀吉が作らせた「黄金の茶室」を復元したものだという。
うーん、もう、何が何だか分からなくなった。
一体、私はここに何をしに来たのだろう??
そんな気持ちになってしまったので、
慌ててその場を退散。
そして、展示室を一室ずつ回っていくことに。
ところが、ところが・・・、
ここでも、目が回る、というか、
一体どういうコンセプトで展示してあるのかさっぱりわからない。
この展示で何が言いたいのかが伝わってこない。
すべてが細切れだ。
頭の中が支離滅裂になった、というのは少しオーバーだけれど、
なんか、こんなものも持ってます、
あんなものも持ってますといいたいだけなのかしら?
一つ一つは価値があるのに、なんだかもったいない。
そんな気持ちのままに出会った尾形光琳の「紅白梅図屏風」。
既に頭がごちゃごちゃになっている私には
ゆっくりと堪能する余裕が残っていない。
野々村仁斎の「色絵藤花文茶壺」に至っては、
これが海外に流出する直前に、この美術館の創始者が
世田谷の土地3000坪を売り払って手に入れたということしか
頭に残らない始末。
楽しみにしていた伝岩佐又兵衛「山中常盤絵巻」は、
「常磐殺し」の場面のみの展示となっていた。
これもチラ見せ程度の展示だ。
ということで、今回だけのことだろうとは思うけれど、
やはりストーリーのない美術展を楽しむのは本当に難しいと実感した。
閑話休題。
と、そんなことがあって2日後、
今度は山種美術館の「ゆかいな若冲・めでたい大観」展へ。
山種美術館は今の私のお気に入りの美術館。
竹内栖鳳の「猫」や速水御舟の「炎舞」を所有している。
ある意味、明治以降の日本画を主に収集している。
今回は若冲の展示も多いと聞いていたので、
前々から楽しみにしていた。
年明けから3月6日までの展示。
滑り込みセーフという感じだ。
「ゆかいな」「めでたい」というコンセプト。
山種所蔵作品が多い中、もともと山種所蔵ではない
河鍋暁斎、伊藤若冲、歌川国芳も展示されている。
いずれも、このコンセプトに合わせて展示しているもの。
だから、展示にストーリーと流れがある。
A美術館で経験した頭がバラバラになる感じは抱かずに済んだ。
今回、息をのんだのは若冲の「軍鶏」。
水墨画ながら、その、特に「尾」の勢いが凄い!
さすが、庭に鶏を何羽も飼って暮らしていただけのことはある、
なんて思いながら観た。
それから横山大観の象形文字の書「寿」。
これも何とも言えない愉快さが潜んでいるなって思った。
ある流れの中での鑑賞。
流れを楽しんだり、時に流れに逆らうものを楽しんだり。
いずれにせよ、少なくともバラバラ感はない。
この二つの美術展に日をあけずに行ったことで分かったこと、
それは学芸員の方々の何を見せたいのかということにかけた、
素養と知恵と努力。
自分のところの所蔵品だけで勝負しようとすると、
やはりそこにはおのずと限界がある。
「お宝展示」ということでは一定の意味のあった
A美術館の「大名品展」。
でもそれだけでは、やっぱり物足りない。
自分はつくづくストーリーを求めているのだなと思った
二つの美術館巡りなのでした。
久し振りの一泊旅行。
美味しい海鮮料理と温泉を満喫する以外に、
もう一つ目的があった。
それはA美術館に行くこと。
お目当ては岩佐又兵衛作と伝えられる「山中常盤物語絵巻」。
12巻で、全長150メートルと聞いていた。
昨年5月から6月にかけてその全展示があった。
行きたい、行きたいと思っていたが、
チャンスは遂に訪れなかった。
ここ1,2年、辻惟雄のいうところの
「奇想の系譜」にハマった私。
その祖といわれる岩佐又兵衛のこの絵巻は
是非この目で見たかった。
最大のチャンスは失したが、
今回は改装前の「大名品展」を開催中と聞いた。
目玉は尾形光琳の「紅白梅図屏風」と
野々村仁斎の「色絵藤花文茶壺」。
「山中常盤物語絵巻」は目玉ではなかった。
だから展示はないのかも・・・、と思いつつ、
一抹の期待を抱いていた。
熱海の急坂を登ると、
その美術館の入り口があった。
山の中腹の入り口から山の上にある展示室まで
大トンネルエスカレーターが延々と続く。
200メートル上るということだったが・・・。
それがなんというか、かんというか・・・。
この美術館の母体が宗教団体ということもあるのか・・、
エスカレーターはレインボーカラーの
間接照明で照らされているのだ。
私は綺麗な色に包まれているにもかかわらず
不気味な天国への階段を上っているような錯覚に陥った。
なんだか、目当てのものを目指す途中で、
気を散らされてしまったような感じがした。
やっと着いた展示室入り口。
入るとすぐに目に入ったのは、金ぴかの茶室。
豊臣秀吉が作らせた「黄金の茶室」を復元したものだという。
うーん、もう、何が何だか分からなくなった。
一体、私はここに何をしに来たのだろう??
