林間教育通信(「東大式個別ゼミ」改め「シリウス英語個別塾」)

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日本のマスメディアの検閲を目の当たりにする(日経ビジネスDigitalの場合)

2012年10月16日 | Weblog
今ネット上でひそかに話題になっているのは、日本の大手マスメディア(日経ビジネス)の自己検閲である。

「外国人ジャーナリストが驚いた日本メディアの惨状」という言葉で検索してもらいたい。2012年10月25日版の日経ビジネスDigital が出てくるかもしれないが、記事自体は削除されている事が分かるだろう。(ただし、いわゆるキャッシュに記事内容は残っている)。

これはニューヨーク・タイムズの記者がジャーナリストの大野 和基さんとともに書いた記事で、タイトルどおりまさに日本のメディアのストレートな批判となっているものなのである。ところが、日経ビジネスDigital はかなり迅速にこの記事を削除してしまったのである。(キャッシュから画像を添付しておきました。また記事テキストもブログの後半部に載せてあります)。

あまりに稚拙で露骨なやり方に唖然とする。これでは中国や韓国のメディアと変わらないではないか。

我々としては、日本や日本語のメディアだけに頼るのではなく、幅広く情報を収集してから話ならないことを痛感する。そのためにも英語力は不可欠だといえる。

もっとも、英語ができればそれで良いというわけではない。私が知っている中国人の英文記者などは、あきれるほどバイアスのかかった人だったから、このあたりも強く強調しておきたい。







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外国人ジャーナリストが驚いた日本メディアの惨状
大野 和基=ジャーナリスト
2012年10月15日版トップ
 ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏に話を聞いた。大メディアに対する同氏の批評は辛らつだ。「取材源との距離が近すぎ、監視役としての役目を果たしていない」「ダブルスタンダードで自国の暗い面は報道しない」と指摘する。
――日本社会は非常に排他的で、属さない人を排除する――と言われてきました。記者クラブもそういう排他的な文化の一つの面だと思います。どう思われますか。

ファクラー:日本のメディアを見ていて非常に興味深く思うのは、情報を独占的にコントロールしようとする記者クラブがある一方で、週刊誌とかタブロイド紙が非常に元気なことです。記者クラブは日本のメディアの保守的な面を表していると思います。週刊誌やフリーランス記者、地方紙はかなり良い仕事をしています。

――朝日新聞や日本経済新聞といった日本の大手新聞とニューヨーク・タイムズの最も大きな違いの一つは、世界中の読者に対する影響力です。世界中の人がニューヨーク・タイムズを読みますが、日本の新聞は読みません。取材先が図る便宜も異なります。例えばあなたはトモダチ作戦の時、米軍のヘリに乗る機会を最初に与えられました。

ファクラー:最初にそういう機会が与えられたのは、もちろん、私がニューヨーク・タイムズの記者だったからです。タイム誌の記者も同乗しました。同誌も世界的に影響力を持っています。確かにニューヨーク・タイムズという名前は役に立ちます。米軍はアメリカの納税者に対して、こうしたお金を使うことを正当化しなければなりませんから。

――もしあなたがニューヨーク・タイムズにいなかったら、そういう機会は来なかったでしょうね。

マーティン・ファクラー氏ニューヨーク・タイムズ東京支局長
1966年生まれ。イリノイ大学でジャーナリズム修士。ブルームバーグ、AP通信をへてニューヨーク・タイムズ東京支局。2009年2月から現職。同支局スタッフは、東日本大震災に関する報道で、ピュリッツァー賞国際報道部門の次点となった。
ファクラー:そう思います。世界的に影響力を持つメディアにいるアドバンテージです。私はこれまでブルームバーグ、AP、ウォールストリート・ジャーナル、ファーイースタン・エコノミック・レビューで仕事をしてきました。この中でニューヨーク・タイムズは取材先に対する最高のアクセスを与えてくれます。

 もちろんリスクもあります。トモダチ作戦の取材の場合、米軍の代弁者にはなりたくありませんでした。ただし、取材先と距離を置くことはジャーナリストにとって危険でもあります。情報を得られなくなる可能性と背中合わせですから。これはアメリカでも日本でも同じです。常に直面するチャレンジの一つです。

 ニューヨーク・タイムズのように名声が確立したメディアは、落とし穴や誘惑に常に注意しなければなりません。つまり、情報源との関係を維持するために批判を鈍らせるとか、トーンダウンするとか、その誘惑に負けてはいけません。

日本メディアは監視役たり得ていない

――日本のメディアはウォッチドッグ(監視役)としての機能を果たしていると思いますか。

ファクラー:彼らはそういう機能を果たすべきだという理想を持っていると思いますが、情報源とこれほど近い関係になると実行するのはかなり難しいです。

 これは記者クラブだけの問題ではありません。もっと大きな問題です。日本の大メディアは、エリートが支配している階級の中に入っているということです。東大、慶応、早稲田出身でみんなが同じバックグラウンドと価値観を持っている。みんな官僚に同情的で、彼らの側に立ってしまうのです。

 3.11の時、この面をはっきり見たと思います。本当に監視役になっていたのなら、「フクシマは大丈夫だ」「メルトダウンはない」という記事は書かなかったのではないでしょうか。もっと厳しい記事が書けたと思います。それができなかったのは、彼らが政府と距離を保っていないからです。

