林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

私立中高一貫校生徒を対象とする英語個別指導塾。小田急線の東林間駅(相模大野と中央林間の隣駅)から徒歩3分。

メディア・リテラシー教育の難しさ

2011年06月15日 | Weblog
メディア・リテラシー教育の難しさ

私がアメリカの大学院に留学した時、英語ができ無かったので留学生用の英語のクラスに入れられた。リーディングのクラスでは、日本では考えられないような文章読解術が教えられた。ある文章を読むとき、その書き手がリベラルな立場なのかそれとも保守的な立場なのか大づかみに想定しながら読んでみようというのである。そんな事までを英語教育(をアメリカの国語教育)で教えるんだなとちょっと驚いたものである。リベラルが保守化というのはあまりにも単純な二分法のような気もしたが、少なくともアメリカのような民主党と共和党の2大政党の社会においてはかなり有効な尺度なのであろう。

日本を振り返ってみると、冷戦以前には保守(自民党)と革新(社会党)という分かりやすい対立図式があったが、それを反映するような読解力教育は存在しなかったはずである。

実は私はちょっと昔、某私立 R 大学の1年生に教えていた事がある。そのゼミでは情報を多角的に読み取ることの必要性を強調し、日本には左翼系新聞(朝日、毎日)と右翼系新聞(読売.産経)さらにはタブロイド紙などもあるのだと説明していた。そして、政治的スタンスの異なる新聞がそれぞれどのような報道をするのか調べてくるようにと何人かの学生に指示した。しかし残念ながら私の話がうまく伝わらず、学生は朝日新聞と毎日新聞の比較調査をしてきてしまった。そして、両者の新聞記事の違いがよく分らなかったとのことであった。教えて入れる私も、まさか朝日と毎日の比較を試みるとは考えてもいなかったので、かなり落胆の顔を見せてしまい、悪いことをした。おそらく普通の大学1年生にとっては、右翼的か左翼的かという認識自体がなじみにくかったのであろう。

こんな経験を思い返してみると、前回の私の新聞各社の比較記事は、右も左もわからない中高生や大学生にはよい学習教材の一つになるのだ言ってしまってもよいのかもしれない。だが、自分で書いておいてなんだが、同時に危惧も覚えてしまう。というのは、私の文章が伝えているのは、あたかも朝日新聞が正しい情報を提供するメディアで、読売新聞や産経新聞は偏向報道ばかりをする右翼的新聞であるという印象のみを強調しかねないからだ。メディアを比較したり、メディア・リテラシーを身につけさせようとする視点が、朝日新聞こそが不偏不党の正しい新聞であるといううプロパガンダになりかねないではないか。それは困る。私は次のような立場を取っているからだ。

(1)朝日新聞もまた、読売新聞に負けず劣らず偏向メディアである。
(2)全国レベルの大手新聞ばかりでなく東京新聞・神奈川新聞等の地方新聞も本来であれば言及すべきであった。
(3)リベラルか保守か、左か右かといった単純な尺度だけでは測れない対抗軸があることを忘れない。

以上。

次回は文学を題材に書く予定です。

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