そんな気持ちになってしまったので、
慌ててその場を退散。
そして、展示室を一室ずつ回っていくことに。
ところが、ところが・・・、
ここでも、目が回る、というか、
一体どういうコンセプトで展示してあるのかさっぱりわからない。
この展示で何が言いたいのかが伝わってこない。
すべてが細切れだ。
頭の中が支離滅裂になった、というのは少しオーバーだけれど、
なんか、こんなものも持ってます、
あんなものも持ってますといいたいだけなのかしら?
一つ一つは価値があるのに、なんだかもったいない。
そんな気持ちのままに出会った尾形光琳の「紅白梅図屏風」。
既に頭がごちゃごちゃになっている私には
ゆっくりと堪能する余裕が残っていない。
野々村仁斎の「色絵藤花文茶壺」に至っては、
これが海外に流出する直前に、この美術館の創始者が
世田谷の土地3000坪を売り払って手に入れたということしか
頭に残らない始末。
楽しみにしていた伝岩佐又兵衛「山中常盤絵巻」は、
「常磐殺し」の場面のみの展示となっていた。
これもチラ見せ程度の展示だ。
ということで、今回だけのことだろうとは思うけれど、
やはりストーリーのない美術展を楽しむのは本当に難しいと実感した。
閑話休題。
と、そんなことがあって2日後、
今度は山種美術館の「ゆかいな若冲・めでたい大観」展へ。
山種美術館は今の私のお気に入りの美術館。
竹内栖鳳の「猫」や速水御舟の「炎舞」を所有している。
ある意味、明治以降の日本画を主に収集している。
今回は若冲の展示も多いと聞いていたので、
前々から楽しみにしていた。
年明けから3月6日までの展示。
滑り込みセーフという感じだ。
「ゆかいな」「めでたい」というコンセプト。
山種所蔵作品が多い中、もともと山種所蔵ではない
河鍋暁斎、伊藤若冲、歌川国芳も展示されている。
いずれも、このコンセプトに合わせて展示しているもの。
だから、展示にストーリーと流れがある。
A美術館で経験した頭がバラバラになる感じは抱かずに済んだ。
今回、息をのんだのは若冲の「軍鶏」。
水墨画ながら、その、特に「尾」の勢いが凄い!
さすが、庭に鶏を何羽も飼って暮らしていただけのことはある、
なんて思いながら観た。
それから横山大観の象形文字の書「寿」。
これも何とも言えない愉快さが潜んでいるなって思った。
ある流れの中での鑑賞。
流れを楽しんだり、時に流れに逆らうものを楽しんだり。
いずれにせよ、少なくともバラバラ感はない。
この二つの美術展に日をあけずに行ったことで分かったこと、
それは学芸員の方々の何を見せたいのかということにかけた、
素養と知恵と努力。
自分のところの所蔵品だけで勝負しようとすると、
やはりそこにはおのずと限界がある。
「お宝展示」ということでは一定の意味のあった
A美術館の「大名品展」。
でもそれだけでは、やっぱり物足りない。
自分はつくづくストーリーを求めているのだなと思った
二つの美術館巡りなのでした。