 大メディアは、政府と対峙することなく、国民に対峙する報道をした。私はこの点を痛烈に批判しました。大メディアが報道していたことが間違いだとわかったのは、何カ月も経ってからです。監視役としてみるなら、日本の大メディアは落第だったと思います。でも、メディアを監視役ではなく、システムの一部としてみるなら、起こるべくして起こったことだと言えるでしょう。

――日本経済新聞に対しても批判的ですね。

ファクラー:オリンパス事件のときによくわかりました。海外メディアでは、フィナンシャル・タイムズがスクープし、ニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナルがそれに続きました。その間、日本経済新聞は何も報道しませんでした。沈黙です。

 その後、マイケル・ウッドフォード元CEOの記事が小さく出ました。ウッドフォード氏は日本の組織文化を理解することができなかったというような記事でした。まったくクレージーです。ビジネス・ジャーナリズムとして、3.11報道と同じくらいの大きな失敗でした。チャレンジする精神がまったくありませんでした。

――3.11以降、大メディアに対して国民も不信感を持ち始めました。

ファクラー:今、我々は非常に興味深い時期にいます。読者は今まで、メディアの言うことをほとんど信じていました。しかし、放射性物質の問題、SPEEDIデータの隠蔽、食料安全の問題について、国民はメディアに対して不信感を覚えたのです。国民と大メディアの間に溝が生じ始めたのです。「大メディアは国民の側に立っていない」という意識が国民の間に広がったと思います。3.11が変化の始まりでした。これほど強い不信感をみたのは初めてです。

日本の大メディアはダブルスタンダード

――人種差別に対する日本メディアのスタンスについてうかがいます。2010年にオーバーステイで逮捕されたガーナ人男性が、飛行機で強制送還しようとしたところ暴れたので、入国管理局の職員が集団で、手錠を使って縛り上げ無理やり飛行機に乗せました。その後、このガーナ人男性が機内で死亡した。この事件について、日本の大メディアが人種差別として報道しなかったことを指摘されています。
 また東電のOLが1997年に殺された事件がありました。犯人とされたネパール人はやっと最近釈放され、ネパールに強制送還されました。これも人種差別でしょうか?

ファクラー:どの社会も偏見を持っています。日本だけに限ったことではありません。問題はメディアです。メディアがそういう観点から報道しないのです。国民の意識を変えようとする努力がまったく見られません。こういう人種的偏見をなくすには、国民の意識を変えることが重要です。

 日本のメディアはダブルスタンダードに陥っています。人種偏見に基づく事件が、海外で起きた場合は報じるのに、自国で起きた場合は報じません。海外で起きた出来事にも、日本国内で起きた事件にも、同じ尺度を当てはめるべきです。日本のメディアは、ひょっとしたら、みずからがダブルスタンダードであることを意識していないのかもしれません。本来は日本社会の暗い面も報道するべきですが、それを隠す傾向にあります。

 もっと自分の足で取材して、調査報道をやってほしいと思います。貧困問題も同じです。日本の貧困問題は深刻です。こういう面をきちんと報道しないのはジャーナリズムの機能不全です。

――日本のメディアについて、特に変わってほしいと思うのはどの面ですか。

ファクラー:メディアのスタンスですね。大メディアは、本当の意味で監視役の役割を果たすべき時が来ています。日本にいる人は、もっと正確な情報を知る必要があります。今メディアがやっていることは明治時代から変わっていません。日本社会全体にチャレンジするような、代替メディアも生まれていません。能力はあるのに、とても残念なことです。

 3.11以降、非常に良い仕事をした日本のメディアもあると思います。「東京新聞」です。政府と距離を置いて批判的な記事を書いていました。地方新聞では「河北新報」です。同紙は政府や東電側ではなく被災者の立場から報道しました。震災記録300日にわたるその記録は『悲から生をつむぐ』という本にまとめられています。地方新聞でもネットを使えばグローバルなメディアになります。「地方」というのは関係なくなってきます。

良いジャーナリストの条件とは

――ジャーナリストの心構えについて、“a good journalist needs a sense of moral outrage”(良いジャーナリストには正義感――悪に対する人間的な怒り――が必要)と主張されています。これが最も重要な要素でしょうか。

ファクラー:個人的なレベルではそう思います。ジャーナリストは社会のためにやる仕事です。銀行家になってお金儲けするのとは違います。社会を良くしたいからする仕事です。ジャーナリストは少し理想主義者であると同時に、シニカルである必要があります。

――そして、取材対象と適切な距離を保つことですね。

ファクラー:これは本当に重要なことです。9.11のあとアメリカでは、メディアが愛国主義的になり、ブッシュ政権を批判しなくなりました。その結果、イラク戦争に関わる政策ついて十分な批判ができませんでした。イラク戦争をとめることができず、戦争の動機についても十分疑問を呈することができませんでした。

――それでもジャーナリストは、人脈を作り続けないといけません。

ファクラー:理想的に言えば、尊敬されることが大事です。良い情報を得るために、自分を売らなければならないのであれば、そのような情報源の存在は忘れた方がいいです。日本はジャーナリズムの倫理を少し変えた方がいいと思います。その方が尊敬されるようになる。長い目でみれば、フレンドリーな関係を作ることよりも、尊敬されるようになることが重要です。

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