2018年のブログです
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先日、伊藤良子さんの『心理治療と転移』を読んでおもしろかったので、今度は同じく伊藤さんの『心理療法論』(2011・京都大学学術出版会)を再読してみました。
これもかなり久しぶりで、なんとなく心理療法論という題名や京都大学学術出版会という名前にちょっと怖じ気づいてしまい、遠のけていました(伊藤さん、京大関係者のみなさん、ごめんなさい)。
読んでみると、内容は案の定、ほとんど忘れていたのですが、しかし、ところどころに付箋やアンダーラインがあり、昔は真面目に勉強していたんだな、と感心をしました(?)。
今回、印象に残ったことを一つ、二つ…。
一つめは、来談者こそクライエント、という視点。
われわれは、ともすると、症状を出している人が問題、と考えがちですが、こと、心理療法においては、来談者に耳を傾けることしかできないわけであり、来談者こそがクライエントであるということを再認識することが大切なように思われました。
二つめは、料金と転移の問題。
事例を通じて、転移を適切に扱うためにも、料金のやりとりで現実感覚を維持することが大切なんだな、と改めて考えさせられます。
三つめは、事後性の問題。
精神分析の人がよくいう、過去の記憶は今の感情によって変化する、ということがらですが、やはり伊藤さんも同じ指摘をしており、心理療法において大切なことなんだなと思われました。
四つめは、ラカンの鏡像段階。
『心理治療と転移』の中でも詳しく述べられていましたが、本書では、母親のまなざしが鏡の役割をするという指摘があり、そういう視点も大切だと思われました。
最後が、普遍性は個の固有性の極まれるところにある、というご主張。
エヴィデンスが声高に叫ばれる時代に、深い事例研究の大切さを述べられており、伊藤さんの潔さが感じられました。
さらに謙虚に勉強をしていこうと思いました。 (2018.7 記)